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邪神転生ガール  作者: megajoy
8/32

転8 〈邪神〉だけど、自身の変化に気づく。

……おや!? あゆらの ようすが……!

公園をあとにして、名残を惜しみつつ、ヒメカとは駅で別れた。


いやホント、ものっ……スゴっく、名残を惜しんだよ?

こんなに名残惜しんだの、ヒメカと〈約束〉した日以来だよ?


なんだったら、私の家にヒメカを夕飯に誘って、もっと深い仲(意味深)に

なりたかったくらいなんだから。


───ヒメカは、明日からの土・日、家の用事で、私とは会えないとのこと。

それがまた、本日のお別れを、いっそう名残惜しませた理由であった。


また月曜には会えるからいいじゃん、とか、そういう問題じゃないんである。

も~う、一分一秒でも、ヒメカと離れたくない気持ちになってるのに……!


現実は非情だ。


その代わり、来週の土・日は丸々二日、一緒にいようね、と、

ヒメカは言ってくれた。


えっ、“土・日は丸々二日、一緒に”、ってどういうこと!?

そういうこと!?

……なんてね、オッケー落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない─────。


もし、仮にそういうことだとしても、口に出しちゃダメ。

ムードは大事、あゆら、覚えた。


ムード、ムード、恋人とのムード………。

ヒメカとキスしたことを思い出すだけで、頬が緩む。


ニマニマしちゃうね。

するでしょ? ヤダ! 私ったら、ひとりでバカップルみたい!

ふひっ!


などと気持ち悪いことを、ひとしきり考えてしまう私だ。


───それらと並行して、真面目なことも、考える。


ヒメカが魔法を使ったことと、ヒメカの“家の用事”。

そのへんのことに目を瞑って、これから、一緒に過ごしていくわけには

いかないだろう。


だって私、ヒメカと、結婚するんだし?


超常的な秘密だろうがなんだろうが、そういうのはナシの方向にしたい。

……でもそれだと、私が〈邪神〉の転生体だ、ってことも、ヒメカにちゃんと

話さなきゃいけなくなるんだよね─────。


そう考えると、胸の奥で、もやりとした不安が生まれてしまう。


ヒメカから、私の正体のことで拒絶されたら、どうしよう…………?

そんなの、想像しただけで、泣けてきちゃうんだけど。


……まあ、実際そうなったら、腹いせに人類滅ぼしちゃうか。


〈ヒメカが生きてる限り、この地球と人類は、滅ぼすまい〉

ついさっき、そんな行動指針をめちゃった私だったけれど、

それはそれ、これはこれだよねー。


私の正体のことを、ヒメカに告げるのは、状況を見ながら、折を見て、

ということにしておこう。

まだしばらくは、イチャイチャしたい、超したい。


それはそれとして、ヒメカが魔法を使えることについて。


ヒメカが、〈魔女の都〉、チェコのプラハに長く生活していたことを

考えると、導き出される答はひとつ………。

〈魔女〉、なんだろうな、ヒメカは。


〈魔女〉────人の形をしながら、人間ではない、魔法に根ざした種族。

ファンタジーRPG的概念で言えば、〈エルフ〉みたいな感じか。


そっかあ……“座敷童ざしきわらし”じゃなかったかあ───────。

幼き日の、明後日な推理を思い出して、苦笑してしまう私だ。


なんにせよ、関係ないね!

私の中で、ヒメカが天使様で、私のお嫁さんなのは、不変の真実なんだから!

イェイ!


真面目に考えたり、浮かれたハイテンションだったりの、

マルチタスクな精神状態。

そんな調子で、いつの間にやら、我が家に帰宅していた。


「ただいまー」


ルンルン気分でリビングに向かうと、そのソファには、お煎餅なぞかじりながら

くつろぐ、少女の姿があった。


黒髪ツインテで、私より若干背が高く、胸とお尻も、私よりひと回り大きい。

目のクリッとした、アイドル顔。


正直言って、私より、素で可愛い……!(ちょっと嫉妬)


このが私の大事な妹、まゆちゃんこと、うしおまゆらであった。


「おかえり、お姉ちゃん、ん……んーっ!?」


私の姿を認めたまゆちゃんが、ソファから立ち上がるや、

ヒュバァッ!と、私に詰め寄ってきた。


「え、ど、どうしたの、まゆちゃん」


「お姉ちゃん───エステかなんか、行ってきた?」


「へ……」


なにやら、既視感のある質問であった。

私は鞄をそこらに降ろしながら、まゆちゃんの質問に、軽く首を

横に振ってみせる。


「いや、行ってないけど……」


「ウソ。本当? なんか肌ツヤとか、髪とか、朝と違う気がするし……

良い匂いもするような──────」


まゆちゃんは、私の顔をまじまじと見つめながら、スンスンと鼻を

利かせてくる。


……やっべ、ヒメカの香りが、私の体に移っちゃってるかも?

