暴虐サイコキネシスⅣ
9-4.暴虐サイコキネシス
「何人で来ても同じことです」
大将を討ち取らんと一斉射撃を仕掛けてきたテロリストの銃弾がぴたりと空中で止まる。
千々石がパチリと指を弾くと、銃弾をつかんでいた何十もの黒い手が銃の形に変化、そっくりそのまま撃ち返される。
次いで桜香構えて、
「桜花烈風!」
「ぐあああああッ!」
自ら放った弾丸でもんどりうつテロリストたちを、横合いから桜の暴風が飲み込む。
箒で掃いたゴミのように片側に飛ばされ、無様に壁に衝突して一塊に落ちた。
「お掃除いっちょあがりです」
千々石は桜香にウインクしてニカッと笑う。
戦いは屋内戦の様相を呈してきた。
ドッグスに押されたテロリスト一派は研究棟ビルに逃げ込み、籠城を続けているがそれも時間の問題だろう。
「それにしてもどこから湧いてきたんでしょうか」
千々石が首をかしげる。
「警備は万全だったはず。武器の持ち込みは到底できないし学府内にいる『VV』、戦術級以上の能力者は全てコスモクイーンの管理下におかれ能力発動は容易に阻止できた・・・犬飼くんは襲撃現場で何か見ました?」
「何の変哲もない連中が列から出てきたかと思ったら次の瞬間銃が出現したのをこの目で見ました」
「瞬間転送?」
「恐らく。だがあの量を正確に、しかも学府外から飛ばせるテレポーターなど聞いたことが無い」
すると、にわかに千々石の表情が曇る。
「最悪のパターンですね。考えたくはないけど・・・『両界調停者』の関与を疑うべきでしょうねー」
「ネゴシエーターズ!?」
「彼らの要求は謎ですが、コスモクイーンの支配が及ばない想能力者、それも『VVV』。『戦略級』が揃った彼らが起こす災厄は常に大きな被害を生んできました。・・・十年前の3・13事件なんてのも。奴らの中にVVV級のテレポーターがいるかは不明ですが、備えるべきでしょう」
「・・・本営襲った連中も?」
「その可能性はアリですが・・・今は目の前の敵ですね。犬飼くんも集中して——」
「ぬおおおああああッ!!」
言いかけたその時上の階から悲鳴。そして気味の悪いほどの静寂。
「今のは?」
「・・・知った声です。行きましょう」
三人とシェパード隊員数人は弾痕でボロボロになった階段を駆け上がる。
するとそこには。
「欲しい」
一面血の海。
肌が見えないほど真っ赤に出血した隊員が十名ほど倒れていた。
部屋の中央。生き残った一人の隊員が宙に浮いている。
まるで念動力に遭ったかのように。
突然、闇の向こうから声。
「・・・欲しい。欲しい欲しい欲しい。欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいほおおおおおしいいいいいッ!!」
姿なき絶叫が響いたかと思うと、宙に浮いた隊員は、まるで見えない数千の針に貫かれたように、全身から血を吹き出し、落ちた。
「・・・なあんだ、これもう持ってらあ」
暗闇から声の主がヌッと姿を現し、隊員の死体から何かを取り出す。
婚約指輪だ。
「汚れちまったし、いーらね」
その痩せた男は指輪を放り捨てた。
途端に桜香の真横を質量無き力が猛然と通り過ぎる。
「よくも私の部下を・・・!」
千々石の展開した黒い手が下手人の男に襲い掛かる。
が。
「・・・いい力」
念動力の手の動きが鈍くなったかと思うと男の前で静止、捻じ曲がって瓦解した。
「それにかわいい女の子。いいなあ。欲しいなあ」
男が立ち上がって向き直る。
不潔に乱れた長髪。無精髭の痩せた男。
しかしその両腕にはブランド物と思われる時計がびっしりと付けられ、指には指輪。首から大量のネックレスが肌が見えないほど提げられ、恐ろしく異様。
そしてその血走った眼は、完全にイっている。
「・・・お前らも、欲しい、欲しいよう・・・殺せば手に入るかな」
「なんだこいつ・・・!」
「・・・こいつは身元が割れてる」
千々石が呟く。
「想能力の危険性のあまり研究所に幽閉されたが脱走。『両界調停者』の一味に加わり3・13の惨劇にも関与した超A級犯罪者・・・名前は六代針」
—次章に続く—




