絶えず歩み続ける者
どこで仕留め損ねた?大体の蟻は核を削ったり斬りつけたりしたりと連続して倒し続けた瞬間はあったが確実さを優先したつもりなんだが結果として目の前で変化…魂喰蟻としての何らかの何かを捨ててその姿になった訳だからな一層の警戒は必要だがこっちには『空穿』がある。前傾姿勢を取りながら今も続く【飢えと代価】が途絶えるまでは永続して俺の支えになる。
「クルゥァア!」
「分かってる、お前も支えになってくれてるよ」
相棒のケアをしつつ相手には気取られないように、されど一歩でも動けばはち切れるような緊張感は互いをその場に引き留め続ける。深く深呼吸をする、息を吸い終わったら私怨が混じった碌でもない戦いが俺が望まなくとも始まることを感じ取りながら思うように手元に握っていた牙を前に差し向ける。衝突、間髪入れずに右足を横腹に捻じ込み手元から意図的に離した『空穿』を【淵明闘竜】に持たせ次の動きに移させる前に叩き殴って相手の反応を窺う。
攻撃は刺さったがこの余裕たっぷりの立ち姿、手元に自分に危害を与える獲物が存在しないことをいいことにいい気になって攻撃の姿勢を取って視界を潰す程の光が発せられるが大きく振り切って来た伸びに伸びた腕を俺の足元から生み出された槍や刃だけの武器としては成りかけの物が腕を貫き動きを止った腕を掴んで引っ張り殴り蹴りつける。
『???』
「手持ちがないお前等よりも弱い人間に殴られて何驚いてんだ!出し抜く為ならこれくらいしないと何十回も死んでるっての!」
何も出来ずに体勢が崩れた蟻の原型すらない魔人の動きを未来視の魔眼で先取りしつつ【淵明闘竜】が咥えていた『空穿』を手元に戻して敵の獲物に出来得る限り攻撃を行うが…殴り当てていた時もそうだが信じられない位全体を覆う装甲が女王並みに硬くさっき殴りつけた所も目立った跡はないが確実に蓄積してもらい所だが…
『空穿』を逆手に握り魔力回路よりもまずはこの装甲を突破する方法を考えないとだ、一撃で破壊できるような攻撃はあるにはあるが正真正銘の大技だから確実に仕留められる時にしか使いたくない。残った手段としては手数を限りなく増やしてただひたすらに攻撃し続けるという誰にでも分かるとても簡単な考え、戦法なのだが…
再び攻撃を仕掛けて胸のど真ん中に魔力が無くとも感じ取れるここに全てが詰まっていると言わんばかりのこいつ自身がこいつでいられる存在意義を示す魔物に必ずとして存在する物…憎い人間の姿になったとしても一応は捨てなかった物でもあるみたいだが高価な魔法道具や買ったばかりの新品の魔導書を丁寧に扱うように数ある内の攻撃の中、核だけを狙った数回しかない攻撃を狙い澄ましたように防ぎ切り体と同化しているのではないかと錯覚する魔剣に近い刃を巧みに動かし間合いを取って対抗してくる。
呼吸を挟み牽制として【淵明闘竜】が放った血魔法を軽々と受け流し深々と大地を踏み締めて向かってくる魔人が差し向けてきた顔面に減り込ませることを前提とした蟻野郎の右膝蹴りの体形になったのを眼で視て肉薄する寸前を狙い込み『空穿』と血の盾と変化した【淵明闘竜】で受け止め切りゴツゴツとした脹脛を掴み力み引き寄せて核を殴りつける。
「いい蹴りだ、自ら弱点を差し出してくれるんだからなぁ!」
『グガッ!?』
その反応とても分かりやすくて大いに助かる、弱点を変に見せつけずに戦ってきた奴が今まで戦った奴らが段違いに戦い慣れているから本当に嫌になるが目に見える形でハッキリするだけでこんなにも楽になるのは非常に助かる。怯んだ状態から復帰するまで時間が掛かると踏んで出来得る限り畳み掛けたいところだったが攻撃を振り切る為に頭を叩きつけようとしたのだか振り上げられた拳を『空穿』で弾くが先程まで奴の右手に持っていてこの右膝蹴りが来たから全く警戒していなかったがいつの間にか入れ替えていた奴の牙が左手で輝かしく光って追撃を試みた俺の首を刎ねようと滑らす。
動きの止まっている奴の右足を【淵明闘竜】に叩き付けさせて体勢を無理矢理動かして少しでも向けられた刃の位置をずらすように心掛け核に向けていた『空穿』を迫る刃で退かせると転ぶことを承知して無理矢理人の腹に足を押し付けて吹き飛ばされた。吹き飛ばされた先の瓦礫の山で体のあちこちに耐えがたい痛みを負うが【淵明闘竜】の治癒魔法でその場を押し切り体を押し潰そうとする瓦礫を斬り刻んで退かすと再び蹴り飛ばそうとする奴の姿がこの眼で捉えられた。
邪魔だと思って後先考えずに全部壊すのは駄目だな、瓦礫一個だけでどれだけ戦いの幅が広がったか…!蹴りを『空穿』を盾にして防ぎ後ろに下げられるが放たれた拳を避けながら間合いを詰めて気に入らない顔面に下手に近寄って来たままの慣性と加速の籠った拳を押し付けてやる、殴った時の音は聞き取れなかったがカウンターとして結びつけられた。
『離れろ……【裂花】』
次の一手に繋げる為に叩きつけようと試みると倒れかけていた姿から一瞬で立ち直ったのには少なからず驚きが隠せなかった。地面に着地する前に添えると瞬間的に刃を返し目の前で物凄い量に枝分かれをした斬撃が撫でるように身体を痛みつける、コイツ俺の技を真似しやがった?こいつに対しては使っていないのにどこで盗んだ?
