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スペル・エラー ~娘が生まれるのに異世界へ召喚されたので、何があっても帰ります~  作者: とろたま愚鈍
第二部:第五章|アッシュタウン編

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第百七十三話「負け戦」

翌朝。

目を覚ますと、カイラがテーブルに突っ伏していた。


「……あっふ。」


欠伸をしながら、目を擦っている。


「カイラ。寝不足か?」

「んー。ちょっとね~。」

「昨日の夜、なんかやってたよな?」

「んー、ちょっとね~。」

「……。」


言う気は、ないみたいだな。

まぁ、いいか。


昨夜、俺たちが部屋に戻ってからも、カイラはずっと端末を触っていた。

何をしていたのかは、何となく想像がついた。


「カイラ。」

「ん。なぁに?」

「アーヴィンと話した情報は、共有するよ。何か交渉前に掴めるかもな?」

「……な、んで?」

「何が?」

「なんで、分かったの?」

「分かるよ。ずっと一緒にいたろ?」

「……。」


カイラが、少しだけ頬を膨らませた。


「……ずっるいなぁ。ジュディ。」

「え。別にズルじゃないだろ。情報共有くらい。」

「そうじゃない!もう、知らない!」


……理不尽かよ。

帰ったら、ゆっくり話し合おう。


「じゃあ、行ってくるわ。」

「うん。」

「昼までには戻ると思う。」

「……分かった。気をつけてね。」


カイラが、また端末へ視線を戻す。

今度は、欠伸を噛み殺しながら。

……いや寝ねぇのかよ。


ネルと二人で、アッシュガードの拠点へと出かけた。




—




アッシュガードの本拠地は、大きなホテルだった。


元々宿泊施設として使われていた建物を、そのまま拠点として改造しているらしい。

外観こそ古いが、入口には何人ものアッシュガードが立っている。


入口に向かう途中で、ネルが口を開いた。


「さてぇ。ジュディ~?」

「ん?」

「正直ぃ、今回の交渉はどうなるか読めないねぇ?」

「あぁ。向こうの狙いも、こっちの狙いも全部は見えてねぇからな。」

「先に、言っておくねぇ?」

「……何。」


ネルが、人差し指を立てる。


「本来ねぇ?私はこういうの、得意な方なんだよぉ~。」

「……。」


……そうは見えねぇけどなぁ。


でも、納得はできた。

ネルは、人の考えを読むのが得意だ。


目線。声。呼吸。指先。


俺には分からないような細かい挙動から、相手の考えを平然と拾ってくる。

それを交渉に使えば、そりゃ強いだろう。


「でもねぇ。アーヴィンは別ぅ~。」

「別?」

「うん。この間の通話で分かった。」

「……思考が、読めないってことか?」

「そぉ~。ドンズバぁ。挙動が最低限すぎてぇ、読みづらい~。」

「……ドンズバって。」

「あっは!凪って感じぃ~。」

「……凪、ね。」


随分と穏やかな表現だな。


「まぁ、大丈夫だろ。元々頼るつもりもなかったしな。」

「ん。そうなのぉ~?」

「俺も、こういうのは得意な方だからさ。」

「よぉ!ジュディ!か~っくいぃ~~!!」


リオの顔で、クネクネすんなよ。

違和感がすげぇ。




—




入口についたところで、向かいから声がした。


「……お待ちしておりました。」


姿勢の良い一人の男が、こちらへ歩いてくる。


研究員だろうか。

身にまとっている白衣が整っている。

昨日街で見たアッシュガードの連中とは、少し雰囲気が違った。


男が、俺たちの前で足を止める。


「お初にお目にかかります。ショーン・プライドと申します。」

「どうも。キムラ・ジュディです。」

「初めまして。リオ・サーンと申します。本日は、お招きいただきありがとうございます。」


……ひぇ。

中身がネルだと知ってると、違和感やべぇな。


「これは、ご丁寧に。どうぞ、こちらです。」


ショーンの案内で、建物の中へ入る。


ホテルだった名残は、まだ残っていた。

広いロビー。長い廊下。


ただ、客室だった場所の多くは扉が取り外され、事務室や倉庫として使われている。


