暴虐サイコキネシスⅠ
9-1.暴虐サイコキネシス Ⅰ
あまりに突然だった。
ほとんど誰も、逃げることも、声を上げることすらできなかった。
突如現れたテロリストの凶弾は市民の群れを血に染めてしまった。
「ッ・・・!」
頭の上を数発銃弾が掠めていった。犬飼が顔を上げるとそこには地獄が広がっていた。
決壊。
もはやドッグス隊員の指示なぞ届かない。パニックに陥った市民は怪我人に蹴つまづき、踏みつけ、散り散りに逃げていく。
追い打ちをかけるテロリストの銃撃にバタバタと倒れ、前にも後ろにも行けず、恐慌は深まるばかり。
誰が?何故?・・・どうやって?
プロセス論を考える暇はない。犬飼は銃を抜き立ち上がる。
パッと後ろを振り返ると先ほど倒れた少女の上に、救護隊員が覆いかぶさっている。
「無事か!」
その問いへの返事を聞く前に、救護隊員の背中についた赤い2つの銃創が目に入った。
「・・・無傷です」
無論自分が、ではなく守るべき少女のことだ。
「死んでも守り抜きます・・・!」
「バカヤロー、死んだら守れねーだろうが」
吐き捨てるように言うと、犬飼は戦場の方へ向きなおる。
「やれやれ、俺は頭脳労働者だってのに。こんなとこで犬死は御免だ。悪いが生き抜かせてもらうぜ」
一発、引き金を引く。
電子銃特有の駆動音のような発砲音と共に放たれた銃弾は――。
「・・・ヒット」
――無法を働くテロリストへの、地獄行き片道切符。
ヘッドショット。
12、3メートルほど先のテロリストが後ろ様に倒れ動かなくなる。
すぐさま横に飛び退き、物陰に隠れる。
戦場で突っ立ってるのは自殺行為。
サブマシンガンの嵐のような銃弾がさっきまで立っていたところをえぐる。
「・・・さくちゃん」
犬飼は無線のスイッチに手を伸ばす。
その時。
「うわあああああああああッ!!」
ものすごい悲鳴が近づいてきたかと思うと、テロリストの男が犬飼の頭上宙を舞って飛んでいく。
「・・・こいつは」
ひらひらと犬飼舞い落ちたモノ、それは桜の花びら。
「隊長、怪我はありませんか」
桜色の烈風を身に纏い、現れたのは探索隊第39番小隊エース。愛上桜香。
「・・・ちっとでも心配して損したわ」
「お見事な射撃でしたね」
「軍用格闘術はからっきしだが、射撃は『優』をとったんだ」
何十メートルも吹っ飛んで行ったテロリストは、地面に頭から墜落。嫌な音を響かせそのまま動かなくなった。
「あいつらは?」
「話せば分かるがそんな時間はなさそうだ」
テロリストは十数人だけではなかったようだ。
覆面にフル装備を整えた黒づくめの戦闘員たちが百名ほど会場に殺到していくのが見える。
そして。
「後ろの連中とは別のテロリストどものようですねー」
その反対サイドからも、全身黒の隊服に身を包む第七中隊が、隊長千々石千羽に率いられ迎え撃つ。
「VV級能力使用制限を完全解除。速やかに制圧します」
「・・・さくちゃん、俺のこと守れよ?」
「・・・それが男の言うことですか?」
「戦場に男も女もねえよ。特にこの世界ではな」
犬飼はニヤッと笑うと電子銃を手中でくるりと回す。
「さあ、反撃開始だ!」
―Ⅱに続く―




