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【アンソロジスタ・アソート】魔法の卒業試験で国宝の内部魔力を調整して各地を巡る話  作者: うぶいずむ
みちしるべ 2

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11/32

⚪️


「ふんふんふ〜ん♫」


 いつになく上機嫌なルイーナの鼻歌が、殺風景な馬車の中を華やかな雰囲気に染める。


 ボロボロに読み込まれた教本を破らないようにそっと捲り、おさらいをしている。


 表紙には微かに読み取れる、1の文字。

 魔法の基本中の基本、その真ん中あたり。

『まほうのつかいかた』のページを開いている。




 晴天の昼下がり。


 バスティは外を流れる景色を、窓を開けずに眺めている。


 風に当たればさぞ気持ちが良さそうではあるが、目の前の少女にとってそれがどれほど大切な物か、この少年は知っている。


 魔力出力ができずとも、後輩達個々の理解力に合わせて翻訳しながら、手助けしていることも。




「よし! 今度こそできる、気がするわ!」


 教本を閉じ荷物箱にしまうと、代わりに練習用の短い杖を取り出した。


「今日はどの魔法?」


 毎日1回は聞いている言葉に、努力が報われてほしいと期待を寄せる。


「そうね、気分的には……風魔法ね」


 ルイーナはこれから差し掛かる、1本の生い茂る木を指さし、続ける。


「あの葉っぱを落とすわ、全部!」


 そう言うと目を閉じ、杖を前に集中を始める。


(おぉ……これはあるかも)


 バスティは空気が変わるのを肌で感じた。


 詠唱の文言は覚えたと常々豪語しており、構えも魔法使いの雰囲気を醸し出している。




 目標の木が近づく。

 目を開け杖を向けるルイーナ。

「風よ! 木の葉を……ぅっ……」

 一瞬言い淀み、顔をしかめる。


「切り落とせっ!」


 いつになく気迫のこもった声に、バスティは目を見張る。


 ビュッ——


 突風に馬車が揺れ、木の葉が落ちる。


 その数……1枚。




「やった!?」


 隣のルイーナに視線を移し、成否を確認する。

 男性には魔力が宿らないとされており、バスティは本人に直接聞くしかない。


「……ダメね、また詠唱が途切れちゃった……」


 こめかみあたりを押さえ、いつもの頭痛に襲われた結果を告げる。


(あと、ちょっとなのに……)


 過ぎ去る木を名残惜しそうに見送り、ため息をついた。




「そっかぁ~、まぁ少し休もう」


「ぅん……」


 バスティに促されるまま着席すると、すぐさま切り替えるルイーナ。


「よしっ! あとで水魔法だ、それならできるかも!……たぶん!」




 夢を乗せた馬車は、未来へ進んでいく——



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