第93話 そんなんじゃねーよ?
「あぁ、外の空気がおいしい。太陽がまぶしーぜ」
ようやくエロの魔窟から解放され、太陽の光を浴びると自分がすごく健全な世界に帰ってきたような気がする。
こころなしか学の笑顔も眩しい。
エロ本の入った端末を片手にだけど。
「さぁ、返ろうか、学」
そう声をかけると、目を細めながら近づいてきた。なんだ?
「んふふ。お兄さん」
バイクにまたがる前から腰に抱き着き、顔を擦り付けてくる。お? えらく可愛いじゃねーか。
妙に素直な学の頭をなでてやると、にへにへと笑いながらじっと俺の顔を見つめてくる。
「なんだ? ご機嫌みたいだけど、何かいいことでもあったか?」
お願いだからエロ本を手に入れたのが嬉しいとか言わないでね。
「お兄さん気付いてないの?」
「何がだ?」
俺は何かを見落としてるのだろうか?
「えへ。お兄さんね。今日ずっとわたしのこと『ワナビ』じゃなくて『学』って呼んでくれてるんだよ」
んなっ!
確かに言われてみれば……。
まったく意識してなかっただけに、いざ指摘されてみるとめっちゃ恥ずかしい。でもだからといって取ってつけたように元に戻しても余計に恥ずかしいよなぁ……。
仕方ない。きっと呼びたくなったからそう読んでるんだろうし、ここは素直になろう。
「じ、自分の彼女なんだからちゃんと名前で呼んでもおかしくないだろ……」
恥ずかしいから目は合わせないけど、明らかに嬉しそうな顔をしてるのが視界の端に映っている。
「ありがとう」
可憐な笑顔を見せる学。思わずドキッとしたのはナイショだ。
「早くこの内容を実践できるように勉強頑張るね」
一気に現実に引き戻されてしまった……。




