じゅう。
四十二通目は私のことについて、と予告されていたように初顔合わせの時の心境から書かれていました。
「可愛い、と思った。……は?」
初顔合わせで私を見ての感想が書かれてます。
可愛いと思った、だそうです。
もう一度「は?」 です。淑女教育どこ行ったレベルで品がないかもしれませんが、知ったことではないですね。本日は人払いもしていないので、専属のエミルが私のそんな淑女らしくない失態に咳払いをしてきますが、いえ、何度でもこの一言を見て言いますよ。
「ねぇエミル」
「なんでしょうか、お嬢様」
「初対面で可愛いと思ったらしい相手にブサイクだと言い切って、その後十数年謝ることの出来ない人の、可愛いって信じられる?」
「信じません」
エミルは、私の具体的な質問に、誰のことか分かっていて即答で否定してくれた。……ブランカの教育の賜物なのか、エミルも私大好きだよね。嬉しいけども。でも、そうよね。信じられないよね。私も信じられない。
「百歩どころか一千歩譲って。初対面じゃなくてもあのくらいの年齢の頃にブサイク発言を謝ってくれて、その上で可愛いと思った。なんて言われれば、まだ信じられたかもしれないけど。今頃当時の気持ちを書かれても、正直なところ何を言ってるんだろう、この人。としか思えないんだけど、エミル。この感情はどうしたらいいかな」
真剣な気持ちでエミルに質問したけれど、エミルも困惑したような表情。
「それは……そのままお伝えしても許される立場ではないですか?」
王命ではあるものの、事情が事情なだけにお嬢様が本音を言ってもお咎めは無いと思います、とエミルは続ける。そうかしら。まぁ本音を言っても許される状況ではあるだろうけれど。一応向こうはようやく歩み寄って来ているわけだし、直裁な言い方ではなくて遠回しの言い方に止めつつ、伝えてもいいのかしらね。
取り敢えず四十二通目から昨日届いた四十八通目の手紙を読んでしまいましょうか。うかうかしていると四十九通目が届いてしまうかもしれないし。
四十二通目の出だしでストップしていたので続きを読み進める事にします。
「……ねぇエミル」
四十二通目を読み終わった私は、頭と目と心が一気に疲労しました。その疲労を押し隠し、四十八通目まで一気に目を通します。
更に疲労が蓄積された気になりました。それからドア前で控えているエミルを呼ぶ。
「はい」
「私と殿下のこと、ブランカから事細かに聞いているかしら」
「はい」
「じゃあ確認して欲しいのよ、この手紙」
私の目がおかしくなった気がして仕方ないので便箋をエミルに押し付ける。エミルは読んでも宜しいのですか? と確認してきたので、ぜひ読んで欲しいと頼む。
「で。あなたがブランカから聞いた殿下の私への態度と、あなたが見て来た殿下の態度を考慮して、この手紙の文章内容にオカシイところはないか、教えてくれるかしら」
畏まりました。了承したエミルが四十二通目から目を通しています。彼女の無だった表情が段々と引き攣っていくのが分かりますわね。無表情であることは侍女として正しく、公私を分けている証です。私が侍女ではなく接してね、と言えば砕けた喋り方や笑顔も浮かべてくれますけどね。さておき。
「お嬢様。コレ、私が見聞きしている第一王子殿下の言葉や態度とまるで違うのですが……。この手紙を書かれた方は別人が書かれたのでしょうか」
「一通目から筆跡が変わってないから、最初から代筆者が居るのでなければ、本人が書かれたものでしょうね」
エミルが本当ですか? と表情で訴えてます。気持ちは分かります。私も全く同じ気持ちですから。
だってねぇ……誰が思います? ブサイクと言ってきた上に謝りもしてこない人が、それを悔やんでいたのは兎も角、会うたびに可愛い、綺麗になったと伝えたかったけれど、声に出せなかった。
……なんて懺悔が書かれている手紙をもらうなんて。
別人が書いているとしか思えませんよね。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




