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保健室には秘密がある  作者: 熊猫ぱんだ


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9/11

前日

卒業式前日。

校舎は半日授業で、午後にはほとんど人がいなくなっていた。


結衣は帰るふりをして、もう一度保健室へ向かう。

扉の前で深呼吸。


コンコン。

「失礼します」

中には高瀬一人だけだった。

目が合う。

それだけで胸が熱くなる。


「また来たのか」

「最後なので」

高瀬は少し笑った。

「まだ卒業してないだろ」

結衣は丸椅子へ座る。


静かだった。

窓の外では、夕方の風が木を揺らしている。

結衣は高瀬を見る。

白衣姿。

たぶん、この姿を見るのもあと少し。

そう思った瞬間、急に寂しさが込み上げた。


「先生」

「ん?」

「卒業したら、本当に会ってくれますか」

高瀬はすぐには答えなかった。

長い沈黙。

結衣の胸が不安でいっぱいになる。


やっぱり迷惑だったのかもしれない。

卒業したら終わりにしたいのかもしれない。

そう思い始めた時。

高瀬は静かに立ち上がった。

そして結衣の前まで来る。

距離が近い。

心臓がうるさい。


高瀬は少し困ったように笑った。

「……そんな不安そうな顔するな」

優しい声。

結衣は唇を噛む。

すると高瀬は、そっと結衣の頬へ触れた。

一瞬、息が止まる。


「ちゃんと会う」


低い声。

「だから今は、卒業しろ」

結衣の目に涙が滲む。

高瀬はその涙を見て、苦しそうに眉を寄せた。


「泣くな」

「だって……」

「俺まで揺らぐだろ」

結衣は笑ってしまう。

涙でぐしゃぐしゃなのに。

高瀬も少し笑った。


その瞬間。

結衣は衝動的に高瀬へ抱きついていた。

高瀬の身体が一瞬強張る。

でも、振り払われなかった。

白衣に顔を埋める。

安心する匂い。

高瀬はしばらく動かなかった。


やがて、諦めたみたいに小さく息を吐く。

そして結衣の背中へ、静かに腕を回した。

「……あと一日だ」

掠れた声。

結衣は胸元を掴みながら、小さく頷いた。


卒業まで、あと一日。


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