「……一つ、よろしいでしょうか?」


隣を歩いていたネルが、口を開いた。


「えぇ。なんでしょうか。」

「昨日、街を歩かせていただきました。」

「えぇ。存じております。」

「その際、少し気になるものを見まして。」

「……気になるもの?」

「麻薬です。」


ショーンの足が、僅かに緩んだ。

……どうやら、心当たりはあるらしいな。


「街に、麻薬が流行しているようですね。」

「……えぇ。困ったものです。一体どこから流通しているのやら。」

「詳細は、ご存知でないと?」

「あなたは、何かご存知なのですか?」

「えぇ。私も研究者の端くれですので。」


ネルは、柔らかく笑った。

……思わず吹き出しそうになる。


わ、笑うな。笑うなよ。俺。


「一年前にカルディアで流行した、パフパラであることは分かっています。」

「……そうですか。ならば、その危険性もご存知でしょう?」

「えぇ。何か、手は打っているのですか?」

「もちろんです。このまま、野放しにするわけにはいきませんから。」

「……そうですか。」


たった、それだけ。

ネルは、それ以上何も聞かなかった。


ショーンも何事もなかったように、再び歩き出す。

横目で、ネルの様子を伺う。


ネルは、ただ前だけを見ていた。

……何か、分かったんだろうか。




—




案内されたのは、ホテルの一室だった。

まぁ、この場所は全部ホテルの一室なんだろうけど。


元々は大人数用の客室だったのかもしれない。

ベッドや家具は全て撤去され、中央に大きな机が置かれている。


その奥に、アーヴィン・ロックウェルが、座っていた。


右手には、ショーン。


そして左手には……仮面の、男。


得体が、知れない。

随分怪しい奴を、傍に置いてんだな。


「ようこそ。キムラ・ジュディ。」


アーヴィンが、穏やかに笑った。


「昨日は、よく眠れたかな?」

「……あぁ。お陰様で。」

「それは良かった。」

「随分、大盤振る舞いだったな。あの宿は。」

「……そうかい?」

「外と比べて、綺麗すぎんだろ。」

「大事な客だ。丁重に扱うのは当然だろう。」

「……それをする余裕があるなら、もうちょい街にも目を向けた方がいいんじゃねーか?」

「はは。これはこれは。手厳しいな。」


アーヴィンが、肩を竦める。


「これでも、全力でやっているよ。」

「……そっすか。」


昨日見た街を思い出す。

少なくとも、何もしていないわけではない。


「座りたまえ。」

「あぁ。」


リオと並んで、アーヴィンの向かいへ腰を下ろす。

机の上には、既に茶が用意されていた。


「さて。改めて君には礼を言おう。」

「……礼?」

「ハピレスの件だ。助かったよ。」

「別に、あんたらのためにやったんじゃねーけどな。」

「理由は関係ない。事実として、我々は助かった。受け取ってくれたまえ。」

「いいけどよ……。あんたら、取引してたんじゃねーのか?」

「取引相手と友人は、同義ではないよ。」

「んだよ。冷たい社会だね。若者が嫌がるぜ?」

「企業社会にいる君が言うのかね?」

「……ごもっとも。」


アーヴィンが、小さく笑った。

思ってたより、普通に話せる。


「まぁ、いいか。別に雑談しに来たわけじゃねーしな。」

「私としては、このままティータイムと洒落込んでも構わないがね。」

「……なんだよ。意外と茶目っ気あんだな。」

「メリハリは大事だろう?」


アーヴィンが、茶を一口飲む。


「とはいえ。君が望むのなら、本題に入ろうか。」

「あぁ。」


少しだけ、姿勢を直す。


「まず、こっちから質問していいか?」

「あぁ。構わないよ。」

「俺を、直接ここに呼んだ理由はなんだ?まさか、礼を言うためだけってわけじゃねーだろ?」

「あぁ。そうだね。」


アーヴィンが、俺を見る。

さっきまでと、何も変わらない。笑っている。


ただ。

何となく、俺の中の何かを見られている感じがした。


「本来なら、こちらから出向きたいところだったのだが。今は色々と立て込んでいてね。」

「……いいって、そういうの。理由をさっさと言ってくれ。」

「確かめたかったんだよ。」

「……何をだよ。」


アーヴィンが、少しだけ目を細める。


