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スペル・エラー ~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~  作者: とろたま愚鈍
第二部:最終章|キムラ・ジュディ編

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第二百五話「厄介な男」

「くそっ——」


咄嗟に、両脚へ魔力を集める。


前も、右も、左も、後ろも。

視界に入るだけで何十人ものアッシュガードがいて、その全員が俺へ銃口を向けていた。


……間に合わねぇ。


ジャミング電撃を使っても、全員は視界に入らない。

高速魔術を発動するより、向こうが引き金を引く方が早い。


「撃てぇ!!!」


兵士の声が、響いた。

その指が、引き金へかかった。


その瞬間。



——ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!



耳を刺す警報が、タワー・オルタナティブから鳴り響いた。


「——っ!?」

「な、なんだ!?」

「タワーから警報!?」

「一体、何が!?」


一瞬。

本当に一瞬だけ、周囲の視線が俺から逸れた。


——カイラだ!!!


「……っは。」


思わず、笑みが溢れた。

両脚へ溜めた魔力を、一気に放つ。


——バヂッ!!!


地面を蹴り、高速魔術で部隊の間を抜けていく。

警報はまだ鳴り響いていたが、アッシュガードもすぐに俺へ注意を戻した。


「くそっ!!!こいつ!!!」

「逃がすな!!!」

「さっさと撃て!!!」


背後から銃声が響く。


……こんな密集地帯で、撃つなよな。

仲間に当たるぞ。


身体を左右へ振りながら射線を外す。

いくつかの銃弾が、体を掠めた。


「——ぐあぁ!!!」


あーぁ。言わんこっちゃない。

……言ってねぇけど。


そのまま目の前に見えている、青い防壁を目指した。


「……っし!」


あと少し。

もう少しで、手が届く。


——戻れる。

そう思った時だった。


——ガッ!!!


「……あ?」


足に、何かが絡まった。

身体が前へ投げ出され、咄嗟に両腕をつく。

そのまま地面を転がって、すぐに足元へ視線を向けた。


「んだよ!!これ!?」


細い金属線が、何重にも足へ絡みついていた。

さらにそこから広がった網が、身体へ纏わりついている。


「……ネット!?」


「よし!!!捕獲したぞぉ!!!」

「捕縛網に、キムラ・ジュディがかかった!!!」


「なんで、そんなもんあんだよ!!!」


……いや。冷静に考えれば、こいつらはアッシュガード。

戦うことを仕事にしてる傭兵だ。


なら、魔術師と戦うことだって当然ある。

そりゃ、対策くらい持ってるか。


……納得したくねぇけど。


「このまま撃てぇ!!!」

「っちぃ!」


咄嗟に、ジャミング電撃を発動する。


——ッ!


視界に映った兵士の動きが、一斉に止まった。

その間に網を掴み、力任せに引っ張る。


「……かってぇ!!んだよこれ!!!かってぇ!!!」


普通の網じゃない。

右腕のストーンウェアで引き千切ろうとしても、身体へ絡みついて上手く力が入らなかった。

金属線に、何かしら加工がされてんのか?


「……ぐっ。」


頭の奥に、鋭い痛みが走る。

さっきから、ジャミング電撃を使いすぎた。

視界へ入る相手が増える度、一人ずつ出力を細かく調整し続けている。


……まずいな。慣れない魔術に頼ったツケが来てる。

長くは、保たねぇ。


——ッ。


ジャミング電撃が、切れた。


「——っ!!動けるぞ!!!」

「撃て!!!」


「——あー、もう!!」


咄嗟に目の前へ、いつもの魔術防壁を展開する。

青い膜が広がり俺を包みこんだ。


……これで、数発は耐えられるか?

どちらにしても、時間がねぇ!!!


——パンパンパンパンパンパンッ!!!


無数の弾丸が、こちらへ飛んでくる。


「——っ!!!」


思わず、身をかがめた。

その直前。


——ブワッ!!!


俺の目の前へ、一人の人影が飛び込んできた。


「……え。」


黒色の髪が、風に揺れる。

見覚えのある、その出で立ち。


「サヤ!?」


弾丸が、その身体へ向かう。


——当たる。


そう思った。

でも。


——ヒュッ。


弾丸は、サヤへ触れる寸前で不自然に軌道を変えた。

まるでサヤの周囲だけ見えない何かに包まれているみたいに、銃弾が左右へ逸れていく。


「……な。」

「んはは!」


サヤが笑い、そのまま両手を前へ振った。


——ヒュン!!!


