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スペル・エラー ~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~  作者: とろたま愚鈍
第二部:最終章|キムラ・ジュディ編

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第二百三話「俺達の生存戦略」

アルカナ第七支社、もといタワー・オルタナティブの監視室。

そこに、エミリを除く全員が集まっていた。


壁一面に並んだ画面には、カルディア西部の地図と、各所の監視映像が映し出されている。


その中央の地図。

複数の赤い点が、ゆっくりとこちらへ近づいている。


「——さて。」


ネルが、手を叩いた。


「全然全く納得はしてないけど、方針を共有するよぉ。ジュディ。」

「……あぁ。」

「まず、大前提ぃ。」


ネルが、画面を指差す。


「これは、あくまで防衛戦だ。」

「……。」

「タワー・オルタナティヴを守り、エミリを守り切る。全然全く納得はしてないけど。」

「……はい。」

「君がウジウジしていた十五分。まずは、その間に私たちが行っていたことを共有するよ。」

「……ネル。」

「何?」

「なんか、怒ってる?」

「あっは。怒ってないよ?」


ネルが、笑う。


「全然全く納得してないだけで。」

「あ~。……今度、何か奢るから。」

「へぇ。奢るつもりあるんだ?」

「あるよ。そのために、まずは聞かせてくれよ。」

「……まぁ、いいでしょう。」


ネルが、画面を切り替えた。


カルディアの西側。

国境付近の映像。


黒い装備に身を包んだ人間が。

列を作って、こちらへ進んでいる。


「この映像の通り。アッシュガードが、カルディアの境界を越えて進軍してる。数は五百くらいかな?」

「……五百か。多いな。」


思わず、画面へ顔を近づける。


個人で相手できる数じゃない。

いや、軍隊だし当然なんだけど。


「ここに着くまでの時間は?」

「この進行速度だと、三十分ってところかな。」

「はぁ~。くっそ。」


頭を、無造作に掻く。


「時間に追われる人生は嫌だよなぁ。」

「誰のせいだ。誰の。」

「……すんまへん。」

「あ、ちなみに。」


ネルが、別の映像を出した。

軍勢の中央に、見覚えのある白髪の男がいた。


「アーヴィン・ロックウェル本人も、軍勢と一緒に移動してる。」

「……っは。やっぱいるよな。」

「なんで嬉しそうなんだよ……。」

「まぁまぁまぁ。」


煽ったメッセージを送った効果があったかは分からない。

でも、探す手間は省けそうだな。


「なんか、企んでるね?ジュディ。」

「あぁ。後でちゃんと説明するよ。」

「……了解。じゃあ、次だね。」


ネルが、資料を切り替える。


「私たちの準備について。」




—




「こっちで、防衛のために動いたのは二つだ。」


ネルが、指を二本立てる。


「援護要請と、防御設備。」

「……さんきゅ。」

「……軽っるぅ。……援護要請に関しては、サヤにお願いしてた。サヤ、どう?」

「ん。」


壁際にいたサヤが、端末を持ち上げた。


「言われた通り、エルドとジャスには連絡したよ。アルカナとカルディア政府は動いてくれそう。」

「……え、動いてくれんの?」

「え、何が?」

「いや。カルディア政府はともかく、アルカナは……。」


ゼノの顔が、頭に浮かぶ。


「ゼノが言うには、アルカナはこの件に関して軍を出さないって……。」

「あー。それは解決してるでしょ?」


サヤが、ひらひらと手を振る。


「体裁上、喧嘩売ってんのは向こうなんだから。」

「体裁上?……あ。」


画面を見る。


カルディアの境界線。

それを越えてくる、アッシュガード。


「……それも、そうか。」


ここは、カルディアだ。

俺たちは、カルディアの中で動いているに過ぎない。


「カルディアの境界を越えて攻めて来るのは、アッシュガードだ。」

「そ。」

「あくまでも、降りかかる火の粉を払いのける。って名目か。」

「んな小難しい言い方しなくていいって。」


サヤが、笑う。


「アッシュガードが、カチコミ入れに来た。だから、ぶっ潰す。そんだけっしょ?」

「……なんか最近。サヤ、言葉強くない?」

「んはは。ボンクラの影響かもね。」


いや。俺は、そんな言葉遣い悪くないって。

……まぁ、いいか。


意味は、分かりやすいし。


「それぞれ到着は、どのくらいだって?」


ネルが、サヤへ聞く。

サヤが、気まずそうに飴を転がした。


