戦場バレットⅢ
10-3.戦場バレットⅢ
戦場の喧噪を切り裂く激流。
飛沫上げる波に乗ったその男は、一直線にビルの中へ突っ込んできた。
「さっきの覆水術師!?」
平秀がそう言った時にはもう鎌瀬は動いていた。
「瞬獄業炎斬ッ!!」
灼熱の鋭い炎の刃が何本もの光線となって飛び出す。
「押し通る」
飛んでくる光線をひらりと避け、正面から来る一つを瞬時に生み出した水の球で包み込んで消してみせたその男は、そのまま平秀たちの真横を通り過ぎていこうと
した、が。
「・・・無視することはねーだろ」
平秀の一閃。
爆加速(エクスプロ―ジョン)によってコンマ数秒で音速に加速された蹴りが、銀の残像となって男の頭を狙う。
流石にこの攻撃は予想外だったのか、男は薄い水壁で何とか足先を逸らし、蹴りをすんでのところでかわした。
平秀の足は空を切ってコンクリート壁を砕く。
「・・・邪魔立ていたすか」
スルーを諦めた覆水剣士のその男はくるっと反転し平秀たちに向き直る。
「雑兵に構ってる暇はないのだ。この惨状を招いた忌まわしき者共の大将に用がある」
「貴様もテロリストだろうが」
嗤う鎌瀬に男は憤る。
「我らは革命の志士だ。暴虐無頼の徒とは違う。奴らは我々が命を懸けて為そうとしたことを全て水泡に帰した。そればかりか罪の無い無関係な人命を多く奪った。許さぬ。叩き斬ってくれる・・・我が道を塞ぐならお前たちも斬る」
「お前が言うか・・・伊藤伊右衛門」
そう言ったのは、スミス。巨体を揺らして進み出る。
「我が名を知っているか・・・ただで通してくれそうにないな」
「坊主共、引っ込んでろ、ここは俺が——」
「引っ込むのは貴様だ無能力者のオッサンよお!」
飛び出したのは、鎌瀬。
「そんな薄っぺらい水、我が爆炎で消し飛ばしてくれるわあッ!」
「・・・お前、よく『かませ犬』と言われないか?」
鎌瀬は完全にキレた。
「刈り取れ爆炎ッ!!」
生み出した大きな炎の大鎌で、伊右衛門に襲い掛かる。
静。
猛る炎の刃を目の前に、伊右衛門は恐ろしいほど静かに見えた。
だがそれはほんの一瞬。伊右衛門の体は大きく翻り、刃の無い『活水刀』に手をかけ、『動』に転じる——!
「『ムラサメ』ッ!」
圧縮された水の刃は大鎌の真下を掠めツバメの如く浮き上がり、真っ直ぐ鎌瀬へ。
脊髄反射か、鎌瀬がほんの少し体を後ろに傾けた。それで助かった。
水の刃は鎌瀬の銀の首飾りを両断した。もう少しで危うく首が飛んでいた。
大鎌は伊右衛門に生み出されたもう一つの水流にいなされ逸れていく。鎌瀬は腰が抜けたのか、その場に尻餅をついた。
「だから言ったろ坊主・・・引っ込んでろ。平秀、お前もだ」
スミスが伊右衛門と対峙する。サングラスの奥は見えないが、凄まじい殺気を視線から感じる。
「戦場の支配者が誰か、教えてやろう。来い若造」
「吐かせ」
伊右衛門が構える。
「傭兵風情の弾丸は俺に通じない」
「どうかな?」
一連の流れが速過ぎて、手品のようだった。
スミスは右手に抱えた機関銃ではなく左手で腰から拳銃を取り出し、一発。
達人的としか言いようがない早業。
しかし伊右衛門もまた達人だった。
高圧水流の防壁を的確なポイントに生み出し、弾丸を迎え撃つ——!
「グウッ・・・!?」
血飛沫。
完全に弾丸を捉えたはずの水壁が突如乱れ、その隙間を縫って弾丸は、伊右衛門の左肩を撃ち抜いた。
「・・・何故だ」
伊右衛門が手で押さえているのは撃たれた肩ではなく、頭。
その眼は驚きで見開かれていた。
「さあ若造。・・・支配者は誰だ?」
「・・・貴様、何者だ」
—次章に続く―




