尖兵グリードⅠ
11-1.尖兵グリードⅠ
「さくちゃんは、手を出すな」
犬飼ツヨシ、愛上桜香は、対峙する二人、第七中隊隊長千々石千羽と、謎の組織の一員六代針から大きく距離を取っていた。
「敵が本当にVVV級なら1対1は不利です!私たちも援護しましょう!」
「念動力対念動力の戦いに、助太刀は無意味だ。巻き込まれるのがオチだな」
「でもあの男、危険です!あんな残虐な能力者と戦って負けたら——」
「・・・さくちゃん、あの人が伊達や酔狂でセブンスブラックの頭張ってると思ってるのか?まあ見てなって。『デーモンチワワ』はそう簡単にやられるタマじゃねえ。それに——」
犬飼は焦る桜香を制止し、言った。
「――あの人もVVV級能力者だ」
「<汝等ココニ入ルモノ、一切ノ望ミヲ棄テヨ>・・・ッ!」
千々石、朗々と解詞を唱えると漆黒の丸い穴が空中に、まるで地獄の門のようにぱっくり口を開ける。
パチリと指を鳴らすと同時に、何百もの黒い手が六代を捕えんと穴から飛びかかる。
「ほおおおおおおじいいいいいいいいッ!!」
六代、絶叫。その叫びに呼応して、六代から黒い触手のようなものが這い出す。その先端は針のように鋭い。
ドドッ、と奔流のように触手が伸び、黒い手を迎え撃つ。
具現化した「念」同士の喰らい合い。触手の先端が黒い手の平を貫けば、その触手を次の手が捻じ切る。上下左右に念動力の力場が広がり、一進一退、一対一の念力決闘。
と、千々石の黒い手の勢力範囲がグッと広がる。優勢のようだ。
触手を退け、徐々に六代を包むように黒い手が包囲する。
「千々石さん、勝ってます!」
見守る桜香、指の関節が白く見えるほど固く手を組む。
「このまま押せればいいが・・・!」
その時、劣勢に立った六代が何事か呟き始めた。
「・・・ああ。今日は色々手に入ったなあ。きれいな時計、指輪、はらわた、目ン玉、血、血、血ィィィィッ!まだ足りないよ、ねえまだ欲しいよねえ、欲しい血が欲しい、あのチビ女が泣き叫び迸る血が欲しい、ねえ、欲しいよねえ」
「・・・なんなんですかあの人」
桜香の声は震えている。
「・・・自己暗示か」
「『想詞』ですか?」
「ちょっと違う。想詞は言葉を発することで想能力のイメージをより鮮明にして能力をコントロールするやつだが・・・あいつは言葉を発することである特定の感情を強迫的に引き出してる」
「特定の感情?」
「おそらく、『欲望』。仮説だが、奴の念動力は欲望の強弱に左右されてる。だから無理やりにでもブツブツ呟いて——」
瞬間、おののく桜香の姿が、半狂乱の六代の眼に留まる。
「・・・忘れてた。女の子。かわいい女の子のはらわた。きれいな顔の皮を突き破って飛び出す血と脳漿。ああ。欲しい、いいよ欲しい欲しい。殺す。殺す殺す。殺す殺す殺す殺す。皆殺して奪う、浴びる。塗りたくる。あああああああああッ!!ミィィィィナァァァァゴォォォォロォォォォシィィィィィ!!」
その時、押されていた黒い触手がむくむくと膨れ上がったかと思うと、耳をつんざく絶叫とともに、爆発した。
—次章に続く―




