表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴォルダーノ【本編】  作者: 謎人
エピソード 0

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

  3話 魔力臨界

 タッタッタッ——


「バスティ、どこ?バスティーッ!!」 


 撤退する魔法砲撃隊員達と逆走し、迎撃に向かう兵士達を避け、混乱する陣中を駆け回るルイーナが、相棒を探している。


 バサッ!カサッ!ファサッ!

 どのテントにも見当たらない。


 ヒヒィィン!カッ、パカッ、カッ——

 一頭の馬が風を切って横切る。乗っている人物の左腕には銅の腕輪。


「将軍っ!?(すごい……魔力の気配が鎧みたいに全身を包んで……あれが魔法遺具のホントの効果なの……?)」


 試験課題として内部魔力の調整をするにあたり、学長ヨハナから聞きかじってはいたものの、実際に目の当たりにするのは初めてだ。


 行き交う兵士に肩を押され、ハッと我に返り捜索続行に駆け出すと、やや大きめなテントが見えた。


 副将軍が鎧を着せろと言っていたのを思い出し、そこが屯所と目星を付けた。




「失礼しますっ!バスティッ!」


 ブァサッ!と幕を腕で押し開く。


 奥には、地面に敷かれた布に横たわる、3つの人影が毛布に包まっている。


「嘘でしょ?もうやられてるっ!?」


 確認の為に恐る恐る近づき、顔を覗き込む。


 ……違った。全員が女性だ。


「し、失礼しましたぁ」


 小声で謝罪し、外へ出ようと幕に掛ける手が止まる。

 ルイーナは机の医療道具を見て違和感を覚え、思考を整理している。


(ここは救援幕?みんなキレイな顔……)


 戦場にいる女性ならば、それは魔法使いの可能性が高い。

 言いようのない不安に、3人の元へ戻る。


「あ、あの……またまた失礼しますっ」


 声をかけても反応が無く、1人の毛布を捲ってみると魔法衣の破れなども見られない。


 だが、顔面は蒼白、汗はびっしょり、呼吸は浅い。


(これって病気?もしかして……!)


 身体に触れてみると、内に魔力の素が微かに残っているだけ。

 ゾッと背筋が凍り、肩を揺り動かし声を掛ける。


「先輩!私マシルスのルイーナって言います、先輩っ!」


 出身施設の懐かしい名に反応するように、意識を取り戻す先輩魔法使い達。


「しっかり!今、回復薬を……」


 慌てて麻の肩掛け鞄を探る。


 魔法を使えないとはいえ、魔法使いの必需品として、まずは形から入っている。


 ハンカチ、ティッシュ、手鏡、櫛。


(無い……バスティに預けた荷物の中だ!馬車に置いてきちゃった……)


 ルイーナは推測を巡らせる。


(将軍達が魔族を食い止める間に、大混乱を抜けて馬車の薬を取って、ここに戻る……そんなこと、できるの?)


 何が起こるか未知の状況に、即断できない。


 バスティの行方と同じく、苦しい境遇で魔法使いとなった彼女達を放っていられない。


 どちらを選択するべきなのか。


(あぁ……こんな時に治癒魔法が使えたら……どうしようどうしよう、考えろ、私!)


 この場に居合わせたのが未熟な自分であることに、歯痒さと申し訳なさが交互に襲ってくる。


(そもそも……本当に、この二択しかないの?)




 自身の思考を疑った、その時——


 先輩の肩から伝わる微かな魔力の素と、今朝から半日かけて作業してきた指先に残る感覚に、活路とも賭けとも取れる可能性を見出す。




「手を……繋いでくださいっ」


 そう伝えると、横たわる2人の手を握り合わせる。


 ルイーナはそれを両手でそっと包み、目を閉じて集中する。


(この魔力の流れ……ここと……ここを……)


 確信めいた予感に開く瞳には微かな希望の光。


「ぅぅ……っ」「ん……」


 先輩達の顔に血色が戻る。


「ッ……ハァ……キレイな色、ですね……先輩」


 彼女達の両手は、薄ピンク色の魔力に包まれている。

 まるでお互いを思いやるような、柔らかで温かな、力強い生命の色。


 互いの手を媒体に、魔力を巡回させている。

 魔法遺具の調整を応用、そして成功させた——




「ありが……とう……ルイーナちゃん」


「そう……あなたが……魔法が出せない子の噂は、マシルスにいる時から聞いてたよ……」


「うん……あなたは、ダメな子なんかじゃない……ヨハナ先生に……抱かれてるみたいだった……」


 大好きな恩師に比喩される言葉に、はにかみながら照れ隠しの言葉で応える。


「それだけ話せれば大丈夫そうですね!……撤退の指示が出ています。お城まで手を離さないで。戻ったら魔力回復薬を飲んでください!」


 2人は、残る先輩の状態を気にかけながら、撤退と上官への報告の為に、支え合いながらテント

から出ていった。


 ルイーナは1人の先輩の前に座ると、覚悟を決める。

 彼女の回復薬も空っぽだ。


「先輩……お付き合いくださいっ!」


 しっかりと指を絡ませ、掌を合わせ集中する。

 手首から指先にかけて、何かを決意したような、真っ赤な魔力に包まれる。


「ぅっ、う……」


 先輩とルイーナの魔力循環で、意識が戻る。


「大丈夫ですか?立てますか?」


「えぇ……ありがとう……ルイーナちゃん……」


 先ほどのやりとりが、おぼろげながら聞こえていたようだ。

 礼を言いながら、支え合いゆっくりと立ち上がる。


「ハァ……フゥ……先輩、手を離さないで……一緒に、行きましょう……」


 そう言うと、テントの幕へ歩を進める。


 外は土煙が立ち登る、撤退戦が始まっている——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