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邪神転生ガール  作者: megajoy
7/32

転7 〈邪神〉だけど、思い出の場所で確かめ合う。

さあ、イチャ♡イチャ♡の数を数えろ!///

────かくて、私たちふたりは、電車の最寄り駅で降りたあと、

思い出の公園へと向かっていた。

ちなみに、ヒメカとは、恋人繋ぎしたままで歩いている。


……ヒメカの手、柔らかいなあ~……うへへヘ。

などと、十数年間の空白を埋めるように、その感触を味わう私だ。


それはさておき。

おばあちゃんの家もある、この街並みは、私にとっては見慣れたものである。


一方、不慣れかと思っていたヒメカの、公園へ向かう足取りは、

確かなものだった。

その迷いのなさは、十年以上も海外に行っていて、この街を離れていたとは

思えない。


「───そっか。ヒメカの家、このへんにあるんだ?」


考えてみれば、当然だ。

そうでなきゃ、十年前に、この公園で私と会えるわけがない。


「………昔はね。今は、別のところに住んでる」


ヒメカの答えに、ふうん?、と納得しかねる私。

それにしたって、ヒメカの歩く道の選び方は、自信にあふれているように

思えたからだった。


「……ヒメカ、ひょっとして、日本に戻ってきてから、あの公園に通ってた?」


歩きながらの私の問いかけに、ヒメカは、照れ笑いを浮かべる。


「うん、実は、時間を見つけたら、行くようにしてたの────あゆちゃんに

会えるかな、って思って」


おいおいおいおいおいおい………やっぱり天使じゃない? この

頬を染めて微笑むヒメカに、またまた見惚れてしまう。


ヒメカって可愛い、私は改めてそう思った。


「そっか。じゃ、私と一緒だ」


「えっ……」


「私もさ、あれからずっと、時間あれば、あの公園に行ってたんだ。

ヒメカに会えるの、期待して」


そう、私はヒメカと約束した日からずっと、公園を定期的に巡回していた。


おばあちゃんの家へ行くのにカコつけたり、ただ純粋に直行したり。

雨の日も、雪の日も、行ってみたことがあったっけ。


そうしていれば、ヒメカとまた会える、と信じて。


………なんか、下手しなくても、ストーカーっぽいな。

自分で自分の偏執気質、じゃなかった、恋心が怖い。


それにしても、ヒメカが日本に帰ってきてからの約一年。

その間で、偶然にでも、公園で会うことができなかったのは、

間が悪かったのか、運がなかったのか。


金髪ヒロインのエロゲのやりすぎで、邪念が高まって、徳が低くなってたかしらん。


そんなバカなことを考えていると、私の手を握るヒメカの力が、少し、緩んだ気がした。

そして、ヒメカは、立ち止まってしまう。


私も何事かと立ち止まって、その顔を見れば、ヒメカは、なんだか、沈痛な

おも持ちになっていた。


「……ヒメカ?」


「ごめん────ごめんね、あゆちゃん………」


「えっ。な、なに? どした?」


ヒメカの今にも泣き出しそうな声に、私は慌てて問いかける。


「わたしがちゃんと、いつ日本に帰ってくるか言わなかったから、余計に

あゆちゃんを待たせちゃって────。でも、あの時は、十年以上も

海外むこうにいるなんて、思ってなかったの……本当だよ?」


「あっ。いや、それは仕方ないよ! だから、全然平気! なんなら、

二十年とか、三十年だって、待ってたから!」


慰めるように、早口気味で言いつのった。


でも、実際、一言一句、本当に本気のことである。

たとえ、もし、高校一年生時にヒメカが帰ってこなかったとしても、私は、

公園に通い続けていた。


〈約束〉を交わした、ヒメカと、また会うために。


「────本当に?」


「う、うん、本当」


私の返答に、じっと目を見つめてくるヒメカ。


「………じゃあ、どうしてすぐに、〈約束〉のこと、わたしに言い出してくれなかったの?」


うぅっ!? 痛いところを……!

尻込みしていたというのが率直な事実なんだけれど───仕方ない、

それを、正直に話そう。


「───最初ね、名前を聞く前、学校でヒメカを初めて見た時、直感した。

私と〈約束〉したヒメカだ、って。でも……それを確認するの、怖かったんだ」


「怖かった……?」


「十年も前の〈約束〉だしさ、ヒメカと一緒にいたの、本当に、ほんの

短い間だったし、私が、一方的に大切に想ってるだけだったら、

どうしようか、とか、髪と眼の色と、名前が一緒の別人かも、とか……

そんな風に、いろいろ不安になっちゃって。それに────」


しどろもどろになりつつ、本音を、喉から押し出す。

それから、ヒメカから目をそらして、言った。


「ヒメカ、滅茶苦茶美人になってたし。その、私なんかが、うかつに

話しかけちゃいけない、って思っちゃうくらい」


「なあに、それ」


くすっ、とヒメカは優しげに笑った。

くぁー! そういうとこやぞ! 菩薩微笑(スマイル)や! 好き!


