FILE 04 幾ら何でも異常行動が過ぎる
「五十木さ、いや五十木警部。また新しい転落者が出たというのは本当ですか?」
電話の後、すぐに車を降りて五十木警部の元へ駆けつける飯酒盃とルシアの2人。
「ええ。残念ながらそのようです。まさか短期間に3名も転落者が出るとは……」
五十木警部はそう残念そうに言う。
「えっと。その。これも例の熱病のせいなのでショウカ……?」
車内で一通りの概要を聞いていたが、それでもそのような疑念が出てしまうルシア。
「はい。現在裏付けをしていますが、まず間違いないかと」
「子供が2人も謎の転落死亡事故を起こしてるマンション団地で飛び降り自殺するってのは考えにくい」
五十木と飯酒盃はそう断言する。
「団地内はもう軽くパニック状態で、各メディアがこぞってここを目指しているようです」
沢口はそう困り顔で言う。
「事件だけでなくマスコミや週刊誌の記者達により、平穏な市民生活が脅かされてしまいます。事態解決の糸口を得る為にも、特監の協力が不可欠です。よろしくお願いします」
五十木の言葉に2人は姿勢を正す思いであった。
「それで……被害者に関する情報は?」
「丁度、今しがた被害者女性に関する情報が集まったところでした」
飯酒盃の言葉に、五十木警部はそのように答えた。
「被害者の女性の名前は、摺丘真理38歳。独身。数年前から在宅勤務で、この数日間は高熱が出て自宅療養を行っていた様でした」
聞き込みを担当した沢口はそのように説明を行う。
「数日間……という事はその真理さんは噴水の水を触っていない?」
沢口の言葉にそう確認を行う飯酒盃。
「はい、それどころか噴水に近づいてすらいないようです」
補足を行う五十木。
「そうなると……振り出しに戻る……か?」
うむむ。と唸りながら頭を軽く掻く飯酒盃。
「それで、そのスリオカさんはどのような状態で発見されたのデスカ?」
ルシアはそう五十木に尋ねる。
「真理さんは今朝、住んでいたマンション屋上から地上へ落下したらしく、付近をランニングしていた住民に発見されて搬送されましたが搬送先で死亡が確認され、現在法医解剖が行われています」
五十木が情報を整理するように話す。
「まぁ3回目の転落死でどう考えても変死の分類だから法医解剖……だよな」
飯酒盃はまぁ当然よな……と納得するように言う。
「しかし、今回は屋上床ではなく、地面に落下。デスカ……」
「……今回も鉄塔なんですか? というか、流石に2件も落下事件が起きてるのなら流石に屋上は施錠したんじゃ?」
飯酒盃は五十木に尋ねる。
「はい。それがですね……今回は成人という事もあり、扉を自分で破壊して侵入した様なのです」
五十木は額に汗を浮かべ、そう言った。
「え? 扉を破壊???」
ちょっと待て行動力が高すぎないか!? と飯酒盃は思わず言ってしまう。
「屋上に被害者の所有物である小型のハンマー……金槌があり、扉のガラスを破って鍵を開けて屋上へ侵入し、フェンスをよじ登って鉄塔へたどり着いてそのまま鉄塔を登り、天辺まで登るも足を滑らせて落下。屋上の縁に足をぶつけるなどして地上に落下。搬送時には既に呼吸が停止した状態だった。との事です」
五十木は、自らが書いたメモを読み上げて説明を行う。
「そ、そこまでして高い所ヘ……すごい執着デス……」
「幾ら何でも異常行動が過ぎる……」
あまりの異常性の高い死に、思わずドン引きするルシアと、頭を掻くしかない飯酒盃。
「あの、その人は高い熱が出ていたとされていマスガ、医者はどのような診断ヲ?」
黙って聞いていたルシアが口を開く。
「そうだ。担当した医者の診断は? まだ調査中ですか?」
気を取り直し、質問をする飯酒盃。
「それがですね……現在調査中ではあるのですが……どうやら彼女は診療機関を利用した形跡がないのです」
「「診療機関を利用した形跡が、ない????」」
五十木の言葉に、2人の声が揃う。
声だけではない。顔の表情も素っ頓狂な表情で、それはもう間抜けと言うほかない、見事な顔であったという。
『受診記録がない。というのは、つまりどういう事でしょうか』
「そうです。何故医者に掛かってないという事が、いやそもそもなんで高熱が出ているのか分かったんですか?」
余りの謎により思わず母国語が出るルシアに、相槌を打つ飯酒盃。
「それに関しては……沢口くん。お願いします」
これに関しては私はちょっと……と小声で言いながら沢口に託す五十木。
「はい。それらに関してはですね。つまり被害者女性のPCやスマホのデータ……というかSNSやアカウントに全て書かれていました」
託された沢口はそのように説明を行う。
「そうか。今はSNSがあるのか」
合点が言ったように頷く飯酒盃。
「ええ。幾つかのSNSにおいて日記のように記録を残していたので、助かりました」
「それで……内容トハ……?」
沢口にそう尋ねるルシア。
「摺丘真理。SNSの調査により彼女はいわゆる自然派と言われる化学医療を使わずにオーガニックや民間療法を好む層の人間でした」
「「あ~……」」
沢口の言葉に飯酒盃とルシアはそんな気の抜けた声を出してしまう。
「ご存じのようですね」
「ええ。まぁ。これでも厚生労働省の人間なもんで……色々と悪い話は絶えないので……はい」
「……そうですよね……アメリカでもドラマで取り上げられたりしますノデ……」
五十木の言葉に、そのように苦い思い出を話すかのように語る二人。
「苦労しますねぇ……我々警察も詐欺行為を含んでいる場合もあるので、あまり良い感情を持っていないのです……」
2人の言葉に、唸るように言う五十木。
「えっとですね。それでその、SNSの書き込みにより数日前から39度の高い熱が出ていて、眼痛の訴えがあったようです」
なんか3人で自然派感じ悪いよねみたいな雰囲気が唐突に漂って戸惑う沢口だが気を取り直して報告を行う。
「眼痛か……やはり今までの熱病であると思って間違いないようだが……」
「問題はこの人は噴水の水に触れていないという事デス……」
飯酒盃の言葉にルシアはそのように言う。
「この人の部屋って見れますか?」
ふとある事を思いつく飯酒盃。
「ええ。ぜひ見て欲しい所ではあるのですが……」
そのように肯定的に答える五十木であったが、まだ部屋の撮影が終わってない様子であった。
「五十木警部。部屋の撮影終わったそうなんで調査して良いとの事です」
沢口は部下からの無線でそう告げる。
「ふむ、では案内します」
五十木はそのように承諾し、案内を行う。
「どう思う? 今回の犯人は何だと思う?」
移動中、飯酒盃はルシアに尋ねる。
「うーん。当初は振り出しに戻ったと思ったのデスガ……」
考えながら歩くルシア。
「やはり行動の異常性からして寄生虫デショウ。後は感染方法が問題デスガ……それにはやはり部屋を見ないとデスネ……」
「まぁそうだな……」
ルシアの言葉にうなづく飯酒盃。
かくして4人は摺丘真理への部屋へ到着するのであった。
続く。
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続きは3日後の4月4日頃を予定しています。




