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イチ。

 父上から婚約者が決まった、と言われた。

 結婚する相手……父上と母上のようにずっと一緒にいる相手と聞いて、嫌だ、と思った。

 七歳になったから、とお茶会というものを開いて、友人や婚約者候補を探す、と言われた。この前、それに参加した女の子達から私は手を引っ張り合うことをされて痛くて泣きそうになった。

 直ぐに従者が止めてくれたが、止められなかったら腕を痛めていたかもしれない。従者に止められた女の子達は、その次は私の隣に座りたい、とケンカばかりで大好きな菓子も食べられない。

 これも従者が止めてくれて、友人になれそうな男の子ばかりが側に来た。やっと落ち着いて菓子もお茶も飲めたことに安心した。

 それを思い出すと、婚約者という女の子も絶対ワガママか気が強くてうるさいだけだろう。

 やだなぁ。うるさいヤツと結婚なんてしたくない。どうせ私の姿がカッコいいとか王子だからとかそんなんで結婚したいってワガママを言ってきたんだろう。

 そうだ!

 ブサイクだって言ってやればワガママを言って婚約者になった女の子も婚約者をやめたいって言って来るかも!

 それでもやめないなら、また考えればいいか!

 そう考えて私は婚約者との顔合わせに向かった。

 顔を見て……他の女の子の方が可愛いとは思う。ブサイクと言う程ではないけど。でもうん、ここはワガママを言ってきたこの女の子にワガママは許されないよ、と知らせないといけないから、と言ってやった。


「こんなブサイクと婚約するなんて嫌です」


 ショックで泣き喚かれたら面倒くさい、とは思ったけど、どうせワガママ娘なんだから泣き喚く上にワガママ言ったことを父上が嫌になって婚約は無し、とか言うんじゃないか、と期待した。

 泣き喚くこともなく。

 淡々と名乗って挨拶をしている。

 ……アレ?

 それどころか私が父上に叱られてしまった。

 どういうことだ。

 それに、なんだか大人が喋っているような口調で、本当に五歳なのか疑う。

 いや、姿は私より小さいけど。

 それに何故か、私のブサイク発言は無かったことにされてしまったようだし、父上から期待通りに婚約は無し、という宣言も無い。それどころかなんだか気づいたら文官が一人現れて父上とワガママ娘との間で契約がどうのこうのとか言っている。……何を言っているのかさっぱり分からん。

 だけど、これだけはなんとか分かった。

 このワガママ娘と婚約が無くならないということ。

 なんでだ。こんなブサイクと婚約することの何が必要なんだ。それに婚約者は結婚する相手だろ! 好きな女の子と結婚するものじゃないのか!

 ……いや、まだ好きな女の子なんて居ないし、うるさくてワガママな女の子ばかりだけどさ。

 ……あれ、でもこの子はお茶会に来ていた女の子達みたいに私がかっこいいとか言わないし、勝手にベタベタしてこないし、というか、殆ど私のことを見ない、な……?

 なんでだ?

 王子と結婚したいから婚約者になったんじゃないのか?

 はっ。もしかして、あれか?

 三回目のお茶会の時に私の側に近寄って来ない上に遠くから私を見ても詰まらなそうな顔を見せた女の子がいて、それがなんだか初めてのことだったから不思議に思って、私の方から近寄ったら、途端に笑顔を浮かべて腕をするりと組んで来て


「殿下! 私のことが気になったんですね!」


 なんて言って、私が腕を抜こうとしたらガシッと離さないとばかりに両手で掴んで来た子がいた! あの女の子と同じか! 危うく私は騙される所だった!

 そう思って睨みつけていたのだけど、そんな私をチラリと見ただけでまた父上や文官と話している。

 話している内容は難しくて分からないのが悔しい。

 そのうち、なんだか父上が王家の歴史を話し出したけど、女の子は覚えられません、という一言を繰り返すばかり。物覚えが悪いのか。こんな女の子と婚約しているのは、やっぱりダメだと父上は言わないだろうか。

 でも、結局、婚約無しとは言われなくて、いつの間にか、あの娘が城に来たら会うことが決まっていた。

 はぁ? あの娘、何を勝手に決めているんだ! やっぱりワガママでどうしようもない女の子なんだ!

 ーーだけど、あの子とその父親が帰ってから、父上と、あと母上に叱られた。

 なんでだ。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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