第三話
今日は年明け一月三日、貴子叔母さんが派手な振袖を出してきた。
「これ貸してやるから橋本君と一緒に初詣に行っておいで」
「はあ? こんな派手な振り袖で外に出られるわけないじゃん。何考えてんの」
貴子叔母さんの言葉に私は正月から早々キレる。
「私が成人式で着た振り袖だよ。たぶん橋本君も喜ぶと思うよ」
そんなわけねえだろ!
間違いなく引かれるわ。
どこの成人式だよ。
毎年、テレビ中継されるあの成人式か!
「そんなもん着て外には出れん」
「じゃあ、この間のお年玉返せ!」
「もらったもんは返せん!」
もう何に使うか決まってる。
「わかった。これ着て橋本君と初詣行ったらこの間と同額のお年玉をやろう」
ううぅ、そうきたか。
橋本君が来なきゃいいんだ。
「仕方ないね」
私の答えに貴子叔母さんはニヤリと笑う。
「そういえば橋本君、今近くにいるはずだよ。これ着て、さっさと初詣行って来い」
「学校もないのにわざわざこっちに来るわけねえだろ!」
ピンポーン。
嫌な予感⋯⋯。
貴子叔母さんが玄関で対応している。
「橋本君来たよ。さっさと行け!」
私は玄関からは見えない物陰から確認する。
「なんで事前に連絡しない」
橋本君がキョロキョロしているので、ふたたび物陰から声を掛ける。
「女は恋人に会うのに準備が三時間必要なんだよ! 三時間後出直してこい!」
橋本君はすごすごと帰っていった。
私が自分の部屋に戻ると貴子叔母さんが着付けの準備をしていた。
「二軒隣りの高木さんって橋本君のお母さんの実家なんだよ。さっき来ているの確認したんだよ」
謀られた!
着付けも終わったので、橋本君にラインを送る。
『なぜ帰った。さっさと来い』
こんな派手な振り袖で学校の近くを歩けるか!
今日はスッピンだ。
一分も経たぬ内に橋本君はやってきた。
「遅い! さっさと来い!」
「あけましておめでとう。今年もよろしく⋯⋯」
「そういうのいいから。さっさと不動尊に行くぞ!」
こんな罰ゲームみたいなのさっさと終わらせる!
こんな地元でこんな派手な振り袖なんか着て不動尊に初詣とかウケるんですけど!
「橋本君、適当にちゃっちゃと済ませて帰ろう」
私がそう言うと、橋本君は苦笑いをする。
「こんなに混んでてちゃっちゃは少し難しい⋯⋯」
そんなことをやってると高校の後輩らしき集団が向こうからやってきた。
「橋本先輩、奥さん先輩、おめでとうございます」
ん?
橋本君は文化祭で有名人になったから橋本先輩と言われるのはわかる。
奥さん先輩って何?
しばらくすると、うちの班のモブ四人に出くわす。
「小林さん、橋本あけおめ!」
モブAがわけのわからないことを言うと、モブB、モブC、モブDも私たちに挨拶してくる。
アレ、私は今スッピンだよね。
なんで私だって認識できる?
私は立ち止まってじっくり考える。
当たり前だよね。
橋本君の隣にいる金髪女っていえば私しかいない!
でも、奥さん先輩って何?
「あ、そうだ。モブども」
私はモブ四人に声を掛ける。モブ四人は恐る恐る私を見る。
「今日のことはお前らの記憶から消去しろ! 今後のお前らの安寧な高校生活のためにもな」
私がそう言うとモブ四人は何度も首を縦に振った。




