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第10話 してほしいことはあるか?
「よし、これでなんとか使えるな」
ワナビからもらった剃刀を研ぎ続けること三十分。どうにか錆は落ちてかつての輝きを取り戻し、髭を剃るという本来の用途に使えるようになった。
きれいな水というのは貴重なので、溜めてあった雨水を利用してみっともなく伸びた髭を剃り落としていく。
「ま、こんなもんかな」
綺麗に整った自分の顔を見るのなんていつぶりだろう。
鏡なんてのはどこにでもあったけど、そこに映るのは昔なら浮浪者と間違えられるようなみすぼらしいものだった。
ワナビに「おじさん」と言われたのも仕方ないのかもしれない。
「どう? 綺麗になった……って、うわ!」
その奇声を上げた意味は何だ。詳しく聞かせてもらおうじゃないか。
「お兄さん、意外とイケメンだったんだね。それならお兄さんがお兄さんっぽいや」
何を言ってるのかよく分からんぞ。ゲシュタルト崩壊させる気か。
それにしても俺の名前を覚える気は皆無なのに、どうして聞いたんだろう、こいつは。
「おかげでさっぱりしたよ。お礼と言っては何だが、何か困っていることがあるなら力になろう。何かないか?」
俺の言葉にワナビの表情がぱあっと明るく輝いた。
しまった。これはきっとろくでもないことを頼むときの顔だ。
少し早まったかもしれない。