「あー。カルディア政府は、先行で百人くらいなら十五分で派遣できるって。」

「……なら、向こうが来る前には間に合うのか。」

「ま。焼け石に水だけどね。」

「……まぁ、そりゃそうか。」


百人に対して、向こうは五百人。

それだけで、全部解決するわけじゃない。


ネルが、顔を上げる。

そのまま、サヤと会話を続けた。


「ん~~。いないよりは、全然マシだねぇ。」

「ん。私達だけじゃあ、どっちにしろ無理だし。」

「向こうのリソースを分散できるだけでも、良しとするかぁ。」


今回の援軍は。

勝つためというより、耐えるため。


そう割り切った方がよさそうだな。


「五百に届く数の派遣は、正直分かんないってさ。」

「……分かんねぇ、じゃねぇんだよぉ。バカがぁ。」

「私にキレんなよ……。」


ネルの言葉に、サヤが眉を寄せる。


「一応、概算で到着目処が分かったら連絡するって。」

「……そっかぁ。まぁ、待つしかないねぇ。」

「うん。アルカナの方は、もう少し時間かかりそう。」

「っち。同じアルカナとして、恥ずかしいよぉ。」


いやいや。

元々アルカナは、組織として全面協力する気はなかった。


そこから、いきなり五百人規模へ対応しろと言われたって。

すぐに準備なんてできるわけがない。


「後はぁ……。」


サヤが、端末を操作する。


「一応、ギルドに依頼出しておいた。」

「……お?」


ネルの目が、少し輝く。


「気が利くねぇ?サヤ?」

「んはは。でしょ?いくつか傭兵が食いついて来てくれるかもね。」

「……それは金次第じゃないか?」

「もち。いい値にしておいたって。」


サヤが、笑顔でネルを見る。


「あ、これネル持ちだから。よろ。」

「あっは!」


ネルも、笑った。


「払えると思うけど、無許可なのは癪に触るよねぇ~!!」

「あー。喧嘩すんなよ?な?」

「じゃあ、ジュディが払う?」

「……。」


あ、まっずい。

俺は、咳払いをする。


「まぁ、援護要請で今できることはやりきった感じか?」

「露骨に話反らしたな。ボンクラ。」

「サヤ、しー。静かに。俺が払うってなったら、当分節約生活だぜ?」

「おうふ。了解。」

「ねぇ。聞こえてんだけどぉ?」


ネルを見る。


「あー、ネル。防衛設備に関しては?」

「……。」

「ネル。防衛設備に関して、教えて?」

「……っち。まぁいいか。」


……助かった。

あっぶねぇ。




—




「元々、このアルカナ第七支社。もとい、タワー・オルタナティヴには防衛設備が付いてる。」

「……具体的には、どんな設備なんだ?」

「まぁ、ぶっちゃけ。」


ネルが、画面に施設の全体図を表示する。


「タワーを半球状に包む、簡易的な防壁だけだねぇ。」

「……だけ?」

「ミサイルとかも、あれば良かったんだけど。」

「防衛設備に、ミサイルって普通あんのか?」

「まぁ、ないねぇ。」


ネルが、肩を竦める。


「元々、軍事用の施設でもないし。ないものねだりではあるぅ。」

「じゃあ、防衛に関しては。この簡易防壁だけが頼りって感じか……。」

「あっは。正直、これだけだと詰んでたんだけどねぇ。」


ネルが、横を見る。


「今回は、カイラがお手柄だったよぉ。」

「ん?」


カイラを見る。


「カイラが?」

「えっへん!防壁を、結構改造しました!」


カイラが、胸を張る。

……大きいな。


「……。」


サヤが、ジト目でこちらを見ていた。


「何考えてんだ?ボンクラ?おい?」

「……え、何も?」

「嘘だ。目がパキってた。」

「パキってねぇよ。なんなんだよ、それ。」

「だって、胸——」


サヤに近づき、両肩を掴んだ。

そのまま、真っすぐにサヤを見つめる。


「止めろよ?マジ、その弄り止めろよ?マジで。」

「わ。……ち、近い近い。わ、分かった。分かったからボンクラ!!」


……よし。

分かってくれたなら、よし。


俺は、サヤの肩を離して元に戻った。


「……えっと。」


カイラが、困ったように笑う。


「あ、説明続けるね?」

「はい。お願い致します。」

「……なんで敬語なんだろ。」


カイラが、端末を操作した。

施設を囲む半球状の線が、青く光る。


「防壁を管理してる魔術式を改変して、転送防壁に変えました。」

「……転送防壁って、確か。」

「うん。」


カイラが、頷く。


「防壁に触れたものを察知して、対角線に自動転送する防壁。」

「……。」

「理論上、絶対防御だね。」

「それ、ビルを丸々包む防壁に転用できたのか?」

「うん。まぁ、突貫工事だけど。」


……え。すごくね?