「ジュディ。君はもう、大分混じっているね。」

「……。」


一瞬、意味が分からなかった。


「見た限りだと、残り四……。」


アーヴィンが、俺の顔を見る。


「いや。三割かな?」

「……何の、話だよ?」

「アルト・フェルンに置き換わるまで、残り二十日といったところか。」

「……あ?」


思わず、声が漏れた。


隣を見る。

ネルも、僅かに目を見開いている。


そんな俺を見て、アーヴィンが笑った。


「意外、という顔をしたね。」

「……そりゃあな。」

「私は魔法使いだ。」

「……。」

「エルナ・クロイツよりも、熟練のね。」

「……なるほどね。」

「何がだい?」

「そこまで知ってるんなら、話は早いな。」


椅子へ、深く座り直す。


「あんた。こっちの狙いは、もう分かってんだろ?」

「もちろん。」


即答だった。


「その同一化。解決してほしいんだろう?」

「……。」


……やっぱりか。

ただ、それだとまだ『浅い』な。


「おや。違うのかね?」

「いや。ちょっと前までは、それで万事解決だったんだけどなぁ。」

「……ほう?つまり、目的は別……。」

「……。」

「いや、目的が増えているな?」


アーヴィンが、楽しそうに俺を見る。


「改めて。こっちの頼みを、聞いてくれるか?」

「良い。話してみたまえ。」


一度、息を吐く。


「エミリを、渡してほしい。」

「それはできない。」


……早ぇな。

さっきの回答よりも食い気味だった。


「……一応、理由聞いてもいいか?」

「彼女は、これから我々が始める事業の要だ。」

「事業?なんだよ。アッシュガードを企業にでもするつもりか?」

「あぁ。その通りだよ。街の復興には、企業の成立が不可欠だ。」

「……その事業って、何やんだよ。」

「それについては、午後に正式な席で発表するつもりだよ。」

「……なるほどね。」

「もう、気付いているみたいだね?」

「あぁ。昨日、MANAの役員と会ったしな。」

「……ほう。知り合いがいたのかな?」

「あぁ。企業化するなら、外と繋がる必要がある。事業が何なのかはわからねーが……。」

「……。」

「事業の内容を、午後に発表する。融資か、協力か。いや、先行販売の線もあるか?」

「はは。概ね、その通りだよ。」


……なるほどね。

アーヴィンは、隠そうともしなかった。


「……エミリ本人は、それを望んでんのか?」

「望んでいないどころか、知りもしていないよ。」

「……あ?」

「本人に伝えると、面倒なことになるからね。」

「……それを、是としていいと思ってんのか?」

「もちろん。思っていないさ。彼女は曲がりなりにも私と同じ魔法使いだ。」

「なら、せめて——」

「それでも、彼女は渡せない。」


声色は変わらない。

怒っているわけでも、俺を挑発しているわけでもない。


ただ、決まっている。

そういう言い方だった。


「ふぅ~。この件に関しては、並行線だな。」

「あぁ。別の希望なら、可能な限り応じよう。」

「なら、交渉だな。」

「ほう?何か、交渉できるものがあるのか?」

「……手札がないわけじゃねーよ。手ぶらじゃ来ないさ。」

「……言ってみたまえ。」

「バイオストーン。」


その名を聞くやいなや。

ほんの少し、アーヴィンの目が細くなった。


「……あんたら、今ちょっと気まずいんじゃねーか?」

「続けたまえ。」

「エミリは、バイオストーンから奪った。ハピレスの協力を得てな。」

「あぁ。そうだね。」

「あんたらの事業の詳細は、まだ分からねぇ。ただ、このまま企業にするってんなら、各企業とは穏便に行きてぇよな?」

「……ツテが、あるのか?」

「あぁ。」


一拍置く。

正直、この線は望み薄だけどな。


「ロイド・カーター。バイオストーンのエージェントだ。」

「……。」

「そいつに、正式な場として繋いでもいい。」

「……なるほど。」

「共同研究なんてーのも、いいんじゃねーか?」


アーヴィンが、顎に手を添える。

少しだけ考えるような素振りを見せた。


「……ふむ。」

「どうだ?悪い話じゃねーだろ?」

「実に、面白い提案だ。」

「なら——」

「だが、刺さらないね。」

