↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10回ループするまでにサッカー日本代表にならないと人類滅亡ってそりゃないよ  作者: いとやん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/19

8回目

 八回目の人生が始まった。


 はい、いつもの五歳です。


 ……八回目か。


 もう、この天井を見るのもすっかり日常になってしまった。


 普通の人間なら、人生八回分も生きれば悟りの一つくらい開けそうなものだが。


 残念ながら、俺はまだまだ煩悩まみれである。


 いまだにクソ神様への文句が尽きない。


 さて。


 ここで、六回目と七回目について少し振り返っておこう。


 六回目。


 五回目で見つけた課題を徹底的に鍛えた。


 周囲の状況把握。


 相手の動きの予測。


 そして、判断速度。


 その結果、二部クラブでは主力として活躍できるようになった。


 ただし、一部からオファーが来るほどの実力には伸びず、日本代表も未達成。


 続いて、七回目。


 今度は、相手を動かすことを覚えた。


 視線や身体の向きで相手を誘導し、空いた場所へパスを通す。


 これが思った以上に効果的だった。


 ついに横浜マリナーズの契約を勝ち取り主力になり、オリンピック代表にも選ばれた。


 めちゃくちゃうれしかった。

 

 が、本大会では、出番なし。


 何しろ、同じポジションにはオーバーエイジ枠で参加した小田伸二がいた。


 あの人、ずっと試合に出てるんだもん。


 そりゃ、俺の出番なんてないわな!


 いや、もちろん、小田さんが悪いわけじゃない。


 むしろ、あの人のプレーを間近で見られたのは貴重な経験だった。


 ……でも、一分くらい出してくれてもよくない?


 そんなわけで、七回目も日本代表A代表には届かず終了。

 

 着実に成長していることは感じるが、それにしてもゆっくり過ぎだろ。

 もっとこう覚醒したりとかないんかな・・・?

 


 そして、今回が八回目。


 そう、残りは、今回を含めて三回。


 ……。


 …………。


 え、三回?


 ちょっとヤバくない?

 

 まだA代表候補にもなっていないんだけど。

 

 ただ、焦る気持ちは抑えよう。もう回数を無駄にはできないんだ。


 前回でオリンピック代表にも選ばれた。


 次は、オリンピックで活躍する。


 そして、日本代表だ。


     ◇


 今回の練習方針は、これまでの集大成だ。


 基礎技術。


 身体づくり。


 周囲の状況把握。


 予測と判断。


 相手との駆け引き。


 そのすべてを組み合わせ、パスを本物の武器にする。


 もちろん、未来の天気も活用する。


 雨の日も、猛暑の日も、事前に分かっている。


 練習計画を立てるうえでは、相変わらず便利だった。


 ……ただ、これだけ人生を繰り返していると、ちょっとした問題もある。


 同じ練習場。


 同じコーチ。


 同じような指導。


 ……ああ、はいはい。


 その練習、もう何十回もやりました。


 なんてことは、当然言えない。


 見た目は普通の子供なのだ。


 中身が何百歳だろうと、周囲からすればただの小学生。


 いや、中身が何百歳の小学生って何だよ。


 自分で言ってて怖くなってきた。

 

 ちなみにサッカーの方はまだマシだ、同じだろうが意識次第で工夫ができるし、何より目的に一致しているのだから。


 学校の授業や行事の方は最近苦痛で仕方がない。

 

 一度さぼってサッカーをしていたら親と先生にしこたま怒られて、結果練習ができず地獄の苦しみを味わったからな……

 

 なので心を無にして精神世界でサッカーのイメージトレーニングをしている。


 そして、積み重ねてきたものは確実に力になっていた。


 ジュニアユースでも、ユースでも、中心選手として活躍した。


 年代別日本代表にも選ばれた。


 そして、プロ入り。


 今回は、最初から横浜マリナーズとの契約を勝ち取った。


 以前はプロになるだけで感動したものだが、今は何の感情も湧かない。

 

 本当の意味で単なる通過点だからな……

 

