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ブサイクと言ってきた相手と婚姻しました。  作者: 夏月 海桜
ポリーナ十六歳〜十七歳
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じゅうさん。

 第一王子殿下の婚約者として殿下にエスコートされてパーティーに出席する。我が家の馬車で王城に到着し扉が開かれるとサッと手が差し伸べられた。御者が私を馬車から降ろすために差し出してきた手だろうと思い、そっとその上に手を乗せた瞬間、違和感を覚えて同時に鳥肌がブワリと立った。違和感は御者の固い掌とは違い柔らかい掌と公爵家の使用人として手入れはしているだろうが追いついていないのかカサつく肌をしているはずなのにカサつきの無い肌で。そして何より、この手を私は知っていると無意識に思ったら鳥肌が立った。

 ……この時点で誰の手なのか予感したけれど、まさかという思いもあった。

 でも手に引かれて馬車から降り立って、やはり、と予感通りだったことに顔には出なかっただろうけれど内心は帰りたいな、と思った。引き攣った顔をしていないか、それが心配だ。

 取り敢えず手を離してからカーテシーをして挨拶をする。


「第一王子殿下、本日は十九歳の誕生日おめでとうございます。パーティーの成功を願います」


「……ありがとう」


 少しずつ会話(主な内容は視察内容や国の政などだけど)が増えたので礼を述べられても最初ほど違和感は無い。それだけだけど。お礼を言ってもらえて嬉しいです、なんて気持ちはまるでない。取り敢えずエスコートに従うしかない。

 ……相変わらず鳥肌が治らないし触れている手の違和感も消えないけれど。

 私と婚約した時には既にいた侍従さんはこの度専属執事に役目が変わり、新たに侍従がついた、と専属執事さんが紹介してくれた。よろしくお願いしますね、と挨拶をした後は無言。第一王子殿下が何か言いたいことがあるかのように視線を向けてきていることに気づいても気づかないフリを続ける。

 必要最低限の付き合いの婚約者というスタンスを崩すつもりは無い。

 此方が散々歩み寄ろうとしていた時には全く歩み寄る姿勢を取らなかったのに、自分が歩み寄ろうとしているからと言って私がそれに付き合う必要は無い、と思っている。

 仮にそのことで何やら思うことがあって……簡単に言えば……腹立たしいと思うのであれば、それこそ身勝手というものだ、と糸よりも細く繋がり始めた私たちの関係はプツリと切れてしまうだろう。いえ、私が断ち切る。

 そのことを分かっているのかいないのか、それはさておき。

 今のところ第一王子殿下からそのようなことは言われたことはない。

 なので糸より細い関係は今のところ続いている。互いが死ぬまでその細さが続くのか、プツリと切れるのか、逆に太くなっていくのか。それは私も分からないけれど。

 取り敢えず今日はパーティーを成功させるために私も婚約者として役割を果たすべきなのだろう。

 エスコートされたまま、控え室へ行き、侍女がお茶を持って来たので口に含む。それから執事に昇格した彼から本日のパーティーについての流れを教えてもらう。婚約者として殿下と共に入場し殿下の挨拶を経て誕生日パーティーのコンセプトを発表するとか。

 国王陛下の時は国内の様々な商人たちを招き入れて他国で流行している嗜好品やら装飾品やらを広めることにした、とか。もちろん流行したらしい。三年後の王弟殿下の時はその流れに乗って他国の芸術鑑賞を行った、とか。有体に言えば他国で流行している音楽に合わせたダンスを王弟殿下と王弟妃で覚えて踊ったらしい。

 では、第一王子殿下はというと。

 逆に国内に目を向けて各領地にて出来た特産品の新商品を紹介するようなコンセプトにしたそう。ああだから視察の報告書みたいなものが手紙に書かれていたのね、と納得はした。あの手紙の山の中で冷めた目で見ることもなく読めた部分とも言えたわ。

 それからコンセプト発表の後に新商品を実際取り寄せて披露する時間をもうけ、その後は、その新商品を使ったカトラリーでの食事やその食事そのものが新商品の食材を使用するとか。

 なるほど、実際に提供することで試しに食べてもらったり使用してもらったり新種の花を愛でてもらったりするらしい。殿下の誕生日パーティーはそんな感じで進行すると理解した。

 またそんなコンセプトだからか、通常の夜会とは違って今回はダンスの時間は設けない。その代わり婚約者の居ない令息令嬢のために気軽に会話を交わせるように殿下と婚約者である私が積極的に声をかけていくことにする。

 ……その説明に至った時点で私のアルカイックスマイルは無に激変しただろうなと、どこか冷静な頭がありつつ、笑みは消えた。意図的に消したのではない。自分でも驚いたけれど消えた感覚が、した。


「私と殿下で婚約者のいない令息と令嬢の仲を取り持つ、と……?」


 ……殿下の執事へ向けた声は、自分でも驚くほどに低いものだった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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