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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
無謀で勇敢な者に一欠片の自由を
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木の葉舞い散る月夜に何想う

 平然を装っているけど魔眼による歪みで傷を一か所に留めて収縮して何とかしている感じだから確実に攻撃は通っている、着実に叩く。今まで以上に魔剣に備わっている魔力を全面に出して攻撃し始めた、手数として用意しておいた紅葉は集中的に弾かれ始めたがそれまでの攻撃に比べたらだいぶ遅くなったことは明白だった。


「【夕陽】」


「殺す気で来ているんだ、当然の事…【舞風】!」


 老い耄れの剣先が一瞬読み取れなくなり危うかったが身体全身を覆い尽くす風が攻撃を受け止め反撃に赴くが息をつく間もなく懐に入り込み振り上げられた二振りの斬撃を【舞風】によって吹き上げられた木の葉が攻撃を受け止める。目潰し…『天授眼』でも効果が通り抜ける所から剣技の類なのだろう、魔法が大事とか考え捨てて剣術にも力入れていれば対処法を少なからず見つけ出せたのかもしれないがまたアイツに会える機会があれば徹底的に聞き出す。


 攻撃としては全く機能を示さない【舞風】だが次の攻撃に割って入り込める点では『秋風』としての強みを引き出せる、勝手に懐に入り込むことも考慮して【鱗雲】を吐き出し老い耄れに近い所から一斉に【秋霖】に置き換え意図的に破裂させる。


「【仇寇】」


「剣闘流か…『茜雲』に対抗するための反撃方法にしては随分と大袈裟だが面白い」


 さっきから上から目線なのがより一層苛立ちを焚き付けるのだが『茜雲』を振るっていた手を狙って『秋風』を突き、【傍観者】を付与させた一部分の【谿紅葉】を背後に回したが的確に弾き、歪ませ魔剣を振るわせ『虚飾』が放った魔法を避けると『蒼然』の魔力が一瞬膨れ上がったと思ったら【鱗雲】を足場にして走り始めた。


(身動きが出来ないように魔法を詰め込んだのに何だあれ…【秋霖】にする準備は完璧にしていたのに全部無視しやがった)


『こちらが陽動をする、予想外な動きをしようとお前は己を突き通せ』


 器用に走りながらこちらに刃を振るおうと試みる姿に驚きが隠せないがここで【鱗雲】を【秋霖】に書き換えたとしても大した攻撃にはならなそうだし使うなら最後の最後だ。『虚飾』の魔法が放たれたのを防ぎ切った所を狙うが警戒しているのか間合い以上に風によって舞い上げられた【谿紅葉】を集中的に火を撒き散らし何も寄せ付けない動きを一貫して貫き通し始め巧みにカタナを振るい合間縫うようにして伸ばした攻撃に【鱗雲】を盾として代用して難を逃れる。


 丁度良く互いの姿が視えなくなる壁となった【鱗雲】に隠れながらも存在感を隠しきれていない二振りの魔剣の魔力を追いながら並行して走っているのは微かに聞こえる足音を辿って『秋風』を構えた途端走っている俺の首に合わせて刃が突き出すが【水球】により攻撃を受け流す。こっちも攻撃をするべきか考えていると右側に老い耄れとの隔たりとして機能している【鱗雲】の向こうから今までの戦闘じゃ考えられない位の魔力を感じられた。


「【蒼狗】」


 小さく呟かれた魔法はそれまで不動を互いを牽制し合っていた両者を再び戦闘の渦へと引き摺り込む魔法だった。雨を予告する為の布石でしかない【鱗雲】は魔剣の火であろうと臆さず声無くとも魔力の繊細な配分を感じ取れば一瞬にでも相手を穿つ為の手掛かりへと成り代わる。


 それほど他の魔法に一定以上の耐性があるが老い耄れが手にする『蒼然』から現れた魔法は魔物から感じられる特有の不安定な物だったが【鱗雲】と俺諸共喰らおうとしたが魔力の溜めもあり警戒していたのが功を為したこともあり攻撃は防げた。


 顕現した狗の頭が空間内に遠吠えが響き渡るとあれだけ敷き詰められていた【鱗雲】が吹き飛ばし地面に積もった紅葉が高々と舞い上がる。一瞬身体が強張った途端瞬時に繰り出される老い耄れの魔法を思い通りにならない身体に腹を立たせながらその場凌ぎとして舞った紅葉を引き寄せて盾として身に押し寄せる危険を押し返して二度目の攻撃が無いか警戒しながらその場から遠ざかる。


