第140話 結局それ?
「……」
海岸に立ち、水平線を見つめるワナビ。
今声をかけるのは野暮ってもんだな。
そっとしといてやろう。
「風が強いね」
「あぁ」
なんだかいい雰囲気だ。やっぱりワナビも年頃の女の子。ましてや早くに身内を全員亡くしているんだ。
念願だった海に来て、いろいろ思うところもあるんだろうな。
理系だって立派な感情を持った人間ってことだ。
そう思っていた時期が私にもありました。
「海の水の方が温まりにくいから陸上の空気の方が上昇していくんだよ。その差が海と陸の気圧を変化させて、高いところから低いところへ空気が流れていく。これぞ自然だよねぇ」
うん、やっぱりワナビはブレないな。
「はぁ。まぁいいや。それより早く作業を進めようぜ。土嚢は何個くらい用意すればいいんだ?」
「500個」
「ごひゃ……」
そりゃ絶句するわ。それを一人でやれってか。
「袋のひもを結ぶのは手伝うよ」
うん、肉体労働は丸投げだね。
「お兄さんなら500秒でできるでしょ。10分もかからないよ」
できるか!
「大きいシャベルだから一回すくうだけで20キロ分くらいいけるんじゃないの?」
物理の前提がおかしい! シャベルを山盛りにしろってか。
その後、軍隊経験も生かしてノンストップで作業を続けた俺はなんとか五時間程度で500個の土嚢を作ることができた。
「なるほど。1袋当たり30秒ちょっとか。これでお兄さんの肉体データがだいぶ集まってきたよ」
これも実験だったのかよ……。




