死闘アクセラレーションⅠ
用語紹介
教導院
人類が正しく想能力を用いるために科学者達が作った事実上の世界政府。
想能力の開発技術を独占することで強大な権力をふるう。ニューヨーク本部のスーパーコンピューター「想天の女神」とその人工衛星によって能力開発、政治判断の演算、そして生み出した想能力者の監視管理を行う。
12-1.死闘アクセラレーションⅠ
「だれだ・・・?」
廃墟と化したビルの2階。
上層の階層の床が全て破壊され、かなり広々とした2階建てになってしまったがれきの山の戦場に、平秀は降り立った。
「ヒラシュー!」
続いて鎌瀬、スミスが到着。思わぬ邪魔が入った六代は、拍子抜けしたように目をパチクリさせた。
「・・・あんた何考えてるのよ」
「素直に礼くらい言え脳筋女」
平秀は受け止めた桜香の体から手を放すと、ふらふらと立ち上がった。
「俺が引き付けるからとっとと逃げ・・・ウッ!!」
「並木!あんたその手・・・!」
着地した衝撃か。平秀の左手首が不自然な方向に曲がっていた。
「ッテテテ、やっちまった」
「やっちまったって・・・完全に折れてるじゃない!早く逃げ——」
「逃がすと思うかあああああ!」
六代が針の触手を放つ。反応したのは千々石。再び生み出した黒の手で迎え撃つ。
「させません」
今度は触手を難なく弾き飛ばし、リベンジ。六代の前に立ちふさがる。
「逃げるのです」
千々石の小さな体からさざ波のような波動が出たかと思うと黒の手が膨れ上がり、鉤爪が生え、凶悪で屈強な魔神の手が顕現する。
「こいつは私が・・・ブッ殺す」
表情一変。小さな指揮官の鋭い眼差しが凶暴な魔神に様変わりしたかと思うと、何十もの黒き豪腕が六代をひねり潰さんと殺到する。
攻勢から守勢に。今度は六代が千々石の猛攻を受ける。
右から、左から、上から畳み掛けてくる黒の手をかわし、必死に何事かブツブツ呟きながら触手を振るうも、完全に上回られた千々石の幻想力場に粉砕されていく。
「千々石さんが・・・押してる!?」
「元々あの人の方が力は上だ」
犬飼が桜香にそう言うと、隣に現れたスミスがこう補足した。
「奴の念動力は欲望に依存する。欲望がピークに達した時の破壊力は凄まじいが、少し気が逸れると千々石中隊長の敵じゃねえ。要は力のムラが異常に激しく、暴走すると自分でも制御が効かない。だから研究所に閉じ込められてたって訳だ」
「やけに詳しいじゃねえかおっさん。お前は何者だ」
「通りすがりの傭兵よ。てめえの部下ァ連れてきてやったんだ」
「そいつはどうも。しかしヤロー、『デーモンチワワ』を本気にさせやがった」
耳をつんざく爆音と共にがれきが舞い上がる。
千々石の魔手が、六代の命をもぎ取らんと大きく膨らみ、六代へ迫る。
「くたばれ、悪魔」
千々石が親指を下に向けると同時に、巨大な魔神の手が六代を握り潰した。
指の隙間から血が滴る。
平秀たちはどっと歓喜の声を上げた。
「やった・・・!勝った——」
その時だった。
鋭い、針のような触手が一本、黒い手を突き破って。
黒の手が軋んだかと思うと、奔流となって、爆ぜた。
「キャッ!?」
虚を突かれた千々石が横ざまに吹っ飛ぶ。雲散霧消した魔神の手から現れたのは、全身を赤く血で染めた六代針、その人。
「こいつ、化物——!」
「いいねいいねやっぱりいいね。その手。あの桜吹雪。そして人間大砲。いいなあ。やっぱり・・・欲しいなあ」
—Ⅱに続く—