「つまりその……怖じ気づいた、っていうか────うん、結局、やっぱ、

ヒメカと、心の温度差があったら、な、泣いちゃうかも、って。

そう思ったら、怖くなって。〈約束〉のこと、ヒメカのこと、確認するの、できなかった」


言葉の最後になるにつれ、たどたどしく、片言みたいになってしまう。

自分の弱さをさらけだしたのが恥ずかしくて、つい、顔をうつむかせてしまった。


……〈邪神〉覚醒しても、やっぱり私は、自分に自信が持てない、

陰キャぼっち女子なのである。

そう自己嫌悪に陥りそうになっていると、ヒメカが、ぎゅ、と、手を握り直してきた。


「そうだったんだ……じゃあ、わたしも、一緒」


「え……」


ついさきほど、私が言ったようなヒメカの言葉に、顔を上げる。


「────わたしも、学校でひと目見て、あゆちゃんだ、って

わかったけど……わたしのこと、忘れてるのかな、って。あゆちゃん、

自分からは、話しかけてくれなかったし」


「あ、ご、ごめん……」


「それで、わたしも、怖くなってた。もし、〈約束〉のことも忘れちゃってたら、

どうしよう、って、不安で不安で仕方なかったんだよ? あゆちゃんの、

ちゃんとした名前、聞いてなかったし────直接、〈約束〉のこと、くに

けなかった」


あーっ!? そういやそうだった……!

私が最初、ヒメカに会った時、“あゆ”は愛称だということを、指摘せずに

放置したままだったのが悪い────!


即座に感動の再会に至れなかった原因は、まるまる私のほうにあった!

もぉ~! 当時の私の、馬鹿馬鹿お馬鹿!


「だからね、わたし、卑怯ひきょうなことしちゃった。初対面のフリして、

あゆちゃんに思い出してもらおう、って、ちょっとずつ話しかけていって。

自分からは、小さな時のこと、〈約束〉のこと、言い出さずに………ずる

女の子でしょ? 天使様なんかじゃないんだよ、わたし」


えへへ、と、ヒメカは、嘘がばれた子供のように笑う。

そんな君は、小悪魔なエンジェル────! 充分に、天使ですとも……!


無言でひとりヒメカに胸をキュンキュンさせていると、ヒメカが、私の機嫌を

うかがうように、瞳をのぞきこんでくる。


「……幻滅した?」


「全然! むしろ逆!」


「えっ」


食い気味に即答した私に、ヒメカは、虚を突かれたような顔をした。

私はヒメカと正面から向かい合って、その両手を、きゅっ、と強く、

でも柔らかく、握る。


「────ありがとう、ヒメカ。……こんな臆病な私を、見捨てずに

いてくれて。それと、〈約束〉を、忘れずにいてくれて。本当、すっごく、

嬉しい………大好き」


“大好き”って、本日何回言うんだ、と思いながらも、ストレートに告げちゃう私。

言われたヒメカは、頬を紅潮させて、はにかんだ。


「見捨てるわけ、ない。〈約束〉を、忘れるわけないよ────あゆちゃん、

わたしも、大好き」


ヒメカは、微笑を浮かべて、そう告げてくる。


「ヒメカ……」


ヒメカの瞳を見れば、潤んでいる感じだし、これは、キスをする流れ……!

あっ、でもここはまだ天下の往来、さすがにJK同士がキスするには、

目立ちすぎる────!


早く公園に行こう、すぐ行こう!と、ヒメカを急かしたくなるも、グッと我慢。

ムードは大事、さっきヒメカに、ちょっと怒られたからね。


「───“本当の本当に、好き”。私がヒメカのこと想う気持ち、“真実の愛”なんだね」


ムードを重視して口にしたのは、ふたりの思い出の中にあるような一節。

それがわかったのか、ヒメカはいっそう嬉しそうに笑って、言葉を返してくる。


「ありがとう。わたしもあゆちゃんのこと、“本当の本当に、好き”、だよ」


なら、次に言うべきことは、決まっていた。


「「私たち(わたしたち)“両想い”だね(“両想い”だね)」」


────お互いに、目を見合わせる。


シンクロ率100%でハモってしまって、驚き喜びワンダフルだった。

うん、つまり、そんな意味不明ワードを思い浮かべてしまうほどに、

滅茶苦茶嬉しい、ってこと!