 ここからだ。


     ◇


 プロになってからも、順調だった。


 もちろん、最初から何でもできたわけではない。


 だが、これまでの人生で苦労したことは、ほとんど経験済みだ。


 プロの寄せの速さ。


 判断する時間の短さ。


 身体のぶつかり合い。


 試合を通した集中力。


 どれも、初めてではない。


 そして、今回の俺には、はっきりした武器があった。


 パスだ。


 味方の動きを予測し、相手の守備の隙間へボールを通す。


 時には、わざと別の方向を見る。


 相手がそちらを警戒した瞬間、本命のコースへパスを出す。


 そうしたプレーが、一部の舞台でも通用するようになっていた。


 試合に出る。


 結果を残す。


 また試合に出る。


 気がつけば、チームの中心選手として扱われるようになっていた。


 ……いやあ。


 長かったなあ。


 今度こそ、本当に一流のサッカー選手に近づいている気がする。


 まあ、人生八回目でようやくですけどね!


 そして、二十二歳。


 俺は、再びオリンピック代表に選ばれた。


 舞台は、二〇〇四年のアテネ。


 七回目では、ベンチから眺めるだけだった大会だ。


 今回は、絶対にピッチに立ってやる。


     ◇


 アテネオリンピック。


 前回の人生では、ベンチで試合を見ていた。


 もちろん、代表に選ばれただけでも名誉なことだ。


 だが、あのときは悔しかった。


 世界の選手たちと戦う仲間を、ただ見ていることしかできなかったのだから。


 そして今回。


 俺は、先発メンバーに名前を連ねていた。

 

 もちろん今回も小田さんがオーバーエイジで選ばれている。

 

 小田さんと二人で日本の攻撃を引っ張っていく形だな。


 ……よし。


 ついに来たぞ。


 オリンピックのピッチだ。


 しかも、今回はベンチじゃない。


 ちゃんと芝生の上に立っている。


 ……いや、当たり前なんだけどさ。


 スタジアムの規模も普段のスタジアムよりもはるかに大きい。

 

 何よりも国の威信をかけての試合だ、プレッシャーが全然違う。

 

 やばい、ちょっと緊張してきた。


 だが、試合が始まると、そんな緊張は吹っ飛んだ。


 ……速い!


 相手の寄せが、想像以上に速い。


 一部クラブでも、十分に速い相手とは戦ってきた。


 だが、世界の強豪はさらに上だった。

 判断スピードが速いのはもちろんだが、身体能力が段違いだ。


 抜けそうなところで相手の足が伸びてくる。


 何よりも強度が違う。

 

 少しでも判断が遅れれば、すぐにタックルが飛んでくる。

 

 日本ではそこまでしないだろってくらい削ってくる。


 身体を寄せられれば、簡単には自由にさせてもらえない。


 これが世界か……


 それでも、俺だって八回分の経験がある。


 何もできないまま終わるつもりはなかった。


 前半。


 中盤でボールを受ける直前、相手の守備が右へ寄っているのが見えた。


 俺は、一度右を見る。


 相手の選手が、そちらへ身体を向けた。


 その瞬間。


 左のスペースへ走り込む松田にパスを通した。


 ……よし!


 松田がドリブルで切れ込む。


 そのままクロス。


 惜しくも得点にはならなかったが、決定的なチャンスを作ることができた。


 ……通用する。


 俺のパスは、世界相手でも通用するんだ。


 だが。


 そんな場面は、何度も作れなかった。


 そもそも日本の方が劣勢で攻撃のチャンス自体が少なかった。

 

 俺も密着マークを受けて思うようなプレイができなかった。


 パスコースを消される。


 ボールを受ける位置を制限される。

 ボールを持っても前を向けない。


 相手の動きを読んでいるつもりが、逆にこちらの狙いを読まれていた。


 ……くそ。


 強いな、こいつら。

 

 守備の乱れから失点し、日本は初戦に敗れた。

 

