第75話 ホントに行くの?
翌日、意気揚々と準備を整え、満面の笑みで俺を待つワナビ。
対する俺はもう瀕死。
「大丈夫? 顔色悪いけど、ちゃんと寝た?」
「あぁ、大丈夫だ」
……大丈夫なわけあるか。どうしたらいいのか、対策を考えてたらあっという間に朝になってたんだよ。
ちくしょう、バイク故障してねーかな。
微かな望みをかけてキーを回すと、朝の静寂を破るエキゾーストノートが響く。
うん、いい音だ。いい仕事しやがって、あのおっさん……。
帰ったら覚えてろよ。
ワナビの背もたれにもなるリアボックスに電池と食料を入れ、後は出発するだけ。
バイクなら一時間もかからない距離にあるらしい。
くそう、そんなとこに出版社なんて建てやがったのはどこのどいつだ。
「それじゃ、レッツゴー!」
俺の後ろに乗って元気よく声を上げるワナビ。
俺はこれからのことを考えると元気どころじゃない。
乗り気になれないままバイクにまたがると、ワナビが嬉しそうに乗ってきた。普通のデート気分なんだろうなぁ。俺の気も知らないで……。
「しっかり捕まってろよ」
「うん!」
前回の廃墟探索の時はどこか遠慮がちだったのに、今日は俺の腰にしっかりと腕を回し、決して離さないとばかりにきつくしがみついてきた。
随分と距離が縮んだよな……。
無条件に寄せられる信頼がどこかくすぐったくて、嬉しくて。
でも行先を考えると気が重くて。
俺の感情迷子状態。