右手で、ヒメカの左手を、絡め取る。

今度は、私のほうから、恋人繋ぎ。


「ちょっと、公園まで、走っちゃう?……一秒でも早く、ヒメカとキスしたいかな、って」


ヒメカの手を引いて、レッツゴーレッツゴーハリアッハリアッ!

ってゆーむねのことを、婉曲的に提案。

いや、最後のほうは、欲望ド直球だったけれども。


「うん────わたしも、あゆちゃんと、早く、したいな、って」


もじもじと、顔を赤くして、うなずくヒメカ。

はい可愛い~! うちの嫁は、三国一可愛い嫁や……!


「じゃ、行こう!」


「うん……!」


そうして私たちふたりは、走り出した。


運動神経抜群のヒメカは、走るのも当然、速い。

以前の私だったら、足をもつれさせてスッ転んでたかも。


しかし、今の私は、〈邪神〉覚醒済み。

逆に、ヒメカより速く走らないよう、具体的には常人レベルを越えないよう、

気をつけて走らなければならなかった。


それも、運動スペックの低い、陰キャオタクの最速を想定してのことだから、

ちょっと調整が難しい。

まあ、ヒメカと並んで走れるくらいのスピードにしておけば、問題ないかな。


そんな細かい部分で、地味に悪戦苦闘しているうちに、私たちは公園に

たどり着いていた。


────歩道と、設置されている遊具とかは、細々と幾度か

リニューアルされてはいるけれど。

公園の輪郭というか、その全体像は、十年前のあの頃と、まったく変わっていない。


ヒメカと笑い合って、そこからは、ゆっくり歩いていく。

お互いに何も言っていないが、私たちふたりは、示し合わせていたように、

思い出の場所へと向かっていた。


「ここだね」


「うん」


そこは、私が、ヒメカを見つけた場所。

ふたりが出会った、大きな木の下であった。


昔はもっと大きく思えたけれど、今見ると、そうでもない。

まあ、私が成長した、というだけの話なのだろうが。


「あゆちゃん、見て、木の根元」


ヒメカが、恋人繋ぎしてないほうの手、右手で、くだんの木の根元を指差す。


そこには、クローバーが群生していた。

まさか、私たちがあの時に埋めたから、というわけではないだろうが、

感慨深くなる光景である。


私は、握っている手に軽く力をこめて、ヒメカにうなずいてみせた。


「うん……不思議だよね。こんなにいっぱい────」


「知ってたの?」


「そりゃ、ヒメカと一緒の、“ラッキー”の記念だし。いつもチェックしてた」


照れ笑いを浮かべながら、私はふたりの思い出を口にした。

……ヤバい、顔がめっちゃ熱いんですけど。


私の言葉に、ヒメカは頬を染めて、嬉しそうに微笑んでくれた。


「────じゃあ、あゆちゃん。わたし、クローバーの花言葉、確かめたいな………」


そう言いながら、ヒメカは、さりげなく、髪をかき上げる仕草で、右手を振る。


………!


その時、〈邪神〉としての、私の感覚が、察知してしまった。

ヒメカは今、魔法を使った─────────!


おそらく、〈隠蔽いんぺい〉と〈遮断しゃだん〉の魔法……〈人()け〉の、結界魔法だ。

私たちふたりの姿は、結界に隠され、周囲の人間には、感知できないようになったはず。


「でも、その、まわりに他のひと、いるよ……?」


私は、ヒメカの魔法に気づいたことを悟られないよう、そらっとぼけてみせる。

そんな演技をしつつも、本心ではヒメカとキスしたくて、ウズウズの、

ドキドキなんだけれども。


大興奮の私の胸中では、同時に、十年前の公園でのことにも、納得がいっていた。

おばあちゃんがヒメカの姿を目にしなかったのも、遊ぶ時に公園の人気(ひとけ)がなかったのも、ヒメカの魔法によるものだったのだろう。


「───わたしは、見られてもいいよ?」


ヒメカは私の正面に向き直って、私を見つめてきた。

その声音こわねは、結界魔法がなくても、同じことを言っていそうな、

本気の響きに満ちている。


これに応えなきゃ、おとこがすたるな。

いや、当方、女子ですけど!


