第60話 これで恋人、なのか?
「私もお兄さんの事、好きだよ」
真っ赤な顔で返事をするワナビ。
いつもはガサツなところもあるけれど、今の表情は乙女そのものだ。
「えへ。いざ面と向かって好きって言われると嬉しい反面、すごく照れるんだね」
はにかむ笑顔が愛しくて、つい手を伸ばしそうになってしまう。
いかんいかん。相手はまだ十五歳。ここで手を出したら青少年なんたら条例に引っかかる。
ってそんな条例どころか自治体すらも存在しないんだった。
でもそこはモラルとして、男の矜持としてワナビがもっと大きくなって、物事を自分で理解できるようになるまで待たないと。
……と、俺はそう思っていたんだが。
「ありがとうね、お兄さん」
その言葉と共に顔が近づいてきて、頬に少し湿った柔らかい感触のものが触れてきた。
「な!」
い、今のは唇!?
まさか俺はワナビにキスされたというのか!
「な、何をしてるんだ! そういうのは将来を誓い合った本当に好きな相手とだな!」
「? 今好きって言い合ったばかりじゃない。それって今だけなの?」
しまった。俺としたことがテンパって変な事を言ってしまった。
「いや、今だけってことはないがな……。ひょっとしたらこれから俺の嫌なところとか見えてくるかもしれないだろ?」
「そりゃ人間だもの。変なところのひとつや二つあったって不思議じゃないよ。でもそんなことで嫌いになったりしないよ!」
言わんとすることを全部塞がれてしまった。
恋愛に関しては男より女の方が一枚上手だというのは本当なのかもしれないな。




