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第25話 昔の話だぞ?
「あれは俺がまだ少年兵として戦場に出ていた時だった」
懐中電灯を下から当てて雰囲気を出しながら、低い声で話し出す。
ワナビはまだどこか楽しそうな顔をしてやがる。その余裕の表情がいつまでもつか、見ものだな。
「駐屯地の兵舎の中でな、ある噂が広まっていたんだ」
「ほうほう」
「夜になると、敵襲もないのに突撃ー! という掛け声が聞こえるってな」
「誰かの寝言じゃないの」
茶々を入れるんじゃない。本当に怖くなるのはここからだ。
「その兵舎はかなり歴史のある場所でな。第二次世界大戦の頃にも兵舎として使われていたという記録があるらしい」
先の大戦など二百年近く昔の話だから真偽のほどは分からない。だけどそこはそれだけの歴史を感じさせる古さがあったし、何よりも手入れがされていないせいでまるで廃墟のように荒れており、何が出ても不思議じゃないような状況だった。
「古くて汚い兵舎の中、みんなが寝静まったころに聞こえてくるんだよ。『総員、突撃ー!』ってな。最初は俺も信じてなかった」
俺も人間は死んだら終わり、何も残らないと思っていたからその当時は全く怖くなかった。
「だけどな、ある夜、トイレに行きたくなって目が覚めた時、外が騒がしいことに気が付いたんだよ」