 後退しながらも連撃が存在しない事に安堵しながらも空気に溶け込むように軽やかな身のこなしで音も無く近づいて二本の魔剣で挟み込むように交差させ着実に攻撃を重ねて来るがこちらも負けてられない。【月夜の静寂】が解かれるまで永遠と舞い落ち続ける【谿紅葉】を起点に『秋風』を割り込ませながら危険な『茜雲』を優先に攻撃を弾きながら【鱗雲】を老い耄れの視界に重ねて妨害を行う


 【傍観者】を全身に付与させて違反(ペナルティー)覚悟で【鱗雲】を掻き分け右手に力強く握り締める『秋風』を構え横に薙ぐ。これでもかと厚くしておいた【鱗雲】を断ち切る先に現れた餌として飛び込んでくる存在を待ち侘び、口を大きく開けていた蛇を断ち切り次の一手に動いていた老い耄れに向かって走りそのままの流れで振るい切るが視界を塗り潰す紅い一閃が俺の右腕を捉えそのまま次に狙う先はその魔眼に映るのは残った()()だろ?


「な……!」


「月夜の光はやっぱり老い耄れには薄暗くて眼元が眩んだか!?」


 老い耄れからしたら斬った筈の右腕が宙に舞って攻撃の手筈は一つも無く同じように止めを刺せる…それで騙されたから用心深くもう片方も斬り落とそうとした筈だ。だが、奴が持つ『茜雲』から放った一閃で斬り飛ばしたのは紛れもなく『秋風』の持っていない左腕だった。


 【傍観者(ヘイベージ)】は『虚飾』が生み出す魔力と誓約者の魔力を互いに衝突させた瞬間に起きる魔法の出来損ないを強調することにより魔力が消費されているけど魔法として成立していない状況に持ち込む。魔力を全て認知することが可能な魔眼と身体に刻まれたその者の肉体が意図的にそこだけを浮き彫りにしていて違和感を生み出し魔法の出来損ないを認識させ看破できる仕組みなのだ。


 だから奴は魔眼が魔法として認識が出来る【鱗雲】を視界に埋め尽くしておいて極限まで違和感を払拭し、左腕に【傍観者】を施してあたかも右手に視えさせるように仕向ける準備をしていた所に自らが放った【蛇】が丁度良く腕を騙す材料になってくれて老い耄れには『秋風』を握り締めた右腕が視えているのにも関わらずこっちは何も持っていない左腕が斬り飛ばされたのだ。


 【傍観者】が施されている中攻撃されると違反(ペナルティー)として賢者の石の『虚飾』からの魔力供給が数分断たれるがそれが無くとも『天授眼』と持ち前の魔力で埋め合わせすることが可能であるから特段追い詰められるような物じゃない。


 眼を見開きながらも、追い詰められようと攻撃を受けようと最小限に抑え込もうと老い耄れは回避行動に思考を回したが狙っているのはお前を際限なく攻撃の手を払拭し続ける『蒼然』の排除だ。契約魔法である確証がある為完全に跡形も無く破壊するのは無理に等しいから身を挺して老い耄れの攻撃を受け止め、『秋風』を振るった攻撃は『蒼然』の持つ老い耄れの腕を素早く斬り捨て、落ちた自分の左腕を拾ってその場から逃げるように立ち去る。


 背後を見ながらポトリと落ちた『蒼然』から何度も斬撃がこれでもかと憎しみを吐き出すように放たれるのを【鱗雲】で防ぎ切りながら拾った左腕を切断された箇所に近づけ【神々の祝福】を施し無事接合したのを見ながら再び攻撃をしてくるのではないかと警戒をしていると老い耄れは斬り捨てられた腕を視ながら立ち尽くしていた。


「成程…情けなくもまた【神子】の術中に貶められていたのか」


「俺の…と言われると語弊があるけどな」


「変わらぬ、用意された手札を戦いの場に紛れ込ませるのは賢者の石だろうと『天授眼』の仕業だろうとそれを扱う【神子】本人の意志が企てたからこそのこの結果だ」


「して、【神子】よ。『蒼然』をこの手から落とし同じように断ち切った傷跡に微かに紛れ込んだ儂にとって忌々しい真紅の葉で足りると思ったか?何事にも確実さを追い求めなければそれが敗因と繋がる事は数え切れぬほどある」