背中に背負っていた二本の刀が、鞘からひとりでに飛び出す。

一本が俺へ向かって飛んできた。


「え、ちょ——ちょっま!!!」


——ザンッ!!!


俺の身体へ絡みついていた網が、一撃で切断される。

もう一本の刀は、そのままアッシュガードへ向かった。


刀身が、空中で回転する。

ただし、相手へ向いているのは刃ではない。


——ドゴッ!!!


「ぐっ!!!」


峰が、兵士のみぞおちへ叩き込まれた。

そのまま刀は横へ滑り、別の兵士を次々と殴り倒していく。


「……うわぁ。」


なんだ、それ。

多分……いや、絶対。


風の魔術で、動かしてる。


「……そんな使い方、あんだな。」


少なくとも、俺にはなかった発想だ。

普通に、すげぇ。


「ボンクラァ!!」

「……はい!」

「撤退!!!」

「あ、あぁ!!」


一本の刀がサヤの手へ戻り、もう一本も背中の鞘へ収まる。

そのまま、サヤが俺へ手を向けた。


「カイラ!!!」

『分かってる!!ジュディ!サヤ!二人とも、今から通すよ!!』

「……っし!!!」


次の瞬間。

サヤの手元で、風が爆発した。


あ、これ。

なんか、知ってる。


「ちょ、サヤ!!!自分で——」


——ブワァッ!!!!