いや、別段、なにもヤバいことなんてないんだけど。


「うーん。やっぱり───お姉ちゃん、いつも美人だけど、今は普段の

五割り増しくらい、美人になってる気がする」


いつも美人て……。(苦笑)


まゆちゃんは、なにかにつけ、私を姉として立ててくれる、良いである。

それにしても今日は、褒めの圧が強い。


ひょっとして、アレだろうか。

ヒメカとキスしたことにより、女性ホルモンがドクドクと分泌されて、

私のお肌が、ツヤツヤになってるとか?


「お姉ちゃん、なんかあった? あっ!? ま、まさか、男に告白されたとか!?」


「い、いや、そんなことないよ。ありえない」


嘘は言ってないですしおすし。

美少女であるヒメカには、『大好き』って言われたけど。


私の返答に、まゆちゃんは、胸を撫で下ろす。


「そっかー、良かった~……。お姉ちゃんに変な虫がついたら、

ノー・タイムで殺しちゃうところだったよ。その虫を」


いや、言い方! 怖いよ! マイシスター!?


「も、もー、まゆちゃんったら、怖い冗談やめて?」


「冗談じゃないよ……? お姉ちゃんには、まゆがついてるからね。

妙な男とかは、近寄らせないんだから」


そう笑って、まゆちゃんは、私に抱きついてきた。

ははは、まったくまゆちゃんは、いつまで経っても、姉離れができないんだなあ。


まゆちゃんは、私の二歳下の、中学二年生。

陰キャのオタク女子である私とは違い、活発な性格をしていて、運動好きだ。


学校では、卓球部に所属しており、交友関係も広いっぽい。

けれど、学校休みの日の半分くらい、私と一緒にいるような……?


それが、ぼっち属性の引きこもり気味な姉に気を遣って、

遊びに出て歩かないのだとしたら、大変心苦しい。

でも、こうして私を慕ってくれるのは、素直に嬉しいので、

ついつい甘えてしまう私だ。


もう私には結婚相手ヒメカがいるけれど、まゆちゃんはこの先変わらず、

大切な妹なのだし。

しみじみとそう思い、まゆちゃんを抱きしめ返しながら、

私はポツリと口を開いた。


「まゆちゃん、また背がのびた? これ以上、お姉ちゃんを追い越さないでね……?」


「ごめんね、お姉ちゃん。体の成長だけは、まゆの意志じゃ止められない

から───。もしお姉ちゃんの気に障るんだったら、背骨を

二・三個引っこ抜くから、いつでも言ってね」


またもう、このは! 冗談が時々怖いんだよね~。

私が苦笑していると、まゆちゃんは、私の耳元で囁いてくる。


「─────でもお姉ちゃん、おっぱいは、大きいほうが好きでしょ?

お風呂で洗いっこする時、嬉しそうに揉んでくるし」


「………はい。大好きです。ごめんなさい」


素直に白状&謝罪。

合法的に、妹のおっぱいを揉み、ほとばしる熱いパトスにて、思い出を

裏切っているのは、私です。


正直スマンかった。


「いいんだよー……? まゆは、お姉ちゃんのこと、大好きだから。

いっぱいおっぱい揉んでいいから、まゆの背が高くなりすぎても、まゆのこと、

嫌いにならないでね?」


「嫌いになんかならないよ。ありがと。私もまゆちゃんのこと、大好きだよー」


本当に、かわいいことを言ってくれる妹さんだなあ、まゆちゃんは。

嬉しくなった私は、まゆちゃんを抱きしめながら、よしよし、と、

その頭を撫でてあげるのだった。


えへへー、と、まゆちゃんは照れたように笑って、喜んでくれたモヨウ。

しかし、その喜びモードの雰囲気が、突然、スン───と消失したような

気がした。


「……ねえ、お姉ちゃん。帰ってくる時、誰かと一緒にいた?」


まゆちゃんが、不意に、そんな質問をしてくる。


「え。あ、うん、友達と一緒に帰ってきたけど……」


抑揚がないというか、感情が消えたような、まゆちゃんの声音に、

ちょっと戸惑いつつ、そう応えた。

ふうん───と、まゆちゃんは短く言って、私から体を離す。


「やっぱりお姉ちゃんから、お姉ちゃんのいつもの良い匂いとは違う、

別の匂いがするんだよね。この匂いは、そのお友達の匂いなのかなあ……?

ひょっとしてそのひと、まゆみたいに、お姉ちゃんに抱きついたりした────?」


あれれ? そういてくるまゆちゃんの目から、感情ハイライト

消えてるような……?


「そ、そうだね、ふざけ合って、体を密着させたり、した、かな?」


さすがに、抱きしめ合ってキスしまくった、とは言えないから、

そんなお茶を濁す言い方をする。


「そのひと、まゆの知ってるひと? ゲーム仲間の、知代ともよさんじゃ

ないよね?」


「えっと、そうだね、まゆちゃんは、会ったことないね。今年、初めてクラスが

一緒になった子だから」


「そう……そのうち、紹介してね? どんなひとか、まゆがちゃんと

確かめておかないと」


んん? ちゃんと確かめる? なにを?