「……まぁ。そうだよな。」


ネルが、俺を見る。

アーヴィンが笑った。


「始めから分かっていたね?」

「……まぁ。そりゃーな。」

「なら、何故言った?」

「エミリを強奪した時点で、バイオストーンと敵対することくらい計算に入れてんだろ?」

「その通り。」

「それでも、言わないよりはマシだ。」

「……。」

「言わなきゃゼロ。言ったとしても、こっちにデメリットはない。」


肩を竦める。


「少しでも付け入る隙が出来りゃ御の字だ。なら、言う価値はあんだろ?」

「……ふむ。」


アーヴィンが、少しだけ笑った。


「色々と、心得ているようだ。」

「よく言うぜ。刺さってねーんだろ?」

「はは。あぁ。刺さっていない。」


アーヴィンが、茶を飲む。


「却下だね。」

「……ですよねぇ。」


負けた。

少なくとも、この場で切れる札はもうない。




—




「おや。」


アーヴィンが、壁に掛けられた時計を見る。


「もう、こんな時間か。」

「……。」

「申し訳ないが、今日は予定が詰まっていてね。」

「まだ、話は終わってねーけど。」

「そう言わないでくれ。」


アーヴィンが、こちらを見る。


「協力したい気持ちはある。」

「……エミリは、譲ってくれねーのに?」

「それとこれとは別だよ。」

「……。」

「君の同一化を解決するということなら、いつでも行える。」

「……そんなさっくり、いいのかよ?」

「もちろん。タダというわけにはいかない。」


……ですよねぇ。

そんな上手い話があるわけないか。


「時間もないから、手短に伝えよう。」

「……あぁ。」

「世界のルールへの抵触は、魔法使いでもそれなりにリスクがある。」

「……。」

「それも、条件次第だがね。」

「なんだよ。ハピレス潰してやったろ?」

「はは。」


アーヴィンが笑う。


「集った蠅を落としてくれた程度では、少し重すぎるね。」

「……言ってくれるじゃねーか。」

「事実だろう?だから先ほど、礼を言ったじゃないか。」

「……結構大変だったんだけどな。」

「では改めて、礼を言おう。これで三つだ。よかったね。」


……こいつ。

やっぱ、ちょっと面白ぇな。


「じゃあ、何が条件だ?」

「簡単さ。」


アーヴィンが、指を一本立てる。


「君の同一化を解決するときに、こちらの研究員を観測要員として同席させてほしい。」

「……研究員?何のために?」

「それは、こちらの事情だよ。」

「……。」

「少なくとも、君に害を与えるつもりはない。約束しよう。」

「そういう問題じゃねーんだけどな。」

「では、考えておいてくれたまえ。」


アーヴィンが、立ち上がる。


「本来、私が君と話したかったことはこれだけだ。」

「……エミリの話は?」

「答えたはずだよ。渡さない。とね。」

「……。」


……駄目か。


「また後日、答えを聞こう。まだ二十日もある。ゆっくり考えたまえ。」

「……嫌なこと言うなよ。」

「あまり、そのことに関して自覚がないようだからね。念押しさ。」

「……。」

「アポイントは、直通回線で時間を指定してくれ。極力、調整しよう。」

「……随分、融通利かせてくれんだな。」

「言っただろう?」


アーヴィンが、また笑う。

会った時から、ずっと、胡散臭い笑顔だ。


「君は、大事な客だ。」

「……そりゃ、どうも。」


俺は、立ち上がる。


その時、一度だけ。

仮面の男と、目が合った。


「……。」


向こうは、何も言わない。

俺も、何も言わなかった。




—




本部を出る。

しばらく、ネルとは何も話さずに歩いた。


「……ジュディ。」

「ん?」

「何も、ないのか?」

「……あぁ。現状だと交渉に関してはお手上げだな。」

「違う。あと、二十日って。」

「……。」


あぁ、そっちか。


「ネ……リオから、前にも言われてたろ?」

「だから、分かってたって?」

「あぁ。長く見積もって、一ヶ月もないって。」

「……。」

「別に、今さら驚くことでも——」

「気に食わない。」

「……なんだよ。」


ネルが、足を止めた。

俺も、立ち止まる。


「ジュディ。」

「ん?」

