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第139話 ロマンは?

「風が気持ちいいね~」


 それわかる。なんかトラックで遠距離を移動する時って、窓を開けて風を浴びるのが気持ちいいんだよな。


「ん? なんか変な匂いしてきた」


 変な匂い? どれ。

 運転席側の窓も開け、外の臭いを確認してみた。


「あ~この匂いか。これは磯の匂いだよ」

「いそ?」


 そっか。海に来たことないんだもんな。

 教えてくれる人もいなければ五感で感じることなんてわかるはずないわ。本には匂いや音は載ってないからな。


「磯ってのは海のことだ。この匂いがしだしたってことは海が近い証拠だ」


 この匂いを嗅ぐと海に来たって感じがしてちょっとノスタルジックになるんだよな。

 ワナビもそのうちそんな気持ちが分かるように……。

「あ~! プランクトンの死骸の匂いだね!」


 死骸……。浪漫も何もねーな。

 まったく、なんでも分析しようとする理系脳め。


「あ……」


 ワナビが窓の外を見て声を上げた。

 俺もつられて横目でそれを見た。

 山の合間を切り分けて現れたのは眼下に広がる入江の姿。

 その向こうには水平線。


「……」


 さっきまであんなに元気だったのに、今は遠くを見て目を細めてる。なんかきれいだな……。


「ワナビ」

「何?」

「よかったな」


 少し驚いた顔をしたけど、すぐに花が咲いたような笑顔に。


「うん!」

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