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第8話:海援隊の看板、薩摩の威光

「……おはん、面白いわ。おはんの描く『海援隊』っちゅう会社の構想、とくと見せてもらうど」


西郷吉之助は、俺の提示した事業計画書を無骨な指で叩き、豪快に笑った。


これで、薩摩藩という巨大な後ろ盾を手に入れた。


「ありがたい。……ほいたら、まずは薩摩の抱える不採算部門の整理から始めさせて貰うき。このままやと、金が垂れ流しになるだけで、軍艦一隻すら買えんぞ」


俺は遠慮なく畳の上で筆を走らせ、薩摩の物流ルートにメスを入れた。


長年、薩摩の商人は古い慣習に縛られ、利益の半分を中間搾取業者に吸い取られていた。


それを、俺が構築した「直接流通ネットワーク」で一気に叩き潰す。


(歴史通りなら、薩摩は密貿易で力をつける。だが、そんな回りくどいことをしなくても、堂々と商売で稼げばいい)


俺が指示を出すたびに、西郷の付き人たちが顔を青くし、あるいは驚愕の表情を浮かべる。 


だが、実際に数日で莫大な収益の目処が立つと、薩摩の兵たちは俺を「坂本様」と呼ぶようになった。


「龍馬、おはんのやり方は……毒か薬か分からんが、確かに金が増えゆ」


「毒にも薬にもなるんが金や。要は使いようよ」


俺は屋敷の縁側で、江戸の街並みを眺めた。


歴史という名の『予定調和』が、俺の介入によって少しずつ歪み始めている。


幕府の役人が俺を睨み、志士たちが俺の動向を噂する。


だが、どれだけ吠えようが、この国の経済の血流を握っているのは、今や俺たち『海援隊』だ。


(さて、次は長州か。……薩摩の金と長州の熱量。この二つを『株式会社』で繋げれば、大政奉還なんてただの事務作業になる)


俺の野望に、終わりはない。


次は誰を俺の『株主』にしてやろうか。



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