「私は、気に食わない!!!」


声が、大きかった。

少し離れた人間が、こっちを見る。

ネルは、気にも留めていなかった。


「なんで、そんな普通なんだ?」

「……普通って。」

「あと、二十日なんだぞ!?お前、死ぬんだぞ!!」

「……。」

「分かってたから何だって言うんだ!?前から知ってたら、平気なのか!?」

「いや。そういうわけじゃ——」

「じゃあ、なんなんだ!!」


珍しく、言葉が荒れていた。


「……。」


俺だって、別にどうでもいいわけじゃない。

怖くないわけでもない。


「止める方法は、あるだろ?今だって、アーヴィンが出来るって言った。」

「……そういうことじゃ、ないだろ。」

「……。」

「……私は、君はあの場ですぐ頷くべきだったと思う。」

「それは、できねーだろ。エミリの問題が——」

「頷くべきなんだ!!!普通の人間は!!!」

「……。」


沈黙が、落ちた。

ネルが、肩を震わせている。

珍しく、呼吸が荒かった。


「……お前が、いるだろ?」

「……は?」

「俺は、天才の被験者だ。」

「……。」

「死にたくても、天才が死なせちゃくれねーだろ?」


ネルが、俺を見た。


「……そういうとこ。」

「あ?」

「そういうとこが、気に食わない。」

「……なんだよ、それ。」

「ば~~~か。」

「……天才に言われると、効くなぁ。」

「そんなこと、ない。」

「ん?」

「私も、バカなのかもなぁ。」


そう言って、ネルは空を仰いだ。

二人で、また歩き出した。




—




宿泊施設への帰路。

俺は、話した内容を端末にまとめながら歩いた。


「……リオ。」

「ん~?」

「……正直さ。さっきのどう思う?」

「うーん……。」

「……。」

「交渉じゃ、無理だねぇ。」

「……だよなぁ。」


予想はしていた。

していたけど、実際に全部弾かれるとそれなりに腹は立つ。


「もう、さ。エミリ、盗っちゃう~?」

「そんな物みてぇに……。」

「じゃあ、救出ぅ?」

「それなら。まぁ……。」

「厳密には、救出ですらないんだけどぉ~。」

「うっさ。」

「あっは!」


ネルが、笑った。


よかった。

いつもの調子に、戻ったみたいで。


「……あ。そうだぁ。もう一個あったぁ。」

「ん。何?」

「パフパラ。」

「……あぁ。」


ネルが、足を止める。

俺もつられて、足を止めた。


「何か、分かったのか?」

「うん。」


ネルが、さっきまでいた建物を見る。


「流しているのは、ショーンだ。間違いない。」

「話してて、分かったのか?」

「あっは!本人、だんまり決め込んだつもりでも。バレバレ。」


……やっぱ。

すげぇな、こいつ。


「……でも、なんで流してんだ?」

「さぁ?そこまでは、分からない。」

「……。」

「でもさぁ。」


ネルの声が、少しだけ低くなる。


「いい気は、しないよねぇ?」

「……あぁ。」


昨日の男を思い出す。


半分魔石になった死体。

その傍で、笑っていた男。


「ショーンも、調べてみるか?」

「うん~。まぁでも、大した研究者じゃ~なさそうだねぇ。」

「……そうなの?」

「私と比べたらねぇ?」

「……まぁ、そうか。」


再び、二人で歩き出した。


「……で。結局どうすんのぉ?」

「ん?」

「エミリだよぉ。」


交渉では、無理。

なら。まぁ。やるしかねーよな。


「……とりあえず。居場所、探すか。」

「盗るためにぃ?」

「救出、な?」

「細かぁ~。」


どこにいるのか。

まずは、そこからだ。


第百七十三話、お読みいただきありがとうございました!


あっさり、負けましたね。


一応、ジュディなりに手札は切ってみましたが。

アーヴィンには、あんまり刺さらなかったようです。


次はいよいよ、エルド&カイラの打ち合わせ。

こっちは勝てるのでしょうか?


レディ~。ファイ!!


次回も20:10、更新予定です!

ブクマやコメントをいただけると、ジュディの交渉カードが一枚増えます。

よろしくお願いします!


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