尖兵グリードⅡ
登場人物
スミス
ドッグス側で参戦している屈強な傭兵。本名も正体も不明。
据え置き用の機関銃を片手で扱う怪力を持つほか、何らかの想能力を用いて戦う。
11-2.尖兵グリードⅡ
「俺が誰か。なんとなく分かってるんじゃないか?伊藤」
肩を撃ち抜かれうずくまっていた伊右衛門、返答の代わりに活水刀を一閃。スミスを真っ二つにしようとする。
が、その一撃は手元が狂ったのか、あらぬ方向へ飛んで壁面をえぐる。
「・・・何故だ」
傍から見ればただ外しただけに見える。しかし伊右衛門の表情からは焦燥と混乱がうかがえた。
「何故思い通りに動けない?」
「さあな。伊藤、年貢の納め時だ」
「・・・まだだ」
肩口から流れる血を押さえつつ、伊右衛門は立ち上がり前を睨む。
「弱者をいたぶる今の体制を破壊するまでは・・・我らの隠れ里はお前たちに焼かれたッ!街を追われた我らの父母が、長い放浪の末にたどり着いた桃源郷を、焼いて殺して犯して消した・・・!決して、決して許さぬ。この腐った世界を根幹から変えてやる。それが叶わなくとも、後の革命者に教訓と勇気を与える大立ち回りを見せてやる!この伊藤伊右衛門をなめるな。我が同胞をなめるな!来い犬共、獅子の戦いを見せてくれる」
「多数の為の犠牲だ」
スミスは言い放つ。
「お前らは想能力の秘術を外部に持ち出した。想能力は強すぎる。強すぎるゆえに教導院の管理下に置かれ、独占することで大多数の平和を守っている。想能力が使えなくとも立派に街で生きる者がどれだけいるか。それを力への欲求のまま持ち出し、現に今、この治世に牙をむいてるじゃねえか。盗人猛々しい。お前らは犯罪者だ」
「言わせておけば・・・その平和を作るまでに何人殺した。治世?荒れ果てているではないか!市民はプロパガンダに右へ左へ踊らされ、逆らう者は有無を言わさず消す。これが治世というなら間違いだ。歴史が証明している。じきに取り返しのつかない大乱が来る!」
伊右衛門の周りを激流が渦巻く。三人は身構えた。
「活水刀——!」
「伊右衛門様!」
伊右衛門の逆巻く激流は、横合いから飛び出してきたもう一つの水流によって止められた。
「・・・ッ、静岡!?何故止める・・・!」
「『共をせよ』と命じられましたれば」
現れたのは伊右衛門の腹心、静岡清水雄。
「この者たちも、伊右衛門様についていくと誓った者たちです」
すると、次々に水流に乗った侍たち——ある者は怪我を負い、ある者は動かなくなった仲間を担いで、それでも闘志を失わずグワッと前を見据え、守るべき大将の周りを囲むように殺到した。
「・・・退きましょう。ここは死に場所にふさわしくない」
「・・・ッ、革命の邪魔をした者共は?」
「テロリスト退治は本業の連中に任せておくのです。それに奴らは・・・。ともかく、退路は我らが切り開きます。生きて次の時節を!」
その時、上の階からただごとでは無い爆音がしたかと思うと、3人と伊藤党の前の空間数平方メートル程度がぐにゃりと歪んだ。
「想痕!?」
平秀と鎌瀬は目を見開く。
伊右衛門はしばし考え込むように目をつむり、無念そうに刀の柄を握り締めていたが、それを腰に差し直す。
「勝負預けておく。次会った時は必ず革命を遂げて見せる・・・退くぞッ!」
伊右衛門は静岡に肩を預けると、激流に乗りあっという間にビルから脱出した。
「敵が逃げるッ!」
「逃げさせておけ」
追おうとする2人をスミスは止めた。
「それどころではなくなった」
と言うと、スミスはタブレット端末を取り出した。
そこには大きく「WARNING!!」と警告の文字が躍っている。
「お前らの仲間、見つけたぞ」
スミスは静かにそう言った。
「来るなら、覚悟しろ。奴らは日本最悪のVVV級能力者・・・六代針と対峙している」
—次章に続く―