「ちなみに。」


ネルが、口を挟む。


「内側から外側へ出るものは、普通に通るよ。」

「ん?それって、全部?」

「ん、全部。攻撃も、人も。」

「じゃあ、一度外に出て、外から戻りたい時はどうすんだ?」

「……外に出るつもりなのか君は。……カイラぁ。」


ネルが、カイラを指名する。

同時に、カイラが手を上げた。


「はい!私の許可制です!」

「許可制?」

「うん。ここにいるメンバーはID登録してて、私の許可で中に戻れるようにしてある。」

「なんで?常時通れるようにするんじゃダメなのか?」

「ハッキング対策です。」


……なるほど。

理にかなってるな。


「だから、一度防壁の外に出た人が戻る時は、必ず私に通信して。」

「おっけ。了解。」

「うん。許可を出したIDだけ、一時的に防壁を通れるようにするから。」

「んじゃあ。敵と一緒に防壁を通過した場合は?」

「ふふん。敵だけポイッとします。」

「ポイっと?」

「そ。反対側に、ポイっと。」

「便利だな……。」


敵が、銃を撃っても。

敵が、そのまま突っ込んできても。


防壁に触れれば、反対側へ飛ばされる。

簡単には、この施設へ入れない。


「確かに、すげぇけど……。」


一つだけ、気がかりがあった。

前に、カイラから説明された時、この防壁には弱点があったはずだ。


「エネルギー効率の問題は?ビル丸々なんて、かなり燃費悪そうだけど。」

「うーん。そうなんだよね。」


カイラが、少しだけ顔を曇らせる。


「ビルの中に貯蔵されてるエネルギーだけで見ると、十分くらいかな?」

「……十分、か。」

「うん。」

「援護が来る時間にもよるけど、なんとかするしかねぇな。」

「あ、時間なら大丈夫だよぉ。」


ネルが、横から口を挟んだ。


「なんとかしたからぁ。」

「……なんとかできんのかよ。」

「できるよぉ。このタワー・オルタナティヴは、魔力の地脈の上に建造されてるでしょ?」

「いやいや。それで、あーなるほどね!とはならねぇよ。」

「はぁ~。地下から、魔力を吸い上げて使えるってことだよぉ。」


ネルが、画面の下部を指差す。

施設の地下に、太い線が走っている。


「最近は魔力の吸い上げをしてる企業もいないし。使わない手はないでしょ?」

「いやいやいや。それはそれで問題だろ?」


思わず、手を上げる。


「その地脈は、レガシーコードの起動に使うんじゃねーのか?」

「はぁ~~。疲れるぅ~~。」

「あ。ため息、止めてね?」

「レガシーコード起動に使うのは、あくまでも地脈から出る『魔力の情報』だけだよ。」


ネルが、呆れた顔をする。


「魔力そのものは使わないの。」

「……よく分かんねぇ。」

「よく分かんなくてもいいよ。」


即答だった。


「とにかく大丈夫ってこと。バカなんだから、余計なこと考えんな。」

「ひでぇ。」

「あっは!」


……エネルギー問題も解決。

ってことは、この転送防壁に隙はないってことになる。


待てよ。

ってことは……。


「なら、援軍はいらなくねぇか?転送防壁で、向こうは手出しできねぇだろ。」

「いや?それが、そうでもないんだよ。」

「……あ。そうなんですね。」


次から次へと。

そんなに、単純な問題でもないらしい。


「地下のエネルギーでも、そんなに時間伸びないとかか?」

「いんやぁ。そっちじゃないんだなぁ。」


ネルが、施設の外側を拡大した。


「どちらかというと、防壁の外側にある楔だね。」

「……楔?」

「そ。楔。」


地図の上。

施設から少し離れた場所に、小さな点が表示された。


「ビルを丸々囲うほどの防壁を維持するためには、どうしても外側に楔を打ち込む必要がある。」

「それって何本?」

「一本。」

「……あー。もしかして。」

「そ。それは、外から壊せる。」


ネルが、頷く。


「当然、楔自体にも防壁は張ってるけど。それは転送防壁の対象外だしぃ。」

「……。」

「場所も隠してある。簡単には見つからないと思うけどぉ。」

「……見つかったら?」

「壊される可能性は、高いねぇ。」

「……マジか。」


画面に視線を移す。


小さな、たった一つの点。

これが、生命線か……。


「防壁を維持するために、それを守る必要がある、か。」

「まぁ。そういうことだねぇ。」


