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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第二幕 貴子と辰之助 第一章 日記帳
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第一話

 あたしは野村貴子。高校二年のギャル。金髪ギャルメイクの正真正銘のギャル。性格は昔から男みたいだと言われるくらい。まあ、男がメイクしてスカート履いているってイメージをしてくれたら、まあ多分おおよそあたってる。


 明日から二学期が始まる。二学期には絶対やらなければいけないことがある。本当は昨年やらなければいけなかったんだけど、当日想い人を見失ってできなかったイベントだ。今年は絶対にやってみせる。


 うちの高校にはポプラ伝説というものがある。文化祭の後夜祭でポプラ並木の前で女子から告白すると恋が実るっていう伝説だ。想い人がいる女子にとっては絶対外せないイベントなのだ。

あたしの想い人は隣のクラスの橋本辰之助君。なんてたって、ちょっと悪そうなのもいいんだけど、あたしの初恋の人なんだ。

あたしは後夜祭に向けて裏工作を一学期の間からやってきた。隣のクラスの担任の南先生と仲良くなるということ。南先生はあたしの姉ちゃんの同級生だから姉ちゃんをだしにして親密な関係を築いていった。


今年こそ絶対にやってやる!


 中学三年の正月、それは私にとっては忘れようもない日となった。姉ちゃんの同級生が母校の教師に就任することになったため、うちの店は休日返上の食事会で貸し切りとなった。教師となったのは南美和さん。残念ながら旧姓は知らない。その場には高校の姉ちゃんの同級生の橋本さゆりさんの姿もあった。橋本さんは旦那さんと旦那さんの弟さんと一緒にこの食事会に参加することになった。橋本さんが正月挨拶のため実家を訪れていたため、姉ちゃんがサプライズで呼んだそうだ。橋本さゆりさんの旦那さんの弟さんが私と同い年であったため私は彼と同席することになった。彼の名前は橋本辰之助君。私は出逢った瞬間、恋に落ちてしまった。いわゆるひと目惚れである。


「こ、こ、こんにちは。野村貴子です」


「あ、オレは辰之助。よろしくね。こんななりしてるけど、怖くないからね」


辰之助君っていうんだ⋯⋯。

確かにヤンチャしているっぽいけど、ああぁ、もうダメ!

好き!


「南先生がオレの志望校の先生になるっていうから兄貴に無理言って連れてきてもらったんだよ。ごめんな。こんなのが押しかけてきて」


私の家から歩いて五分くらいのところに共学の高校がある。南さんが赴任するのは、その高校。私は女子高志望なので別の高校を志望していたのだが、この瞬間、志望校が変わってしまった。


絶対にそこの高校に入学して、辰之助君との高校生活を送るんだ!


「ははは、私もそこの高校に受験する予定なんだ。よろしくね」


たった今決まった予定だけどね。


「へえぇ、そうなんだ。でも、オレこんなんだから学校ではオレに関わらないほうがいいぞ」


そんなわけにはいかないのよ!


「実は私、ネコカブっているだけだから⋯⋯」


私の言葉に辰之助君は苦笑いをした。


「無理すんなよ。どう見ても清楚なお嬢様じゃねえか」


辰之助君の言葉に私は黙って俯くしかなかった。


翌日、私は髪を金髪にしてギャルメイクをした。


その日、あたしは私を捨てた。


 そして、文化祭の二日目、勝負の日はやってきた。簡単なことだ。好きです。付き合ってくださいと言えばいいだけだ。いいだけなんだけど。昨年できなかった分、想いが募りすぎて吐きそうなくらい緊張している。とりあえずポプラ並木の前には南先生が辰之助君を連れてきてくれる。どういう口実で辰之助君を連れ出すのかはわからないけど、南先生は身重だから男気のある辰之助君なら南先生の頼みは断らないだろう。あたしはポプラ並木の前で待っていて告白するだけなんだから何も緊張する必要はないんだけど。


 あたしは緊張しすぎたので一度家に戻って休息をとる。こんな時、学校から近いのは得だなとか思いながら⋯⋯。


ん?


あたしは緊張のため寝落ちしていたらしい。


今は?


時計の針は十八時半を差している。


うぎゃ、寝過ごした!


あたしはベットから飛び起きて学校へと向かった。後夜祭は十九時まで。あたしがポプラ並木にたどり着いたのは十八時四十分。


いた!


「は、は、はし⋯⋯」


あたしが息を切らしながら辰之助君に駆け寄る。


えっ!

でも、とりあえず告白しなきゃ。


「橋本辰之助君、大好きです。付き合ってください」


辰之助君はニコリと笑った。


「オレでよければ⋯⋯」

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