いち。
大規模な魔獣討伐は一ヶ月、続いた。
あれは光陰り月の始めで終わった頃には葉枯れ月に入っていた。この国は十五ヶ月で一年。雪待ち月で始まり彩色待ち月で終わる。長の大雨月がちょうど半年程に辺りそこから三番目が光陰り月。その次が葉枯れ月。そこから葉落ち月と葉無し月を経て一年の終わり彩色待ち月を迎える。
そうして一年を終えて現在は年明け雪待ち月と雪盛り月を過ぎて雪溶け月を迎えた。
この月は第一王子殿下の誕生日がある。
あの大規模な魔獣討伐でかなり大掛かりな魔法を使った私だけど、そこから大師匠に魔力を分け与えられて更なる魔獣討伐を続けることになって。治療魔法ではなく戦闘魔法を駆使して魔獣討伐を終えた時には、疲労困憊どころの話では無かった。
師匠は何度となく私に休むように言ったし、大師匠にも魔力を分け与えないように抗議していたけれど、私も大師匠もそれを頑として跳ね除けた。私の魔法で鳥型魔獣が簡単に討伐出来ているからに他ならなかった。師匠もそれを理解していたけれど、私のために忠告してくれていたことも分かっている。
それでも私は、師匠の言うことに逆らって戦闘魔法で魔獣討伐を行い続けた。
その結果。大師匠があと十日程は長く掛かるだろうと予測していた魔獣討伐が短くなった。そのことに師匠だけでなくこの国の全ての魔法士が喜んで私を褒めてくれたほど。ファスさんもライさんとリルさんもニースさんもレンフォリー様も、他の魔法士さん達も、みんなが。
師匠も大師匠も喜んで褒めてくれた。
それでも師匠は唯一の弟子である私が無茶をしたことに苦言を呈したし、褒めてくれながらも凄く叱ってきた。でも師匠のお説教は最後まで聞くことは出来なかった。
ーー私がぶっ倒れたから。
強制的に大師匠の魔力を与えられて自分の身体の負担を超えて魔獣討伐のために魔法を駆使していたから、反動でぶっ倒れた、らしい。
魔獣討伐を終えた葉枯れ月から葉落ち月を過ぎ葉無し月の半ばまで意識は戻らず、渾々と眠り続けていた、らしい。目覚めた私に、師匠もダンもエミルも侍女を辞めてダンの妻として子どもの母として過ごしていたはずのブランカもお父様もお母様もパッドリーも大泣きしながら叱ってきたことで、自分の状況を掴めた。
いやぁでも、魔獣野放しに出来ないじゃない?
と言ったら、師匠から顳顬を握り拳でグリグリグリグリとされて久々に怒られてしまったことに気づいた。
そして、そんな師匠を見ても誰も止めないどころか、お父様に至っては師匠にもっときつくやって下さいとか言ってた。……それだけ心配をかけたことは分かったので甘んじて受け入れましたけども。
そこまで眠りに落ちていた私は、まぁ魔力は回復していたものの、体力は落ちていて。葉無し月を過ぎ彩色待ち月も通り越して雪待ち月に入ってようやく体力が戻った。
尚、大師匠は、師匠に抗議されてもどこ吹く風とばかりに飄々としてあちらこちらをフラフラとしていたそうな。……羨ましい。私がやっと体力を戻した頃にフラリとどこかから帰って来て私の頭をガシガシと撫でつつ討伐に対してよくやった、と褒めてくれた。
その間。
王子妃教育は終わっていて王太子妃教育も王妃教育も無い私は、殿下と交流するためのお茶会があるだけだったけれど。もちろんお茶会は開催することも参加することも出来なかったし、他の家のお茶会にも公務にも参加は出来ていなかった。
そうして雪盛り月も過ぎて雪溶け月を迎えた。
つまりまぁ、今月にある殿下の誕生日が久しぶりの殿下との交流日にあたるわけだけれども。
「何十回見ても無くならないのね、これ」
討伐直後にぶっ倒れた時は、その近くで魔獣被害の無かった街の宿にて療養に務めていた私だったけれど、意識が戻ってからは王都の公爵邸に帰って来ていた。
その私の自室に何十回と見ても消えない手紙の山がローテーブルの上に置いてあった。
差出人は一人。
ーー第一王子殿下その人からだった。
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