「あ、あああぁぁぁぁぁぁ!!!」


身体が浮いた。

そのまま、防壁へ向かって一直線に吹き飛ばされる。


「いやいやいやいや!!!」


青い膜へ、身体が触れる。

一瞬だけ防壁が俺を受け入れるように揺れて、そのまま内部へと通り抜けた。


「ぐっ!!!」


背中から地面へ叩きつけられ、肺から一気に空気が抜ける。

しばらく空を見上げながら、自分の身体を確認した。


……死んでねぇ。

骨も、多分折れてない。


「よっす。」


横から声がして顔を向ける。

サヤは、何事もなかったように普通に立っていた。




—




サヤは、俺の体をまじまじと見つめる。

そのまま、確信したように口を開いた。


「よし。痛がれるんなら、セーフだな。」

「アウトじゃね!?」

「セーフでしょ。ギリ。」

「……。」



思わず、身体を起こした。


「前にもあったけど、ちょっと激しすぎだよ。サヤ。」

「丁寧やれるほど、余裕なかったっしょ?」

「……まぁ。はい。」


立ち上がって、肩や腕、足を軽く動かしてみる。

大きな怪我はない。せいぜい擦り傷くらいだ。


「……悪ぃ。助かったよ。」

「んはは。そこは謝罪じゃなくて、感謝っしょ?」

「……サンキュ。」

「うむ。よろしい。」


何故か偉そうに、サヤが頷いた。


「カイラにも、後で言っとけよ?」

「あぁ。もちろん。」


防壁の外を見る。


アッシュガードは、その場で態勢を立て直していた。

何人かがこちらへ発砲するが、弾丸は防壁へ触れる寸前で消えていく。


警報もあってか、部隊の中には多少の混乱が残っているみたいだ。


「……サヤ。」

「ん?」

「なんで、ここにいるんだよ?お前、各所との連携担当だろ?」

「ガレスに、ぶん投げた。」

「……は?」


思わず、聞き返した。

いや、まぁ適任ではあるだろうけど。


「連絡、取ってたの?」

「取ってたよ。ギルド経由で依頼出したって言ったっしょ?」

「……ガレスのことは、聞いてねぇけど。」

「んはは。あんたの事で、ガレスが来ない訳ねーじゃん。」

「……そっかぁ?」

「そうだって。足なんでしょ?あいつのさ。」

「……。」


まぁ、結果オーライだ。

ガレスなら、俺達より遥かに上手く必要な人間へ必要な情報を回してくれる。


サヤが肩を回しながら、防壁の外へ視線を向けた。


「まぁ。ここに来たのは、それだけじゃないけど。」

「……ん?何かあったの?」

「アーヴィンが、このタワーに入ってる。」

「……は?」


一瞬、言葉の意味が分からなかった。


「……何だって?」


「だから。アーヴィン・ロックウェルが、このタワーに入って来てる。」

「いやいやいや。ちょ、待て待て待て。」


防壁の外を見る。

少し前まで、俺が捕まえようとしていたアーヴィン。


——それは、ホログラムだった。


「カイラが、内部カメラで見つけた。アーヴィンが一人で、タワーの中にいる。」

「……防壁は?」

「知らね。カイラも分かんないって。」

「……どうやって入ったんだよ。」

「だから、分かんないって。」


頭の中で、さっきまでの状況が一つずつ繋がっていく。


アーヴィンのホログラム。

五百人のアッシュガード。

正面からの、派手な進軍。


「……囮。」

「ま。そーだろうね。」

「は。はは。」


思わず、笑ってしまった。


「……それは、かなり。うん。なかなか。」

「んはは!ボンクラ、分かりやすぅ~。」

「何がだよ?」

「好都合なんでしょ?」

「……っは。まぁな。」


軍勢の中からアーヴィン一人を見つけて、拘束して、連れ出す。

そのつもりだった。


それが向こうから、一人でタワーへ入ってくれた。


「……目標、変更だな。」


タワーを見る。

この中に、アーヴィンがいる。


なら、そのまま拘束すればいいだけだ。


「サヤ。一緒に——」

「いんや?」

「……ん?」


サヤが、防壁の外へ視線を戻した。


「私は、ここに残る。」

「……は?」


思わず声が漏れた。


「いやいやいや。何言ってんだよ。」

「あんたが、アーヴィンと決着つけるんでしょ?」

「そのつもりだけど。」

「だったら、この部隊の邪魔が入らないことが前提っしょ?」

「いや。そこは防壁があるだろ?」

「完全じゃねーし。実際、アーヴィンは入ってんじゃん。」

「それは……。」


何も、言い返せない。


「どっちにしても、時間を稼ぐ必要はあるんだし。」

「……。」

「他の部隊が到着するまで、状況を掴みながら削っておく。」


サヤが、背中の刀へ手を添える。

ダメだ。リスクが高すぎる。


このまま、ここで戦うメリットだって正直薄い。

……いや。言い訳、だよな。


「……。」

「何だよ。ボンクラ?」

「……いや。」

「言いたいことがあんなら、はっきり言えって。」

「……あぁ。」


少しだけ、誤魔化そうとして、止めた。

もう、そういうのは。


こいつらには、止めたんだ。


「サヤ。正直に言う。」

「ん。どーぞ。」

「俺は、サヤが傷つくのが怖い。」

「……。」

「だから、一緒に来てほしい。」


いつかの光景が、頭に浮かぶ。


俺を突き飛ばしたサヤ。乾いた銃声。肩から流れ出した血。

……あんなのは、もう、二度とごめんだ。


「頼むから——」


息を吸う音がした。

サヤが、大きく息を吸っていた。


「ジュディ!!!!」

「……ん!?」


突然の大声に、身体が跳ねる。


「私はぁ!!!あんたが好きだぁ!!!!」

「……???」


え。知ってる。

いや、今、何の話?


