キミの笑顔のためだけに(中編)
そうか……変身魔法で警察官の姿になって、結界魔法で見えないバリアを張る。そういう手があったのか……。勉強になるな〜!
俺は店内の席についてストロベリーミルクティーをずずっと一口すすり、そんなことを考えた。アユは抹茶ラテ、アミはミルクティー、哲太くんはホットコーヒー、そして月出さんは俺と同じストロベリーミルクティーを注文した。
「ねえ、哲ちゃんとフジキくんは知り合いなの?」
「藤巻くんね」
哲太くんが苦笑してそう訂正する。月出さんは、まだ俺のことがピンと来ていないらしい。
「俺と零治くんは高校がおんなじで、バレー部でも一緒なの」
哲太くんはそう言うと、アユとアミに向かって笑顔で会釈した。
「あ、いつも零治くんにはお世話になってます! 俺は和泉哲太です!」
「あ、どうも! 零治の友達で、美結ちゃんとは中学が同じだった、入江愛友香と」
「亜美華です」
二人が自己紹介する。
「哲ちゃんが来る前、大変だったんだよ? 変な人に絡まれて。藤巻くんが助けてくれたんだけど」
「そうなんだ。大丈夫だった?」
哲太くんが月出さんの顔を心配そうに覗き込む。月出さんは、うん、と頷いた。
ぐぅぅぅ……!
俺は一人で悶絶する。
言いたい! さっき助けてくれた警察官は、魔法で変身した哲太くんなんだよって月出さんに言いたいっ!
「けど、手で払い落とされて、スマホにキズ入っちゃった」
「見して?」
哲太くんが月出さんのスマホを受け取る。俺も哲太くんの隣から覗き込んでみると、たしかに液晶画面には大きくキズが入ってしまっていた。哲太くんがパーカーの袖口で、軽く液晶を擦る。
「ん、擦ったら取れたよ。だいぶ浅いキズだったんじゃない?」
「えーうそ? そんなんで取れるようなのじゃなかったよー」
月出さんはスマホを返してもらうと、不思議そうにまじまじとキズのあったところを見つめた。
「最近のスマホは結構頑丈だから意外と大丈夫なんだって」
哲太くんがにこにこして言う。
はぅぁぁ……!
言いたい! 哲太くんが今、修復魔法で直してくれたんだよって月出さんに言いたいっ!
「大丈夫? 気分悪かったら、今日はもう初詣はやめて帰るのでもいいよ? 俺送ってくから」
哲太くんが言う。
「うん、これ飲んでたらだいぶ落ち着いてきたから大丈夫。初詣は行こ」
月出さんは、にこにこと微笑んで哲太くんに言った。
「アユとアミは? だいじょぶ?」
俺が尋ねると、二人も、うん、と頷いた。そして、アユが言う。
「ねえ、美結ちゃんたちもこれから初詣行くんならさ、もしよかったら一緒に行かない?」
「うん! 行こ! いいでしょ哲ちゃん?」
「え、あ、うん!」
月出さんに言われ、哲太くんが頷く。
こうして、俺たちは五人で初詣へと向かうことになったのだった。
*
「美結ちゃんのこのコートかわいいね」
「ネイルもコートとおんなじピンクでかわいい〜」
「えへへ、ありがと〜。二人のコートも、アユちゃんがちょっと大人っぽくて、アミちゃんがかわいい系なの良いね。イメージに合ってる」
神社へと向かう道中、前を歩く三人が女子トークに花を咲かせている隙に、俺は哲太くんにこっそりと話しかけた。
「ごめん、月出さんと二人っきりがよかったよな」
「だいじょぶだいじょぶ! 美結ちゃんが友達と行きたいならその方がいいよ!」
「そ? まあ、お参りしたらすぐ解散にしよ。あとは二人でごゆっくり」
「ありがとー!」
こんな作戦会議が行われているとは知らずに、前の三人はとても楽しそうに会話を続けている。
「あと、さっきは助けてくれてありがと! 月出さんだけじゃなくて、俺もアユとアミもマジで助かった!」
俺が声をひそめてそう言うと、哲太くんはちょっといたずらっぽくにやっと笑って、親指をぐっと立てた。
神社に到着後は、少し並びはしたものの、無事にお参りすることができた。
神さま、今年もよろしくお願いします! 幸せな一年になりますように! あと、出来れば哲太くんの片想いが成就しますように! お願いします!
心の中でそうお願いしてから顔を上げると、ちょうど隣のアミも顔を上げたところだった。
「ね、おみくじ引こ〜」
アミが言って、哲太くんと月出さんも一緒に、おみくじを引く。
「あ、小吉……」
「ショボ〜!」
俺の小吉を覗き込んでアユが笑う。
「うるさいな〜。そういうアユはどうなんだよ?」
「私は〜……あ、小吉……」
「アユもショボ~!」
俺とアユがやいやい言い合っている間に、アミも自分のおみくじを確認する。
「あ、私大吉!」
「「うそー!」」
一方の哲太くんと月出さんも、おみくじを開いた。
「あ、私も大吉だ」
「スゲーじゃん! おめでとー!」
「ふふふ、ありがと。哲ちゃんは?」
「俺は中吉。でも恋愛は『一途に想い続ければ実る。』って!」
「ふーん。哲ちゃんも恋愛運とか気にするんだ」
「ふふふ、まあね」
「ふーん」
その時、月出さんは、少しだけ難しそうな顔をして頷いた。
「じゃあ、これで解散にしよっか! 今日はありがとね! 哲太くんも月出さんも!」
「うん! また部活でね、零治くん! アユちゃんアミちゃんもありがと〜!」
神社を出ると、日頃バレーで磨いた見事な連携プレーで、俺たちは女子チームには有無を言わせず、さっさとお開きに持ち込んだ。
あとは頑張れ、哲太くん! こっそりと拳を哲太くんに向けて見せると、哲太くんが力強く頷いた。
「ねえ、なんでそんな急いでんの?」
異様に忙しない解散に、アユが眉をひそめて俺に聞いてくる。
「私はわかった! 気利かせたってことでしょ? もしかしてあの二人、いい感じなの?」
アミがにやにやして言った。……う、バレてる。
「教えない! 守秘義務があるので!」
「それほぼ言っちゃってるようなもんじゃない?」
「言っちゃってない!」
俺は大きな声で追及を振り切り、二人を家まで送り届けて帰宅した。その日の夕方ごろ、哲太くんから俺と平介くん宛てに、『失恋した……』というメッセージが届いた。




