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第88話 恋愛というのは?

「待て待て待て待て」


 すっかり興奮して前のめりになっているワナビを一旦落ち着かせるため、その小さい体を抱えて正座をさせた。

 これは研究や学術ではなく、人間の感情という問題だと理解させるには俺も真っすぐに向き合う必要がある。


「ワナビ、いや学。好きだ」


 そんな言葉だけで目を見開き、頬を染める学に顔を近づけ、そのまま唇を塞ぐ。最初は驚いた表情をしていた学だが、やがてうっとりしたような表情になると、そのまま目を閉じた。ほんの数秒、唇を通してお互いの温もりを伝え合う。


「学……大好きだぞ」


「ん……」


 知識だけが先行した、まだ女としては未熟な少女は真っ赤な顔で俺の目を真っすぐ見ることすらできやしない。恋愛というものを理解させるにはここしかないだろう。


「どうだ? お前の気持ちはさっきまでと同じか?」


 俺がそう言うと、学はふるふると首を振った。


「なんだか……すごく恥ずかしいけど……さっきよりもっとお兄さんを好きになっていると思う……」


 よかった。どうやら気障ったらしいことをした甲斐はあったようだ。


「そう。好きな気持ちにもいろんな種類があるんだ。今のその気持ちはお父さんやお母さん、お祖父ちゃんを好きだと思っていた気持ちと同じか?」


 学はまたしても首を横に振る。


「全然違う。なんだか苦しくて、切なくて、嬉しい。もっとお兄さんの近くにいたい……」


「そう、それが恋愛ってやつだ。その気持ちが最高潮に達した後に、お前の見たような行為があるってことなんだよ」


 顔を真っ赤にして目を潤ませている様子からは、恋愛のなんたるかをようやく理解し始めたようにも見える。やれやれ、まずはだいいっぽといったところか。


「この気持ちのパラメータが閾値(しきいち)を超えた時に、もう一段進めるということだよね! 帰ったらそのタイミングを計算してみるね!」


 だからなんでそうなる!

 もう一歩がどうして届かない!?

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