 結局、グループリーグも突破できなかった。


 俺も何度かチャンスを作り、一定の評価は得られた。


 だが、試合の流れを変えるほどの活躍はできなかった。


 世界の壁は、高かった。


     ◇


 大会が終わり、俺は改めて試合映像を見返した。


 ……悔しいな。


 自分のパスで、チャンスも作れた。


 でも、勝てなかった。


 相手の方が、強かった。


 もちろん、サッカーは一人で勝てる競技じゃない。


 それでも。


 俺がもっと上手ければ、違う結果になった場面もあったはずだ。


 あそこで、もう少し早く判断できていれば。


 あのパスを、もう少し正確に通せていれば。


 相手の動きを、もう一歩先まで読めていれば。


 ……まだ、足りない。


 これだけ人生を繰り返しても、まだ足りないのか。


 だが、以前とは違う。


 今の俺は、世界の選手たちと実際に戦った。


 そのうえで、何が足りないのかを考えられる。


 日本代表A代表になるということは、こういう連中と戦う側に立つということだ。


 だったら。


 **こいつらにも勝てるようじゃないと、日本代表にはなれない。**


 オリンピックに出場できたからといって、満足している場合じゃない。


     ◇


 帰国後も、俺は一部クラブでプレーを続けた。


 試合には出られる。


 アシストも記録する。


 チームの中心選手として、それなりに評価もされている。


 だが、日本代表A代表からの招集はなかった。


 ……まあ、そうだよな。


 当時の日本代表には、優秀な攻撃的ミッドフィルダーがそろっていた。


 中邑俊輔。


 小田伸二。


 ほかにも、海外で活躍する選手たちがいる。


 ……何なんだよ、この世代。


 ちょっと人材が豊富すぎませんかね?


 俺だって、一部クラブでは十分に通用しているんだぞ。


 オリンピックにも出たんだぞ。


 それなのに、代表の中盤には入り込む余地がない。


 しかも、彼らは俺と違って人生を八回もやり直していない。


 ……。


 …………。


 いや、それが一番へこむわ!


 こっちは何百年もかけて、ようやくここまで来たんだぞ!


 あんたら、一回の人生で何でそんなに上手いの!?


 ……まあ、文句を言っても仕方がない。


 彼らには、彼らの才能と努力がある。


 俺には、俺の積み重ねてきたものがある。


 それでも届かないなら、さらに上を目指すしかない。


     ◇


 それからも、俺はプレーを磨き続けた。


 だが、三十歳になるまで、日本代表A代表に選ばれることはなかった。


 五輪代表として世界の舞台に立った。


 一部クラブの主力として活躍した。


 それでも、目標には届かなかった。


 俺は、ノートを開いた。


 【ノートの最終記録】


 挑戦回数:八回目


 最終到達点:一部クラブの主力。五輪代表としてアテネ大会本戦に出場。グループリーグ敗退。


 プロ入り:達成。


 日本代表A代表:未達成。


 主な敗因:五輪で一定の活躍を見せたものの、世界の強豪相手には実力不足。黄金世代の攻撃的MFとの競争にも敗れた。


 今回の成果:パスを武器に五輪本大会でプレー。世界の選手との実力差を具体的に把握。


 次回の方針:得点への関与を増やし、世界の強豪相手でも試合を決定づけられる選手になる。


 残り挑戦回数:二回。


 ……。


 …………。


 八回目、終了。


 残り、二回。


 ……二回か。


 さすがに、笑えなくなってきたな。


 いや、まあ、笑うけど。


 笑わなきゃやってられないし。


 それでも、確実に近づいている。


 最初は、プロにすらなれなかった。


 それが今では、一部クラブの主力だ。


 オリンピックにも出た。


 世界の選手とも戦った。


 あと少し。


 あと少しで、日本代表に手が届くはずだ。


 ……頼むぞ、九回目の俺。


 今度こそ、やってくれ。


 そう考えているうちに、視界が白く染まり始めた。


 次は、九回目。


 残り二回の挑戦。


 ……なあ、クソ神様。


 ここまで来たんだから、せめて最後くらいは応援してくれよ。


 もちろん、返事はなかった。

ほかにもサッカー小説を投稿しています。

この小説とはかなり読み味が違う作品ですが、よろしければご一読ください。


この街に、プロサッカークラブを。

~選手の能力が見えるIT社長、県6部からプロを目指す~


https://ncode.syosetu.com/n2172mu/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。