「……じゃ、じゃあ、ヒメカ─────」


小さく咳払いなどし、私は背負っていた鞄を、思い出の木の下に降ろす。

すると、ヒメカも察したのか、自分の鞄を、私の鞄のそばに降ろした。


私は、おずおずと、ヒメカの両手を取り、その手の平を合わせる。

ひとつ、深呼吸。


それから、ヒメカの目を見つめて、ただただ、思ったこと、想い続けていたこと、

願っていることを、素直に口にした。


「────十年経ったけど、私はヒメカのこと、今も、大好きです。

………あの時と気持ちが変わってないなら、どうか私と、結婚してください」


「………変わらないよ。変わるわけ、ない」


頬を染めたヒメカが、そう言って、微笑む。


「わたしも、あゆちゃんが、大好きです────あの時と、

気持ちが変わってないから、わたしを、あゆちゃんのお嫁さんにしてください」


そして、ヒメカは、目を閉じながら、顔を近づけてきた。

ちょっと背伸びして、私も、目を閉じる。


唇を重ねたのは、どちらが先だったか。


────────────まあ、そういうのは、どうでもよく。

息するのも忘れて、ヒメカの感触を、心に刻み込む私。


永遠に続いてほしい、と思うこの口づけは、ヒメカがゆっくりと唇を放すことで、

終わってしまった。


「あゆちゃん……? 泣いてるの……?」


「へ───」


ヒメカの言葉に、私は、間の抜けた声を出してしまう。


それからようやく、自分の頬を伝っている涙に気づいた。

自分でも知らないうちに、泣いてしまっていたようである。


「あ、は、な、なんだろね。嬉しすぎて、幸せすぎて、なんか、泣いちゃったみたい」


涙をぬぐいながら、照れ隠しで、笑ってみせた。


「だってほら、ほんの短い間しか会ってなくて、子供の時の〈約束〉で……

私だけが、ひとりよがりで、勝手に好きなだけだったら、ヒメカには、

迷惑なんじゃないか、って不安に思ってたとこもあったし。私は私で、

チビの、パッとしない、陰キャ女子だしで────」


そこまで言ったところで、ヒメカに抱きしめられた。


「────あ、あ、ヒ、ヒメカ……?」


「……わたしの大好きなひとのことを、そんな風に言わないで」


静かに、そう言われた。

それでまた、ウルッと泣いてしまう。


「あゆちゃんは知らなかっただろうけど、〈約束〉をしたあの日───わたしは

あゆちゃんに、救われたんだよ」


─────救われた? ヒメカが? 私に?


「わ、私、なにもしてないよ?」


怒濤どとうの勢いで結婚を迫ったり、チューはしたけども。

私がヒメカにしてあげた、救ってあげたなんてことは、記憶にない。


「……わたしを、大好きだ、って。大切な女の子だ、って。そう言って、抱きしめてくれた」


「それは、だって、本当にそう思ってたから────」


「うん……それが、嬉しかった。わたしの人生で、初めてのことだったから」


そう言って、ヒメカは目を閉じて、自分のおでこを、私の頭にそっと当ててきた。


「わたしと一緒にいると幸せな気持ちになる、って、あゆちゃんは

言ってくれたよね。それは、わたしも。誰かと一緒にて、幸せな気持ちに

なったのは、あゆちゃんが、初めてだったんだよ」


「ヒメカ………」


────私たちは、また、キスをした。


今度は、最初よりも長く、情熱的に。

互いに体を抱きしめて、心ごと全部、求めるように。


「………会えなかった十年間ぶん、幸せにしてね、あゆちゃん」


唇を離したあと、ほう───と、わずかに息をついて、ヒメカはそう微笑んだ。


バッカおめえ、そりゃこっちの台詞だっつーの!

反射的にそう思ったけれど、違う、そうじゃない。


ムード重視、あくまでもロマンティック方向で……!


「十年どころか、これからずっと幸せにするから──────ずっと一緒にいて、ヒメカ」


あああああああああああああああああ! “ずっと”がカブった……!

でも陰キャ女子的にとっさに言えたのは、これが精一杯───────!


だけどヒメカは、冴えない私の言葉に、頬を染めて、また微笑んでくれた。


「うん……ずっと、一緒にいるよ。わたしは、あゆちゃんのお嫁さんなんだから」


──────────────はぁ~……もうすでに、その一言で、幸せ。


〈邪神〉クトゥルフ本体が、なにを目論んで〈分霊体()〉を人間に

転生させたか、いまだにまったく思い出せないけれど。

まず、覚醒した手始め、私の人生の行動指針は、明確にまった。


ヒメカが生きてる限り、この地球と人類は、滅ぼすまい。

そう堅く、心の中で誓っちゃう私だった。


………………まあ、今は、そんなことより。


「ごめん、ヒメカ。もう一回、キスしたい」


欲望ドストレートに、ワンモアプリーズ、さらにおかわりを所望しちゃう私である。


「もう、あゆちゃん───────わたしも、したかったから、いいけど……」


ほんのり不満テイストが浮かんでいたけれど、頬を紅く染めながら、了承してくれるヒメカ。


………そのあと、一回じゃ済まず、何度もキスしてしまったり。

時間が許すかぎり、その場で思う存分イチャイチャした私たちであった───────。

評価ポイント、本当にありがとうございます♪もっとイチャ♡イチャ♡させますのでよろしくお願いします☆(*´Д`*)


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