↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/32

 1話 法律


「えーーーっ! 私達もっ?」


 ガランとした関所に、ルイーナの声が響く。


「これは、僕も聞いてなかった……」


 バスティは事前に、この国は国民全員が左利き、といった法律の存在を把握していた。

 

「まさか、訪問者にも適用されるだなんて〜」


 国を跨ぐ人の往来が多くはない情勢で、知見が不完全なのは、よくあることだった。


「右利きの者は追放って……まぁ、早く試験課題を終わらせて、ササッと通過しましょ」


 法律に従う承諾書に左手でたどたどしく記名すると、窓口の役人に提出し、ウルテンジーア王国に足を踏み入れた——






「わぁ! いろんな壁に絵が描いてある〜」


 街並みのそこかしこに、作品と言って差し支えないほどの落書きが、朝日とともに出迎えた。


「同じ顔の彫刻もたくさん建ってる!」


 造形のほとんどは、カーリーヘアの小柄な男性が、左手の握り拳を頭上に挙げており、躍動感がある。


 広場では、一組の男女がペアで踊っている。


 群がる観衆の輪に混ざり、艶めかしいステップを見物していると、酔っぱらいのオヤジが、あの頃は良かった、とぼやいている。


「……っ! そろそろ、行こうか……」


 バスティは小声で促すと、相棒の腕を引いた。


「思わず見入っちゃったわ〜、ありがと」


 そう言いながらも、物珍しそうに辺りをキョロキョロ、脇道に入ろうとするルイーナを引き止めている。


(まただ! あっちからも、こっちからも……)


 バスティは、路地の陰をしきりに気にしつつも、視線を向けずに平静を装い、ルイーナを城へ誘導していった。






 通されたのは、城の来賓室。


 背負っていた大きな荷物を隅に降ろすと、バスティは額を拭った。


「ふぅ~〜〜。やっと着いた……」


「あなたが緊張しなくてもいいのに〜っ」


 冷や汗の理由を知らないルイーナは呑気に笑い、後ろ髪をひとつに束ね、制服のネクタイを締め直している。


 ほどなくして扉が開かれると、1人の男が出迎えた。


「ようこそお越しくださいました。守護騎士団長、バルマーロと申します」


 そう名乗ると、颯爽と左手を差し出し、握手を求めた。


「ルイーナと申します。こちらは同行者のバスティ。よろしくお願いいたします」


 2人はぎこちなく握手に応じる。


「バルマーロ様が、魔法遺具の後継者様、でいらっしゃいますか?」


「いいえ……正確には、候補の筆頭、です。ルイーナ殿の調整が済み、効果が顕現すれば。正当な後継者として認められる運びです」


「そうなのですね。街の彫刻はバルマーロ様を讃えるものだと、早合点しておりました」


「ハハッ! 残念ながら、似ているだけですよ。彫刻のモデルは我が国の勇者、と言われた者です」


 にこやかに初対面の挨拶を済ませ、作業に取りかかる段取りを確認すると、バルマーロは退室していった。


(元々、社交的とは思ってたけど……堂々とした会話。これもマシルスの教え、なのかな?)


 隣で聞いていたバスティは、感心しながら、ルイーナを見「——ブァ〜ッ! 緊張したぁ——」


 ようやく息が吸えた。そんな見習い魔法使いが、そこにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。