刹那サムライブレードⅣ
8-4.刹那サムライブレードⅣ
「こいつはひでえ・・・」
想像以上の混沌、猛攻。
すぐ近くの声すら聞こえぬ喧噪。ズタズタに引き裂かれた陣営のテント、破壊され黒煙を上げる機器の数々。そして血を流す負傷者。
平秀たちは今まさに、戦場にいた。
「応答せよ、こちら並木だ」
《――おう、犬飼だ。様子はどうだ》
「予想以上に猛攻を受けているらしい。・・・詳しいことは分かんねーが、滅茶苦茶だ。防衛ラインがズタズタになってる。一体奴ら何者なんだ?」
《・・・こいつは『魔法使い』が出ちまったか》
無線越しの犬飼は意味深長なことを言う。
「なんだその魔法使いってのは」
《手っ取り早く言う。敵には想天の女神の管理の埒外にいる想能力者がいる可能性が極めて高い》
「は!?何でだ?またアンテナが効かなくなってるのか?」
《詳しくは話せば分かる・・・が、そうのんびり話してる場合でもなさそうだ。とにかく詳しいことが分かるまでは自分の身を守ることに専念しろ・・・こっちもなかなかに忙しい。切るぞ》
そう言うと、犬飼からの通信は途絶えた。
「有象無象共がわらわらと」
鎌瀬が呟く。
見ると、前方の乱戦から一人、二人と猛スピードで斬り抜け向かってくる人影。
おそらく、賊。
「犬飼が言うには『魔法使い』らしい。気をつけろよ、専守防衛だ」
「思う存分『専守防衛』してくれる。ヒラシュー、貴様こそ流れ弾に気を付けるんだな」
「アホか。こちらこそうっかり殴っちまうかもしれねーから気をつけろよ」
「その時貴様は消し炭だ・・・向かってくる奴は全部俺様のかませ犬にしてやる」
二人、前を睨むと水流ジェットで向かってくる襲撃者の銃口がこちらに向かってギラリと光る。
「・・・<犬モ駆ケレバ>」
「<刈リ取レ爆炎>ッ!!」
音速と猛火。
レトリバー39番隊急造超攻撃的バディ。二人の脳に刻み込まれた想いの異能が、解詞を合図に現実世界に顕現する
「『炎帝の赤壁ッ!」
相も変わらず邪気眼全開、鎌瀬が生み出す灼熱の壁が鉛の嵐を消し飛ばせば。
「・・・その放った弾丸、責任とれるな?」
炎壁の真上、襲撃者の頭上舞い上がる平秀。一瞬静止したように見えたその体は、物理法則を想いで捻じ曲げ加速する。
鋼鉄の雷。自由落下の力を借り最高速に加速したその一撃は、全てを砕く、踵落とし――!
音速のアイアンアンクルは、断末魔の間さえ与えず、襲撃者の頭蓋を粉砕した。
「・・・鎌瀬、答えを教える。戦う理由の」
呟く平秀その頬には返り血が点々とついている。
「こいつらにも、昔のお前にも正義があるんだろ。だが、知らねえ。関係ない。俺は犬でいい。正義なんかで戦わない。ただ俺は・・・」
そして、言う。
「俺はこの世界を守る『世界』を守るために、戦う」
―Ⅴに続く―




