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ヴォルダーノ【本編】  作者: 謎人
エピソード 0

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  4話 悪魔の視線

「盾を身体ごと構えるんじゃ!そこ、もっと詰めろ!隙間を開けるな!」


 副将軍の怒号が響く。

 この防衛線を破られれば、魔族が後方の木柵を越え陣中に雪崩込むだろう。


 しかし、圧されてばかりではなかった。


 荒野の先には、白馬の単騎駆。

 

「おらぁ!(通用する、魔物達に!やれる!)」


 白と赤の魔法気を纏うヒデッカータが、踊るように、舞うように、邪なもの達をなぎ倒す!


 元来の鍛え上げた体幹との相乗効果で、多少の接触程度では姿勢が崩れない。


「おおお!!!」


 兵士達が歓声を上げて鼓舞する。

 たった1人の、非魔法使いの男が一変させた戦況を、老獪な副将軍を含めて誰も見たことがなかった。


「ヒデッカータ将軍!やはり真の勇者正統後継者じゃ!」


 武器は持っていない。素手で、素手に纏った魔法気で、魔物達をまるで蒸発させている。


「気が早って上裸で来ちまったが!動きやすくていいゼ!!」


 疲れを見せる様子もない。


 これが魔法遺具に込められた、かつての勇者が到達した“ゾーン”の残滓——




 ひとしきり暴れまわると、空から地上に降り立つ禍々しい邪気。

 恐らく、人々が悪魔と形容する類のものだ。


 周りの魔物とは、明らかに違う様相に、兵士達も固唾を呑み静まり返る。

 彼らは何度となく、魔物の猛威に戦況をひっくり返されては、すんでのところで防衛してきた経験ばかりだった。


「よぉ……いつぞやの奴か?それとも別の奴か?」


 魔物の顔は、はっきりとしない。

 人をなんとなく象ったような、気体のような固体のような、形容しがたいものだ。


「言葉はわからないか、だったら……拳で聞く」


 馬で突進し、右拳の一撃!


 ガッ!と顔面?に当たる!

 が、受け流される。


 そのまま駆け抜ける馬をなだめ、それに正対し直すヒデッカータ。


「硬いな」


 全く効いていないわけでは無さそうだが、長期戦となると分が悪い。


(それに……なんだ?……憎しみ?悲しみ?……人の負の感情が伝わってきたような……)


 悪魔はヒデッカータの左腕を、吸い込まれるような黒い窪みで見つめている。


「勘……?が鋭いな、これが欲しいのか?」


 無言で佇んでいるそれは向きを変え、肉壁を作る兵士達の、さらに奥を眺めている様子。


「こちらに来るぞ!正念場じゃ!」


 副将軍は、まだ複数残る魔物達を盾で押さえる兵士に檄を飛ばす。


 次の瞬間、ブァッ!と土煙が舞い悪魔が天へ浮遊する。

 そして、人間が築いた防壁を嘲笑うように、視線の先へ向かって飛び立って行く。


「ちぃっ!待てっ!!(他の奴らは目の前の兵士とじゃれ合うようだったが!……知能?目的は何だ?どこに行くっ!)」


 ヒヒィィン!馬で猛追するヒデッカータ。


「1列開けろ!早う!!」

 副将軍の指示に道を開ける盾兵士達。

 疾風が通り過ぎると再び固く道を防いだ。


 大半の人員が撤退を済ませた静まり返る陣中に、蹄の音が鳴り渡る——

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