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DOG RUN  作者: 鮫島あーろん
七・一七争乱篇
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尖兵グリードⅢ

11-3.尖兵グリード





横たわる死体。流れる血の河。




地獄の中心から轟く叫びと共に、力が爆発した。





「ッ!!」




突如何乗にも膨れ上がった六代の念動力が、千々石を壁に叩きつける。




「千々石さん!」




本能。



桜香がとっさに放った風が千々石の小さな体を横にはじき出す。間一髪、千々石が叩きつけられたコンクリート壁に無数の針が突き刺さる。




「・・・助かったのですよ」




反撃せんと立ち上がる千々石。しかし、その時既に六代の欲望は、新たな標的を捉えていた。





「きれーなさくら・・・・ホオオオオォォォォォォッ!『欲針(グリードニードル)』ゥゥッ!!」





脊髄反射。




空を飛ばない舞空術者が宙を舞う。




コントロールの覚束ない烈風に身を任せて空飛ぶ桜香の真下は、次の瞬間余すところなく針地獄。




ガガガッと床を、壁を削る漆黒の針の触手は、空舞う風使いを串刺しにせんと直角に折れ真っ直ぐ襲い掛かる。





「ハアッ!」




飛ぶのが苦手など関係ない。




脳のシナプスから集中力を搾り取り、広げた桜色の翼を右、左、右。死線をかわす。





「キエアアアアアアアアッ!!」





顔を狂喜に歪め、よだれを撒き散らし、六代は幻想力場を欲望の針に変え、何度も、何度も襲う。





「クソッ!」





犬飼の放った弾丸は触手に阻まれる。




「愛上さん!」




千々石が繰り出す黒い魔神の手も、六代の幻想力場に弾かれ消える。




念動力者は、自分を上回る力の念動力(サイコキネシス)の前には、無力。




もがく。千々石は自分を救った少女を救おうともがき、奮うが、その手は届かない。




「逃げろ!さくちゃん!」




ヘタな飛行が幸いしたか。桜香の不規則な動きがうまい具合に針を避ける。が、1メートル、50センチ、3センチとかわすうち、次第に追い詰められていく。




限界を感じた桜香、賭けに出る。




(ここ!)



広がる黒針の海に見つけた一筋の光明。見逃さない。桜香は力のベクトルをその一点に向けた。





「ハアアアアアッ!!」




それは反撃でなく、逃走。桜香は眼下の一点、犬飼達のいる階段の方へ風を纏って急降下。




下はコンクリート壁。成功してもただでは済まない。だが桜香はためらいなく生きる望みに賭け、墜ちる。




刹那。六代、ニヤリと。




「いただきまああああああああすッ!」




黒の触手針が、一気に消滅したかと思うと、落下地点に像を結ぶは、無数の針を牙にした大きな口。




ハッとした桜香、桜吹雪の出力を止めるも、その身は自由落下。




パックリ開く、闇の口へ―—。





「桜香アアアアアアアァァァァァッ!!」




墜ちる桜香より速く。針の牙が突き刺さるより速く。千々石の念動力より、速く。




色彩の筋と化して飛ぶ塊が、桜香の体をすくい、決して離さず、二人の体が地を転がる。




六代の突き立てた牙が、空しく宙を掻いた。




「だれだ」




不意に力が弱まった。




気を削がれた六代が、血走った目で二人を見る。




少女を救った、少年は名乗る。




「探索部隊39番小隊(レトリバー・サーティンナインス)、並木平秀」




—次章に続く―

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