戦場バレットⅡ
10-2.戦場バレットⅡ
「俺は傭兵だ」
立ち上がろうとする平秀を太い腕で引っ張り上げて、その男は言う。
「ドッグス側から雇われたな。お前、その格好はレトリバーか?」
「・・・証拠は?」
すると男は豪快に笑った。
「助けてもらっといてご挨拶だな。まあ疑いはもっとも。これで信じてもらえるか?」
男が見せた入構許可証には確かに教導院の印章があった。
「これで信じたか坊主。俺はスミスと呼ばれてる。そう呼べ」
「スミス・・・さんっすか。俺は並木です」
「並木。下の名は?」
「・・・平秀」
少し口ごもって言うと、スミスと名乗ったその男は快活にニッと歯を見せる。
「並木平秀。いい名だ。っと、のんびり名乗り合いしてる間は無い。とっとと片付けるぞ。・・・一緒に来るか?」
「いえ、仲間がいたんですが・・・」
「ヒラシュー!探したぞ」
と、爆炎の向こうから現れたのは鎌瀬剣。
「俺様を置いて突撃しやがって・・・このおっさんは誰だ?」
「スミスさん、傭兵らしい。・・・乱戦だ。ともかく早く片付けて桜香達を探そう」
「ほう、想能力者2人とは心強い。俺も加勢しよう。・・・次はあのエリアだ」
スミスが指差すのは黒煙上がる向かいのビル。
「戦場の歩き方は傭兵が一番知ってるってもんさ・・・ついてこい!」
駆け出すスミスに二人も続く。
「オラアアアアアッ!出てこい木っ端共ッ!」
大音声を張り上げ派手に突っ込み、抱えた巨大なマシンガンをぶっ放す。
突然現れた巨大な的を狙い撃たんとテロリストも迎撃しようとするが、スミスの迫力に気圧されたのかふらついて転んだり、あらぬところに発砲したり。逆に格好の的と化した。
「<刈リ取レ爆炎>ッ!!」
灼熱の炎を時に矢のように、鞭のように、そして剣のように。鎌瀬の操る火が次々に敵を屠っていく。
「フッ、雑魚共が、かませ犬にもならんな。地獄の業火に焼かれ滅ぶがいい」
そしてなんというか・・・いつも通りである。
「こ・・・ンの餓鬼ッ!」
放つ弾丸をすべてかわされ逆上したテロリストがあたり構わず乱射するが。
「・・・遅ェよ」
足元に瞬時に潜り込んだ平秀のハイキックが、敵のアゴを砕く。
「次ッ!・・・って、あれ」
3人で20人ほどのテロリストをあっけなく、一息に制圧してしまっていた。
「いっちょあがりってとこだな」
向こうからスミスと鎌瀬も戦闘を終えてやってきた。
「アネゴ・・・無事ならいいが」
「なんだ、他にも探してる仲間がいるのか?ここで会ったのも何かの縁。見つけるまで付き合って・・・・っておい、あそこを見てみろ」
スミスが指差す先。
そこでは不思議な現象が起こっていた。
数十メートル先の大破したビルの一角。そこが消えていた。
消えていた、というのは正しくないかもしれない。別にその地点が闇に吸い込まれたわけでも、見えなくなったわけでもない。
風景がひどく変色して歪み、空間そのものが捻じ曲がったような。ゲームがバグでフリーズしたかのような。そんな現象が起こっている。
「なんだこれ・・・!?」
平秀と鎌瀬はその地点まで駆け寄り、歪んだ世界に手を触れようとしたが、触れない。物理的にどうこうではなく、まるでこの世界とは別次元の世界であるかのように。
「・・・『想痕』だな」
スミスがゆっくり歩いて、確かめるように見つめた。
「俺も2、3回しか現物は見てないが」
「何だその『想痕』ってのは?」
「想能力が空間に残す傷痕だ。・・・想能力ってのは人間の肥大成長させた心象風景から超物理的な現象を引き起こす超能力。スカーヴっつのは特に、VVV級レベルの大きな想能力が用いられると世界がその想能力の出力処理に追いつかなくなってこんな『不具合』を起こすことだ。でもまあ見てろ、すぐ消える」
スミスがそう言うと、静止していた空間の歪みはにわかに動き出し、ぐるぐると色彩が回転したかと思うと、波長の合ったテレビのように元の風景、元の世界を取り戻した。
「こいつが生まれるってことはだ。つまり極めて強力な想能力者がここで力を振るったということだ・・・近くにいるぞ!」
スミスが言ったその刹那。
大きな水飛沫を巻き上げ、一人の侍がビルの中に乗り込んできた。
—Ⅲに続く―




