暴虐サイコキネシスⅢ
9-3.暴虐サイコキネシスⅢ
「隊長は流れ弾にだけ気を付けててください」
激戦はいつの間にか研究棟エリアにその中心を移していた。
ドッグス精鋭部隊約100名に対し黒づくめのテロリスト軍団は400はいるだろうか。
前線で戦う対想能力者特殊部隊第七中隊は数的不利を物ともせず互角以上の戦いを展開していた。
じきに2000名の機甲部隊「第一中隊」が参戦する手はずとなっているので制圧は時間の問題だ。
しかし現時点でドッグス側の負けなのだ。
と、本来戦場にいるべきでない雑用部隊の愛上桜香は思う。
テロは起こされた時点で、鎮圧しようと報復しようと、防ぐことができなかった体制への不信を拭うことができない。
それだけで既に敵は勝ったといえよう。
だが、体制側の戦いはまだ続く。
迅速かつ被害を最小限に留める制圧戦。世論を操縦する情報戦。
文武担当は違えど戦い続ける。
場違いな主従2人は、今まさにその戦いの渦中に身を投じていた。
「ああ。俺はいいから存分に薙ぎ払ってちょ」
隊長犬飼の言葉を合図に桜香は潜んでいた物陰から飛び出しその能力を振るう。
「<コノハナサクヤ>・・・!」
生み出すは桜色の暴風。
テロリストの放つ銃弾はことごとく軌道を捻じ曲げられ、砂塵を巻き上げ質量を増した烈風は次々に敵を吹っ飛ばす。
「チッ・・・!」
それを見ていたテロリストの一人が構えたのはロケットランチャー。
爆発で桜香ごと消し飛ばしてくれんとばかり、弾頭を轟音を上げてぶっ放す。
「愛上さん、流石犬飼君の弟子、強いです」
弾頭が突然空中で止まった。
見れば大きな黒い手のようなものに弾頭が鷲掴みされている。
「これはそっくりお返ししますよー」
黒い手がブルンと動くと、静止していた弾頭が反転。撃った本人に命中、爆散した。
「・・・いや、それにしても強力ですね。こんな舞空術者は初めてです。ウチに来ませんか?」
そう言って笑う。
黒い手の主、セブンスブラック隊長千々石千羽は傍から見れば少女にしか見えない小さな体で戦場を支配していた。
「隊長、今の手は?」
「あれか、ありゃあ超能力の王様『念動力』だ」
「あれがですか?」
「物を浮かせたり破壊したり。原理はどれも超物理的な『力場』を生み出すことなんだが。それだけに数ある想能力の中で最も広汎で、最も使い手の心象風景が反映される・・・。千々石さんのは手の形をとり自在に伸縮して味方を守る巨大な盾になったり、敵を直接砕く矛になる。あれが第七中隊の頂点に立つ日本最強の念動力術者――」
「ぎゃあああああああああッ!!」
禍々しい巨大な漆黒の手が敵を吞みこむように叩き潰し、握りつぶしていく。
「――千々石千羽、『魔王の手』」
—Ⅳに続く―




