じゅういち。
結局、四十八通目まで可愛いと思っていた。
最初のことを謝れなかったから言えなかった。
綺麗になった。
お茶会に出られる年齢になってお茶会に出て来て欲しいと願ってた。
エスコートしたいと思ってた。
似合う贈り物が分からず同じ物しか贈れなかったことを悔やんだ。
などなどの言葉が並び、果ては去年の十五歳の私の誕生日には一緒に公務が出来ることを喜んでいた。よろしく頼むと言う予定だった。その時には今までのようにお茶に誘われたら同席してきちんと誕生日おめでとうと言う予定でもあった。とまで書かれていて、なんていうか嫌悪しつつある。
「エミル。独り言を言うから聞かないでいてくれるかしら」
「寧ろ当主様か奥様にその気持ちを打ち明けられた方が宜しいか、と」
「そうかもしれないけれど。王命が覆ることが無いから。お父様とお母様に知られたら国を出て行きかねないわ」
「……確かに左様にございますね。では、耳を塞いでおりますのでどうぞご遠慮なく」
エミルは言うが早いか、耳を塞ぐ。
「今さらそのようなことを書き連ねてもらっても嫌悪しか持ち得ませんわぁ!」
手紙に向かって指を突き付けて言ってみる。少しスッキリしたので、それで終わりにしておくことにした。それからおそらく四十九通目が届くとは思うけれど、届いた手紙にサッと目を通し終えたら、手紙を書く事にする。
「エミル。殿下に手紙を認めるので家令にお願いして手紙を王家へお届けして頂戴な」
耳を塞ぐのを止めたエミルに告げると畏まりました、と頭を下げる。直後にやっぱり届いた四十九通目にサッと目を通して、ようやく私の体調について記されているのを目にした。それとなんだかよく分からないけれど、私の魔法士の仕事を目にして、麗しく思ったとか魔法が美しいと思ったとかまで書かれているけれど、最早どうでもいいと思う。
「あなた様とは政略結婚。それも覆らない王命ですので結婚は致します。子も産みましょう。ですが、それだけです。謝罪は受け取りました。もう謝罪は要りません。それを許す許さないではなく、あなた様から謝罪を受けた以上、受け取る以外は無いのが臣下としての私の立場です。交流をお望みならば今まで通りの期日での交流でお願い致します。あなた様の視察のお話と私見は我がレバーム領を含めて、私にとっても有意義なものでした。この点においては今後も手紙または結婚後も話題に致したいと存じます。それ以降の手紙の内容についてはお応えしかねます。また体調は戻りましたのでこれより先は見舞いの手紙も品も頂くのは忍びないのでお気になさらず」
ポリーナ・レバーム
時候の挨拶もそこそこに、本題に入った手紙は無礼かもしれないですが、これ以上手紙が続いたら、鳥肌が止まらない気がしたのです。
困ったことに私の両腕は長袖のドレスで隠れていますが、自分の感覚で分かるほどに粟立っているのです。嫌悪していることが視覚で客観的に見ずとも分かります。
そんなわけで必要最低限の礼儀は押さえながら認めた手紙をエミルに手渡しました。
「失礼します、お嬢様。もしやお身体に異変がございますか」
手渡したのが失敗でした。
嫌悪による悪寒で身体が震え、手も震えてしまったので、エミルが私の全身に視線を向けてきたのが分かります。
なんでもない、と誤魔化したつもりですが、誤魔化されてくれなかったので正直に伝えるしかありません。
「嫌悪しているみたいでね。肌が粟立っているの。でも報告はしてもいいからお父様とお母様に王命が覆らない以上は、呑み込んで欲しいと言っておいてくれる?」
エミルは私を痛ましそうに見てから改めて頭を下げて手紙を家令に渡して参ります、と下がって行った。ついでに家令経由で私の異変について報告しているでしょうが、こればかりは仕方ありません。そして王命が覆らない以上、呑み込んでもらうしか無いのです。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




