第二話 2054年の新大阪
『……2054年。』
その数字から頭から離れなかった。
俺は駅の中央に立ったまま、周囲を見渡していた。
どこまで見ても人、人、人。
大勢の人が行き交っている。
聞こえてくるアナウンスも、電光掲示板に表示される列車名も、俺が知ってる新大阪とは全く違っていた。
『……本当に、未来なんだ。』
そう呟いた。
まだ信じられない。
さっきまで俺は、自分の部屋にいた。
鉄道の本を読んでいて、少し眠ってしまった。
それだけだった。
なのに、目を覚ましたら――
28年後の新大阪駅。
「……どうなってんだよ。」
俺は頭を抱えた。
しかし、いつまでもここで立ち尽くしているわけにもいかない。
「とりあえず……駅を見てみるか。」
俺は歩き始めた。
駅構内を歩いていると、巨大な案内板が目に入った。
そこには、駅の番線と路線が表示されていた。
俺は思わず足を止める。
「……なにこれ。」
案内板には、こう書かれていた。
N1・2番線 なにわ筋線
俺の知っている2026年では構想自体しか無い。
それが今では当たり前のように列車が走っている。
さらに下を見る。
20〜27番線 東海道・山陽新幹線
俺の知っている2026年でもここは変わらない。
さらに、その下には――
29〜32番線 北陸新幹線
「……北陸新幹線。」
俺は表示をじっと見つめた。
「敦賀までじゃない。」
表示には、
金沢・富山方面
と書かれていた。
「やっぱり……新大阪まで来てるんだ。」
鉄道好きとして、興奮を隠せなかった。
そしてさらに下。
34〜37番線 リニア中央新幹線
「…………」
俺は言葉を失った。
「リニア……。」
2026年の俺にとって、リニアはまだ未来の乗り物だった。
それが今、目の前にある。
しかも新大阪駅に乗り入れている。
「……乗ってみたい。」
思わずそう呟いた。
だが、まだ何も分からない。
俺は案内板をもう一度見た。
29、30、31、32。
34、35、36、37。
『……33番線は?』
一瞬気になった。
しかし、
「まあ、欠番か。」
駅の番線が飛ぶことなんて珍しくない。
俺はそれ以上考えず、先へ進んだ。
すると、地下へ続くエスカレーターが見えてきた。
その先には、大きく、
リニア中央新幹線
と書かれている。
「……行ってみるか。」
俺はエスカレーターに乗った。
地下へ降りていく。
すると、駅の雰囲気が変わった。
静かだ。
地上の新幹線ホームとは違い、どこか近未来的な雰囲気が漂っている。
そして――
遠くから音が聞こえてきた。
「……なんだ?」
ゴォォォォ……。
音が徐々に大きくなる。
俺はホームの端を見る。
次の瞬間――
ゴォォォォォォン!!
ものすごい勢いで列車がホームに入ってくる。
うわっ!」
風が吹き抜ける。
俺は思わず後ずさった。
「……これが、リニア。」
写真や映像で見たことはある。
でも、実際に目の前を走る姿は全く違った。
俺は電光掲示板を見る。
そこには、
東京方面 のぞみ
と表示されていた。
「……のぞみ?」
俺は固まった。
「リニアなのに……のぞみ?」
どうやら未来では、「のぞみ」という名前がリニアの最速列車に使われているらしい。
「……東海道新幹線は、どうなったんだろ。」
急に気になってきた。
俺は再び地上へ戻った。
駅の案内モニターを眺めていると、運行情報が表示されていた。
東海道・山陽新幹線。
北陸新幹線。
なにわ筋線。
リニア中央新幹線。
見慣れた名前が並んでいる。
しかし――
その下に、見たことのない文字があった。
○○線
「……ん?」
俺は画面を見つめた。
○○線 18時10分発 普通 ○○方面
「……○○線?」
聞いたことがない。
俺は頭の中で、2026年の関西の路線を思い浮かべた。
大阪環状線。
JR京都線。
JR神戸線。
阪和線。
大和路線。
学研都市線。
おおさか東線。
地下鉄。
私鉄。
だが――
○○線なんて聞いたことがない。
「……新しくできた路線か?」
俺はスマートフォンを取り出した。
検索画面を開く。
しかし――
圏外。
「……マジかよ。」
検索できない。
駅員に聞こうかとも思った。
だが、聞いたところで何と言えばいい?
「すみません、ここ2054年ですか?」
なんて聞けるわけがない。
俺は再び電光掲示板を見る。
18時10分。
あと数分。
「……。」
少し迷った。
でも――
鉄道好きとして、知らない路線を見つけてしまったら。
気になる。
どうしても気になる。
「……乗ってみるか。」
俺は○○線のホームへ向かって歩き始めた。
自分の知らない未来。
自分の知らない路線。
そして――
自分の知らない関西。
その先に何が待っているのか。
この時の俺には、まだ分からなかった。
第二話、読んでいただきありがとうございます!
今回はついに、2054年の新大阪駅を少し詳しく描いてみました!
なにわ筋線、北陸新幹線、そしてリニア中央新幹線――。
主人公が知っている2026年とは、大きく変わった新大阪駅。
そして今回、主人公は「○○線」という、聞いたことのない路線を発見しました。
果たしてこの路線は何なのか?
なぜ主人公の知っている世界には存在しないのか?
そして、2054年の関西鉄道には一体何が起きているのか――。
次回、主人公はついに○○線へ乗車します!




