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第6話:黒船より恐ろしいのは、経済の崩壊

「坂本、お前の言う通りだ。今の幕府には、船を動かす金もなければ、それを操る人材を育てる余裕もない」


勝海舟の部屋で、俺は海軍設立に向けた具体的なロードマップを突きつけていた。


だが、ただ船を造るだけでは足りない。


俺が本当に警戒しているのは、黒船の艦砲射撃よりも先に訪れる「国内経済の崩壊」だ。


開国によって生じる激しいインフレ。


それに伴う食糧不足と暴動。


史実で幕末に多くの民が苦しんだのは、幕府の経済政策が現代の視点から見てあまりに杜撰だったからだ。


「先生、まずやるべきは海軍の創設ではありません。土佐、薩摩、そして長州の商人を束ねる『物流のハブ』を作ることです」


俺は地図に線を引いた。


物流を制する者が、最終的に政治を制する。 


現代の流通革命の知識をこの時代に持ち込めば、物流コストを三割は削減できる。


そこで生まれた余剰利益を、すべて軍艦の購入と優秀な人材の雇用に回すのだ。


「物流のハブ……? 街道の通行手形を握るのではなく、商人の組合を牛耳るということか?」


「そうです。武士のプライドなんてどうでもいい。金さえ動かしてしまえば、幕府も諸藩も、俺たちが用意した『海援隊』という商社抜きでは国を動かせなくなる」


海舟は、俺の描く非情なまでの合理主義に、背筋を凍らせながらも目を輝かせた。


時代は、英雄を求めているのではない。 


時代を『経営』できる男を求めているのだ。


「分かった。お前のやり方で進めろ。その代わり、日本を救えなかったら、俺がお前を斬ってやる」 


「ええ、その時はご自由に。……ただし、俺が勝てば、先生は俺の会社の副社長ですけどね」


俺たちは笑い合った。 


倒幕でもなく、佐幕でもない。


俺という存在が、幕末というこの盤面を、全く別のゲームへと書き換えていく。



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