表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペル・エラー ~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~  作者: とろたま愚鈍
第一部:最終章|異世界転移編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/148

第九十話「おかえり」

EVAirの座席に、四人が収まっていた。


俺、サヤ、カイラ、ザイン。

画面の向こうに、カインとガレスがいる。


——サワサワサワ


サヤが、隣のカイラの頭をクシャクシャと撫で回していた。

え、なんで?


カイラが訝しげにサヤを見つめていた。


「サヤ。」

「なに?」

「えっと、髪がね。ぐしゃぐしゃなんだけど。」

「うん。でも決めてたから。」

「何が?」


サヤは答えなかった。

ただ、ずっと撫でていた。


画面の中で、カインが小さく咳払いをした。


「ジュディ。」

「うん?」

「よく、無事に戻ったね。」

「あぁ。まぁ、ギリギリだったけど。」


ザインが煙草を弄びながら、ちらりと俺を見た。


「くく。あのゼノに中指を立てるとはな。」

「……見てたのかよ。」

「あぁ。お前、最高だ。」

「そりゃ、どーも。」


俺は、少しだけ息を吸った。

言わなければならないことがあった。


「……みんなに、話しておくことがある。」


誰も喋らなかった。


「まず、アルカナのエネルギー事業の正体について。俺の世界から人間を複製して、魔力を増幅させてから魔石に変える。それが、あいつらの技術の正体だった。」

「……。」

「それから。」


一拍、置いた。


「俺の正体も。」


全員が、静かに聞いていた。


「俺は、召喚された人間じゃなかった。始めから、この世界で生まれた複製体だ。元の世界の木村樹莉は、そのまま生きている。俺が帰る場所は、最初からなかった。」


一息で、言った。

なんとなく、さっさと言ってしまいたかった。


……。


沈黙が落ちた。

誰も何も、言わない。


——サワサワサワ


ただ、サヤがカイラの頭を撫でる音だけが響いていた。

カインが、口を開いた。


「……そうか。」

「あぁ。」

「ジュディ。」

「あんだよ。」

「気を、確かにね。」


笑いがこみ上げた。

嬉しくて。


「……みんな。」

「……。」

「俺は、大丈夫だ。みんながいるから、大丈夫。」


皆、少しだけ俯いた。

ガレスが、軽く咳払いをした。


「ジュディ。」

「なんだよ。」

「菓子折りを、待っているぞ。」

「もちろん。」


カインが、今後の方針を話し始めた。


「MANAは、一度アルカナと正式に接触しようと思う。エネルギー事業の情報を糧に、こちらに有利な契約を結ぶ。」

「……なるほどね。悪くないな。」

「ジュディたちが得た情報は、かなり大きい。使い方次第で、アルカナとの力関係を変えられるかもしれない。」

「あぁ。できることがあれば言ってくれ。」


カインが、少しだけ間をおき言った。


「ジュディ。君に感謝する。」

「よせよ。」

「本当に、ありがとう。」

「……どういたしまして。」


何のことかは、よく分からなかった。

でも、とりあえず受け取った。


………………。

…………。

……。


話がひとまず区切れたころ、EVAirが工房の近くへ降り始めた。


「んじゃ。進展があれば、教えてくれよ。」


立ち上がりかけた時、ザインに声をかけられた。


「ジュディ。」

「ん?」

「お前はこれから、どうするんだ?」


多分、この先の話だろう。

俺は少しだけ考えた。

でも、答えは出なかった。


「……分かんねぇ。」

「……。」

「取りあえず今日は、風呂入って、飯食って、寝る。」


ザインが、少しだけあっけに取られた。

やがて、笑った。


「……ははは。お前らしい。」

「あぁ。また連絡するよ。」

「……飲むか?」

「はは。いいぜ?」


そのまま、三人でEVAirを降りた。







工房の扉の前に着いた。


ドアノブに手をかけようとしたら、カイラに腕を掴まれた。


「ジュディ。」

「ん?」

「ちょっとだけ、ここで待っててくれない?」

「なんで?」

「まぁまぁまぁ。」


サヤが俺の肩を掴んで、カイラと一緒に扉の前に並ばせた。


「まぁ。カイラがそう言ってんだから、ちょっと待ってなよ。」

「だから、なんで?」

「まぁまぁまぁ。」


二人は、そのまま工房の中へ入っていった。


……え、締め出された?


お説教でもされるのだろうか。

しかし、心配はいらなかった。

ものの数秒で、扉の向こうから声が聞こえた。


「「もう、いいよぉ~!」」


何なんだ。

かくれんぼか?


俺は、工房の扉を開けた。

玄関に、二人が並んでいた。

何も、変わっていない。

いつもの工房だ。


「「……。」」


二人は目を見合わせた。

それから、こちらを向いて、言った。


「「おかえり。」」


——あぁ。なるほど。


これが、言いたかったのか。

少しだけ、目が滲んだ。

俺は二人を交互に見て、いつもよりも大きな声で言った。


「ただいま!」


——っぷ。


サヤが吹き出した。カイラもつられて笑う。

二人を見ながら、俺は右ポケットの宝石を無意識に握っていた。


笑いがこみ上げてきた。

三人で、玄関で笑っていた。


何がおかしいのかも、分からない。

でも、それで良かった気がした。







俺は、『エラー』だった。


妻にも、娘にも、もう会えない。


それでも。

何があっても、俺はこの場所に帰ってきた。







スペル・エラー

~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~





第一部 完





第九十話、そして第一部、ここまでお読みいただきありがとうございました。


「何があっても帰る」と言い続けた男が、とうとう帰りましたね。


エルナのいた工房に。

カイラとサヤのいる、この世界に。


彼の目的の場所ではなかったかもしれません。

それでも、そこは確かに、彼の帰る場所でした。


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


作者、ぶっちゃけ小説を書いたのは初めてでした。

小学校の作文以来です。


マジで、キツすぎてやめようかと思いました笑


でも、読んでくれる人がいたから、

ジュディをここまで歩かせることができました。


本当にありがとうございます。


第一部は、これにて完結です。


明日からは、第一部のエピローグを数話更新していきます。

その後、少しだけ準備期間をいただいてから、第二部の投稿を始める予定です。

おそらく、エピローグ終了後から二〜三週間ほどになると思います。


明日20:10に、また会いましょう。

読んでくれたら、嬉しいです。


あと、感想も。

「読んだよ。」だけでも飛び上がります。


……お会いしましょうね(圧)?




スペル・エラー 第一部 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