「……お、おぉー。」


防壁の向こう側で、兵士がどよめいていた。

なんか、拍手してる奴もいる。

……うるせぇ。なんか、うるせぇ。


サヤは、意に介す様子もなく言葉を続けた。


「惚れた男が、意地張ってんだよ!!!」

「……。」

「それ支えなくて!!!私も『あんたが好き』なんて張れねーよ!!!!」

「……サヤ。」

「行けよ!!!キムラ・ジュディ!!!」


サヤが、こちらに振り向く。

俺を、真っ直ぐに見つめていた。


「私が、あんたを信じるように!!あんたも、あんたが好きな私を信じろって!!!!」

「……。」


何も、言えなかった。


「怖いから、行かせない?んなもん。私だって同じだよ。」

「……。」

「私だって、あんたが傷つくの怖ぇよ。」

「……サヤ。」

「それでも、行くんだろ?あんたは。」

「……。」

「だったら——」


サヤが、いつものように笑った。


「——行ってこいよ!!!」


それから、少しだけ声を張る。



「あんたは、私とカイラが惚れた、キムラ・ジュディなんだろ!!!!」



その言葉に、思わず俯いた。

胸が、締め付けられるように痛い。


サヤにまた、こんなことを言わせてしまってる。

本当に、俺はボンクラだ。


だからこそ、俺には、みんなが必要だ。

今は、助けてもらおう。


サヤを、信じよう。


「……サヤ。」

「おう。」

「……任せた。」

「んはは!!任された!!」


サヤが、刀の柄を握る。

俺は踵を返し、そのままタワー・オルタナティブの入口へ駆け出した。


もう、振り返らなかった。




—




ジュディの足音が、少しずつ遠ざかっていく。

私は、その音が完全に聞こえなくなるまで、タワーの入口を見ていた。


……行った、よな?


——ピッ。


頭の中に、通信が繋がる。

カイラからの、通話だった。


『サヤ。』

(んー。)

『ジュディは?』

(……行ったよ。)

『……駄々、こねた?』

(んはは。うん。めっちゃこねてた!)

『やっぱりねぇ~。』

(好きっつったら、折れたけど。)

『……そこまで、言ったの?』

(そこまで言わなきゃ、動かねぇし。)

『はぁ~。あんまり、安売りしちゃダメだよ?』

(んはは。あいつにしかしねぇよ!)

『というか、やっぱジュディは悪い奴だ。』


カイラの言葉に、思わず笑ってしまう。


本当に、あいつは悪い奴だ。


自分が傷つくのは平気なくせに、人が傷つくとすぐに顔を歪める。

自分のことは散々後回しにするくせに、こっちが同じことをすると怒る。


ズレてんだよ。色々と。


(ま~。でも、アレだよな。)

『あれ?』

(私もカイラも。結局は、惚れた方が負けって感じ。)

『あはは!そうだねぇ。』


軽い声が、返ってくる。


別に、お互いに勝ちたいとか。負けたくないとか。

そんな話じゃない。


同じ、めんどくさい男に惚れた。

ただ、それだけだ。


それを、言葉にしなくてもお互いに分かっていた。


「……。」


防壁の向こうを見る。

アッシュガードは、五百人。


ジュディが減らしたし、カルディア政府も合流してるから……。

ちょっとは、減ったか?


まぁ、でも。

多いもんは、多い。


(……カイラ。)

『うん?』

(ジュディ。任せたわ。)

『……。』


一瞬だけ、通信の向こうが静かになった。

それから、迷いのない声が返ってくる。


『うん!任せて!』

(んじゃ。また後で。)

『うん。サヤも、怪我したらすぐ戻るんだよ?』

(は~~い。)