「う、うん、うちに遊びに来ることもあると思うから、その時にね」


「ふふ。どんなひとだろう。たのしみだなあ──────」


まゆちゃんは、そう笑ったあと、リビングを出ていく。

それから、二階の、自分の部屋へ向かったようだった。


……? なんか、今のまゆちゃんの声、うわのそらの言い方というか、

棒読みっぽく聞こえたな。

気のせいかしら。


まゆちゃんとの会話が終わり、気づくと、何故だか無性に喉に渇きを覚えた。

牛乳でも飲んで喉を潤そうかと、とりあえずキッチンに向う。


そこには、絶賛調理中の、女性の姿があった。


春っぽい、うっすら桜色の上着に、動きやすそうなズボンスタイル。

髪は肩口くらいまでの長さで、後ろで束ねている。


その後ろ姿は、服の上からでも女性特有の丸みがわかる、輪郭のメリハリが

浮き出ていた。

言葉を選ばずに言うと、エロい。


エロいナイス・ボディの持ち主が、こちらを振り返ってきた。


JKとJC、二児の母親とは思えぬ若々しさを持つ、美人。

これが我が母、うしおなゆらであった。


………おかしいよなあ~、この美人遺伝子、私になくない?

お母さんのDNA全部、まゆちゃんに受け継がれちゃったんじゃないかと、

疑いたくなるんですけども。


してみると、私には、お父さんの遺伝子が多く受け継がれてることになるのか。

お父さん、あんまり背、高くないしな……ガッデム。


私がひとり遺伝子の摂理に憤っていると、お母さんは私の顔を、

じっと見つめてきた。


「おかえりなさい……あゆ、あなた、美容室にでも行ってきたの?」


「えっ」


──────またまた、似たような質問であった。


ヒメカから数えて三度目。

こうなると、ニブい私でも、我が身に何事か変化が起こったに違いない、

と結論を得る。


……まあ、十中八九、〈邪神〉覚醒したことに起因する何かだろうけど。


私は、そらっとぼけて、お母さんに答えるしかないのだった。


「いや、別に、どこも行ってないけど?」


「うーん? そう? 私の娘、こんなに美人だったかしら、って思っちゃった。

なんか、髪とかお肌とか、きらきらして見えたのよ」


「……やだなもー、お母さんの娘だもん、いついかなる時も、

美人に決まってるじゃん」


「それもそうよね」


あっはっは、と互いに漫才のごとく笑い合ったあと、今夜の夕食のことなど

たずねて、キッチンをあとにする。

そそそ、と、洗面所に向かい、鏡で自分の姿をチェック。






………………………………………………………誰です!?!?!?!?!?!?






え!? え!? え!? え!? え!?

こんな美少女だっけ、私!?!?!?

い、いや、別にナルシスト入ってるわけじゃなく、本当に驚きなんである。


鏡に映っているのが自分の顔だ、っていう認識はできるし、

記憶に間違いはない。

けれど、自分の顔とは思えない、矛盾した気持ち。


自画自賛の、自意識過剰バカ女じみた思いだけど────うん、

この顔は、自信を持って、可愛い、と言えると思う。

それくらい、いつも鏡で見ている我が顔とは、歴然と違って見えた。


適当にのばしッパにしている黒髪も、毎日手入れが行き届いているような、

艶光りをしている。

枝毛とか、まるでなさそうだった。


まゆちゃんやお母さんに指摘されたように、顔肌の艶、血行とかも、

普段より良さそうに見える。

この容姿なら、ヒメカの隣にいても、文句は言われないんじゃなかろうか。


しかし、『恋は女を変える』っていうのは、よく聞くフレーズだけれど。

いくら私が、ヒメカ好き好き大好き☆ゾッコンLOVEだからって、

限度があるだろう。


この劇的ビフォア・アフターは、100(パー)、〈邪神〉覚醒したせいだ。

一刻も早く、自分の体に何が起こっているのか、解答を得なければ。


そのため手段は、〈邪神〉としての知識により、もうわかっている。


………くっそう、ちぐはぐだなあ──────。

どうせなら、この変化もなにもかも、〈邪神〉覚醒した時点で、

一から十まで、完璧に把握できるようになってればいいのに。


〈邪神〉クトゥルフ本体は、いったい、なにを考えているのやら。


なんにしても、今、この場で悩んでも仕方ない。

確実に、今夜、答は得られるのだから。


私は、焦れた気持ちになりながらもそう思い、

夜になるのを待つのだった──────────。

「アヒルの子だと思ってたら、鳳凰になってた件について……!」

秋せ●らほどじゃないけど、あゆらちゃんは、実は絶世の美少女だったのです……!

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