第56話 俺という人間の気持ちは?
「お兄さんは私の事好き? 嫌い?」
うぅ、その二元論はズルい。
「嫌いな奴のためにいろんなことをするわけねーだろ」
「だったらキスしたいくらい好き?」
畳み掛けてきやがる。どうしてそんなに必死なんだ?
人を好きになるというのはそれだけ情熱的になるってことなのか。
それを考えると俺だって何も考えずに来た道を引き返して人を集めに行った。それまでの旅で何度も危険な目に遭ったというのに。
俺も必死だったのか?
そしてさっきからどんどん近づいてくるワナビを感じて、俺の心臓はうるさいくらいに高鳴っている。
手を伸ばしてその体へと触れたい衝動に駆られてしまう。
「俺自身もまだ戸惑っている。だが、自分で思っていた以上に……お前のことを好きみたいだ……」
そう答えるなり、ワナビの表情は明るく、可愛くなって。
俺は思わず見惚れてしまう。
「お兄さん! 大好き!」
喜びが弾ける声を聞いたと思った時には、彼女は俺の胸の中にいた。
俺とワナビの間を遮るものは何もなくなり、はっきりと体温を感じるゼロ距離。
「お、おい……」
つい声を上げてしまったものの、その先に続く言葉が出てこない。
拒否をしたいわけじゃないし、抱き着かれて困っているわけでもない。むしろ心に浮かぶのは嬉しさ。
なら俺は何を戸惑っている? 威厳か? 体裁か?
いや、違う。
そろそろ俺は認めるべきだろう。
俺は……ロリコンなんだと。