カイラが、頷く。


「まぁ、ビル丸々守るよりはずっと楽だよ。隠してもあるし。」

「援軍が来るまでに、見つからず、壊されないことを祈るしかないか?」

「うん。そうだね。」


ネルが、画面に映るアッシュガードを指差した。


「ただしぃ。」

「ん?」

「相手は、五百人。なんせ数が多いからね。」

「人海戦術には弱いわな……。」

「そ。何十人、何百人って使って周囲を洗われたら。最後まで隠し切れる保証はないねぇ。」

「……バレた時点で、楔の防衛戦になりそうだな。」

「ま。そうだねぇ。」


もう一度、小さな点を見る。


いつかは、見つかるかもしれない。

そんで、見つかったら。今度は、この楔を守る戦いになる。


「実際、援軍が来れば戦闘にリソースは割かれるしぃ。」

「あぁ。」

「なるべく、最初は見つからないことを祈るしかないねぇ。」

「……そうだな。」


状況は、分かった。


援軍は呼んだ。防壁もある。

それでも、絶対じゃない。


まぁ、絶対なんてねぇよな。

この道を選んだ時点で、期待してない。




—




「こちらからの共有は、以上~。」

「あぁ。ありがとう。」

「……さて、ジュディ。」

「ん?」


ネルが、俺を見る。

……次は、こっちの番か。


「君は、具体的にどうするつもりなんだ?」

「……あぁ。」


三人を見る。


ネル。カイラ。サヤ。


俺が、一人で悩んでいる間に。

三人は、自分たちのできることを全部進めてくれた。


俺も、俺が生きるために。

自分で、できることをやらないとな。


「アーヴィンを拘束する。」

「……は?」

「そのために、アッシュガードに突っ込む。」


「「「……。」」」


沈黙が、落ちた。

あ、気まずい。


ネルが、口を開いた。


「……え、終わり?」

「あぁ。以上だ。」

「作戦って、それだけ?」

「それだけ。」

「……あ、待って。あ、頭痛い。頭痛い。」

「頭痛薬、持ってくるか?」

「比喩だよ。バカ。」


ネルが、額に手を当てる。


「本当に、バカなんだな。君は。」

「さっきから、何度も聞いてるけど。」

「いや、これは別件のバカだ。亜種バカだね。」

「……バカに種類あんのか?」


カイラとサヤが、横で笑う。


「んはは!なんか言いたいことは分かるわ。」

「あはは。ジュディの場合、なんかちょっとズレたバカなんだよね。」

「……二人とも、後でしっかり話そうね。」


ネルが、ため息を吐く。


「さっきの、メッセージ。」

「ん?」

「あんな文面にしたのも、意味があったわけだ?」

「あぁ。ムカつくだろ?」

「……だから、本人が来る可能性も上がる、と?」

「まぁ。元々来る可能性は高かったけど、念押しでさ。」

「……バ、バカっぽぉ~~~!!!」


ネルが、凄い顔してる。

あ、マジで引いてるよ。これ。


「……ロイドに送った意味も、あるんだよねぇ?」

「もちろん。あいつは、ジョーカーだ。」

「……ジョーカー?」

「あいつの狙いも、エミリだろ?いい感じに、かき乱してくれそうじゃん。」

「……バカすぎて面白くなってきた。」

「……そりゃ、どうも。」


ネルが、こめかみをぐりぐりと指で抑えた。

……相当キテるな。これ。


「……で?どうやって捕まえるのぉ?」

「あー、そこは。」


画面を、見る。


アーヴィン・ロックウェル。

軍勢の中を歩く、白髪の男。


「高速魔術で、一点突破だな。」

「……で?」

「後は……。アーヴィンに接触してから、考える。」

「ほら、亜種バカだ。」

「うるさいよ。」


やること自体は、シンプルだ。

後は、正直出たとこ勝負。


「アーヴィンは、俺の上書きを止められる。」

「……うん。エミリの交換条件として提示してきたくらいだしね。」

「でも。あいつの条件は、こっちは飲めない。」

「そうだね。だから、今の状況な訳だしぃ。」

「ならよ。」


俺は、笑った。


「交渉条件を、変えちまえばいい。」

「……あ、嫌な予感する。」

「アーヴィンを拘束して、頭に銃口突きつける。」

「……。」

「んで、一言。こういえばいい。」


指で、銃の形を作る。

その銃口を、画面のアーヴィンへ向けた。



「死にたくねぇなら、俺の上書きを止めろ。ってな。」



また、沈黙が落ちた。