通信が、切れる。

後はもう、やるだけだ。



「ん~~~~っ。」



両腕を上へ伸ばして、背筋を伸ばす。

首を鳴らし、肩をぐるりと回した。


「さって、と。私も、突っ張りますかね。」


背中へ、手を伸ばす。

そこには、二本の刀がある。


ジュディ達がアッシュタウンへ行っていた間、私は久しぶりに実家へ帰った。


——荷物を、取りに。


兄貴が若い頃に使っていた、二本の刀。

実家の奥に、ずっと残っていたものだ。


一本を少しだけ鞘から抜いてみる。


「……やっぱ、クソ長ぇ~。」


正直、私には扱えない。

兄貴みたいに長い刀を振り回す技術なんてないし、そもそも私は銃も長物も得意じゃない。

ダガーくらいが、ちょうどいい。


まぁ、それは。

あくまでも、自分の手で使うならの話だけど。


「んはは。」


刀を、鞘へ戻す。


「……始めますか。」


……ここ最近。

一つ、気付いたことがある。


ハピレスとの戦いで、私はジュディを庇って撃たれた。

あいつへ向かっていた銃弾を、代わりに肩へ受けた。


あの時のジュディの顔は、多分、一生忘れない。


血が出ているのは私なのに。

撃たれたのも私なのに。


あいつの方が、ずっと痛そうな顔をしていた。


「……まぁ。嬉しいっちゃ嬉しいんだけどさ。」


あの時、分かった。


あいつの傍にいたいなら。

あいつと一緒に歩きたいなら。



——私は、傷付いちゃ駄目なんだ。



ジュディは、私が傷付くと。

自分が傷付くより痛がる、変態だから。


「……ほんっと。厄介な男に、惚れたもんだ。私も。」


だから、考えた。


どうすれば、あいつの傍にいれるのか。

どうすれば、あいつと一緒に歩けるのか。


身体へ、魔力を流す。

私がずっと使ってきた、風の魔術。


——ヒュッ。


足元から巻き上がった風が、身体へ絡みつくように薄く何重にも重なっていく。

髪が揺れ、服が風に靡いた。



「——魔風結界。ヴィントバリエーレ。」



懐から飴を取り出し、目の前へ、試しに投げた。

飴は、風に弾かれて明後日の方向へ飛んでく。


「……なんつって。」


銃弾だろうと、刃物だろうと。

私へ向かってくる物理攻撃を、風で逸らす。


受け止めるんじゃない。弾くんでもない。


——受け流す。


私が傷つかず、あいつを守る。

そのために作った魔術だ。


「……んで、もう一個。」


両手を交差させ、背中の二本へ魔力を流す。

刀と自分の魔力を繋ぎ、それぞれを包むように風を発生させた。


——カタッ。


鞘が、揺れる。


——ヒュン!!!


二本の刀が空中へ飛び出し、そのまま私の左右へ浮かんだ。


「……いいね。上々。」


やっぱ、ちょっと変な感じだな。


刀は重いし、長い。

私が握れば、たぶん刀の方に振り回される。


なら、握らなきゃいい。


風で動かす。

私の身体じゃなく、魔術で振る。


「……やってみりゃ、案外なんとかなるもんだな。」


二本の刀を、目の前でゆっくりと回す。


……兄貴が見たら、怒るかな。

刀を舐めるな。とか言って。


「……言いそぉ~。」


一本の刀へ、視線を向けた。


ずっと、家に残っていた。

兄貴が、若い頃に使っていた刀。


「……。」


私は、兄貴の昔を、全部知っているわけじゃない。

実際、ギャングだったなんて、最近知ったし。


知らなかったことなんて、多分他にも、いっぱいある。


「……兄貴。」


刀身へ、指を添える。


「あいつが言うにはさ。あんたとは、親友らしいよ?」


風が、刀の周りをゆっくり回っている。


「あいつが勝手に言ってるだけだと思うんだよね。多分。」


ジュディの顔が、浮かぶ。


正直で。貪欲で。

余計なことばっかして。すぐ人のこと背負って。


そのくせ、自分が守られると困った顔して。

何より、ボンクラだ。


「でも、多分。合ってるよね?」


兄貴も、ああいう奴は、嫌いじゃなかったと思う。

私と兄貴は、なんとなく人の好みが似てるから。


私が、あいつに惚れたんなら。

兄貴だって、きっと。あいつを認めてた。


「あいつ、絶体絶命っぽいからさ。」


二本の刀が、ふわりと浮かぶ。



「ちょっと、手伝ってよ。兄貴。」



私はそのまま、防壁へ向かって歩き出した。

青い膜の向こうには、軍勢がいる。


銃も、刀も、魔術も使う。

五百人近い、傭兵。


「……アッシュガード、だったよな?」


確か、結構強い傭兵団。


……知らね。


私には、関係ない。

こいつらが強いとか、弱いとか。


そんなこと、クソどうでもいい。


ただ。あいつらは、ジュディの敵なんだろ?



——なら、私の恋路を邪魔する、恋敵だ。



大きく息を、吸う。

防壁の向こうにいる軍勢を、真っ直ぐに睨んだ。



「来いよぉ!!!有象無象どもぉ!!!!」



アッシュガードが、一斉に身構える。

私は、笑った。



「無傷で!!!完封してやっからよぉ!!!!」



地面を蹴る。

そのまま、青い防壁を飛び出した。


第二百五話、お読みいただきありがとうございます!


サヤの回でしたね!


ジュディが「キムラ・ジュディ」を張るなら。

サヤも、「あんたが好き」を張る。


心は乙女なのに、言葉とか、行動とか。

色々アウトプットが物騒なのがサヤ・ウインドウです。

どうぞよしなに。


次回も20:10、更新予定です!

ブクマやコメントをいただけると、サヤの被弾率が少しだけ下がります。

よろしくお願いします!


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