 片手に握られていた真っ赤に染まった『茜雲』がゆらゆらと溢れ出る魔力を絶えず糧に燃え盛る燈火として沸々と剣を炙り続けていた。その最中、戦闘中であろうと腰を折りゆっくりと座りながら掬う様に腕を歪曲の魔眼で繋げたようにしていたが眼には接合部分を重ねるようにして歪みを使っていたりとその魔眼だからできる荒業を眼の前でやってみせた。


『この老い耄れならやり兼ねないと思っていたが…色々と頭がぶっ飛んでいないと出来ない曲芸だが実際削ぎ落した左腕と右腕を比べてみればそれまでの動きからして扱いに難儀しているな』


「それでも防御は捨てたんだろ、『秋風(コイツ)』の本領が発揮できない位に邪魔だったんだ。今の言葉を聞いて防御を固めるなら今までの戦いを視てきた俺の『天授眼』は節穴って事になるが…どうだ?」


 この眼で視てきたコイツの戦闘とは何か…それを十分理解したつもりだが老い耄れは『剣透』はどう動く?吐き捨てた言葉を聞いて奴は驚きの顔を一瞬してすぐに理解したのかケラケラと笑っていた。奴は言葉を言わずとも両手に携える『茜雲』と『蒼然』を構え、戦い始めて少しした時に言ったあの言葉を思い出し口元が少し緩む。


『性根が腐ったお前に渇を入れる為に相手も全身全霊で来るみたいだな』


(言葉に飾りは必要ないし『虚飾』なんていう奴が俺の所に来るくらいだし実際はお前の性根を正すの間違いでは?)


『この後生きていたら詰まらない話の続きをしようじゃないか』


 老い耄れはどんな契約を結んだのか分からないがそれまで二本の魔剣から感じていた魔力がより強大に膨れ上がりそれに呼応するように再び存在感を俺の眼に刻みつける。『虚飾』の言う通り相手は本気みたいだけどこっちは戦ってからあの手この手と必死にやっていたんだが満足できるような物ではなかったみたいだ。


 『秋風』に魔力を注ぎながら永遠と舞い落ち続ける【谿紅葉】の量を倍に増やし【鱗雲】を足元を覆い被さる程度の高さで領域内を埋め尽くしておいて一歩前に足を前に出した時には『蒼然』から放たれた一閃の剣技を避け大地を踏み締めながら次に振られる火の燈った魔剣を受け流し薙ぎ払うが手応え無しか


「【晩陽】」


 舞い上がらせた紅葉を吹き込み相手の視線を紛らわせた瞬間を狙って放たれた無数の斬撃を日の明るみが姿が消えかけ移り変わるようにしてこの場の主役たる存在に出番を急かす。呼吸を整えながら迫り来る斬撃を織り交ぜながら空間に再びの夜が押し寄せる、肉を裂きに断ち切りに迫る刀身は今では轟々と光り輝き二回目の決着を勝利の二文字を今か今かと掴み寄ろうと老い耄れの眼が光った。


「『巡る夜に特異なる一時は誰もが魅入る』」


「『この静寂に一筋の喝采を』」


 言の葉が暗みがかる夜の中、刀剣が互いにぶつかり合う最中ポツリと唱えられた。広く、長いこの()を知らぬ若者が今初めて真っ暗で奥深い暗闇に希望に満ち溢れた一筋の光が注ぎ込まれる。


「【十五夜】」


「【丹碧】」


 真っ黒で何も視えない夜に(いろどり)は不要…紛れる価値無し、ただ世が求むのは希望と同価値の月の光のみ。一筋の月日が照らしたのはぽっかりと老い耄れの身体に空いた穴一つ、忽ち再び月日は雲が覆い被さり闇夜が続く。


「見事、まだ儂が歩むべき道が視えた」


「いい勉強になったよ『剣透』」


 背の向こうから微かに聞こえる老い耄れの堂々とした言葉を最後に【月夜の静寂】を解き星々の輝く夜空を見上げる。


「残念、今は月に雲がかかって視えそうにないや」

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