ネルが、ゆっくりと口を開く。


「……脅迫じゃん。」

「いんや?立派な交渉だろ。」

「……どこが?」

「条件提示してんだろ?」

「命を天秤に乗せてる時点で、脅迫だろぉ!?」

「……いや、向こうの条件も同じようなもんだったじゃん?」

「あぁ!!!このバカ、開き直りやがった!!」

「っは。散々悩まされたんだ。このままじゃフェアじゃねぇだろ。」


カイラが、困ったように笑う。


「……ジュディ。悪い顔してるよ?」

「生きるためだからな。文字通り、必死だよ。」


そう、生きるためだ。

エミリを生かして、俺も生きる。


そのためなら、なりふり構ってらんねぇよ。


「生きたいなら、なんて。ふざけた条件出してきたんだ。」

「……。」

「なら今度は、こっちが突きつけてやるよ。」


俺は、俺を諦めない。

それだけだ。


「生きてぇなら、テメェはどうすんだってな。」




—




「よし。じゃあ——」


ネルが、端末を閉じる。


「最後に、担当確認ね。」

「あぁ。」


ネルが、サヤを見る。


「サヤ。」

「ん。」

「外部との通信を継続。政府、アルカナ、ギルド。援軍の状況を随時共有。」

「了解。」


次に、カイラを見た。


「カイラ。」

「はい!」

「監視室。防壁、楔、監視カメラ。戦場全体を見て、各員へ情報共有。」

「はい。」

「外から戻る人間の通行許可も君の担当だから。」

「任せて。」


次に、ネルは親指で自身を指さした。


「私は、エミリ。」

「……。」

「レガシーコードを、最短で起動して完了させる。」


ネルが、俺を見る。


「それと……。」

「ん?」

「君を生かす方法も、諦めない。」

「……あぁ。」

「レガシーコードの処置が終わり次第、ジュディのバックアップに入るから。」

「はは。了解。」


最後に。

ネルは、俺を見つめた。


「……ジュディ。」

「はい。」

「アーヴィンを、拘束。全然全く納得してないけど。」

「……えぇ。まぁ、はい。了解っす。」

「確認だけど、怪我したらどうする?」

「防壁の中に撤退する。」

「少しの怪我でも撤退だからね?」

「はいはい。分かってるって。」

「『はい』は一回。」

「……はい。」

「よろしい。」


……お前は、俺のオカンかよ。


「戻る時は?」

「カイラに、通信だろ?」

「よし。」


ネルが、頷く。

……これで、全部だな。


「……。」


壁の画面を見る。

残りは、二十分。


「じゃ。」


俺は、立ち上がる。


「後は、二十分後だな。」

「うん。」


カイラも。サヤも。ネルも。

それぞれが、扉へと向かった。


「……あ。」


カイラが、突然声を上げた。


「待って。みんな。」

「ん?」


みんなが、足を止める。

カイラが、俺を見た。


「ねぇ。ジュディ。」

「何?」

「あれ、やりたい。」

「……あれ?」

「あの、掛け声。」

「……どれ?」

「ふふん。」


カイラが、大きく息を吸った。


そして。

笑いながら、言った。


「じゃあ!みんな——」

「……。」



「——それぞれの戦場で!!!」



一瞬、何のことか分からなかった。

でも、すぐに思い出した。


「あ~。」


……そうだ。


アッシュタウンで、分かれた時。


カイラが、自分の武器を持って。

自分の戦場へ向かった時。


俺が、言った言葉だ。


「……はは。」


笑いが、漏れた。


「ははは!いいな、それ!!」


ネルが笑う。

サヤも、笑った。


俺は、三人を見る。


ここから先は、みんな違う場所で戦う。

でも、一人じゃない。


なら。この言葉は合ってる。

ぴったりだ。


「せーの!!」


全員で、息を吸う。

全員で、声を上げた。



「それぞれの、戦場で!!!」


第二百三話、お読みいただきありがとうございます!


作戦会議でした。

……作戦会議というか、最後は脅迫でしたね。

バカっぽぉ~~。


次回、それぞれの戦場が開戦します。

ブクマやコメントをいただけると、援軍の到着が少し早くなります。

……まぁ、早くなってどうってことはないのですが。


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