頭で理解できなかったがさっきこいつが言っていた総意って言うのがもしも今も産み出される蟻共の視界を共有されているとするなら点と点が繋がるし納得はできるがこんな後出しは考えたくはないというか認めたくない。斬撃が易々と擦り削られ続けるがこれくらいで止まるほどじゃないからな『空穿』を握りながら今も俺の体をこれでもかと狙い続ける【裂空】を色々と手を加えた【裂花】を何も対処法を知らないジェバルとかに向けなかったのが間違いだったな
頼れる体でも斬撃の長さを弄って周りに広げてより広範囲に被害を出すことに重きを置いた物は流石に堪えるのにも限界がある、前に出て斬撃を抑え込んだ【淵明闘竜】が瓦礫に向かって息吹を吐き捨てて俺もそこに触れたようにしておく。蟻の動きを見極めながら的確にバツ印を描くように大きな【血刃】を放ち俺の防御に徹するため周りを泳ぐように漂う。
避ける必要が無いと考えたのか分からないが目立った動きを見せないのに多少の疑問が残るが放たれた【血刃】を受け流すとさっきよりも頑丈に重量感が増した剛脚が横腹に蹴り当てようと試みたようだが浮かせた片足を痛みを伴うことを承知で受け止めながら【淵明闘竜】が後押しのように体を張った体当たりで体幹を崩されてただ地面と衝突する直前に足掻くような攻撃をしない事を把握して核に『空穿』を差し込み魔力回路を壊そうと試みるが…
「何でもありだな、お前の核どこにやったんだよ」
『随分と呑気に立ち振る舞うな、段々動きに慣れてきた……ッ!』
核と思われていた分かりやすい箇所に差し込んだ刃が魔力回路があったら女王以上に攻撃を与えられると刺し切った時の感触からしたら確実的だったのだがそこにあった筈の魔力回路はどこかに消え去り斬り刻んだのはただの硬いだけのこいつにとっての皮膚みたいなものだった。ビクともしない両脚で首を掴まれて仰向けのまま地面へと衝突すると思ったが左腕を地面に埋め込んで体を起こしてそのまま身動きの取れない俺の頭を地面に叩きつけようとしてきた。
前に【淵明闘竜】の助力もあってロックしていた右脚を集中的に攻撃するよりも速く叩きつけられそうだったのを危惧して【招致の果物】を砕き保険として触れておいた瓦礫と自分を入れ替えて振り切れなかった攻撃から脱する、また奇妙な魔法のせいで…逃げられたと佇む蟻を見ながら徐々にだが対応され始めて来ているな…
「おい蟻野郎、核なんざ隠さず戦いに赴けよ」
『蟻野郎の名前は持ち合わせていない、私はただ女王を護る為に誕生した女王に仕えるたった一人の騎士“至福雄飛”だ』
「お前には勿体無いくらいの名前だが俺は気に食わないから蟻で十分だな」
『黙れ』
多分だが賢者の石はこういう進化に対する魔物の援助を惜しむ事なくしているだろうな、何かしらの切っ掛けを作り出してしまった自分もアレだがそんな些細な事で機会を渡し挑戦者の壁を増やすのに腹立たしいがこれも賢者の石が考えている筋書きなのだろうか…今更考えることでもないしいいか。
軽い挑発に乗ってくれた蟻が大振りの首を掠め取るような動きを見せたため『空穿』で立ち向かえようと構えたがそのまま前傾姿勢を取り続ける蟻は横振りを想起させた動きではなく地面を抉り取りながら粉砕して即興で図々しい巨体を粉塵を舞い上がらせて隠し、魔物が体を動かす原動力とも言える魔力を止めて完全にどこに攻撃を当てに来るか分からない状況を奴は持ってきた。
だが、それは相手も同様の事【淵明闘竜】も一時的に魔力回路に潜らせれば自分の場所も悟らせない事は可能だ。こんな重要な時に限って未来視の魔眼は役に立たないが長時間代償を払ったことによって齎された恩恵は確実に俺の身体能力を底上げさせつつある、微かな音を聴き取りゆっくりと晴れつつある粉塵を掻き分けて向けられた純粋な拳での攻撃は【血の権力者】と大差ない殺意を持たせていた。
魔力の供給を止めていた『空穿』に有り余るほどの魔力を注ぎ振り返りながら斬り刻んでやろうと考えながら刃を滑らして向けられていた攻撃を何とかしたのだが刃が腕へと昇り詰めた時に感触が消え失せたのだ。比喩でもない肩近くまでしかなかった腕だけの囮を斬りつけていたと分かった時には右腹を抉られる痛みが体を支配していた。
【淵明闘竜】が少しでも食い止めようと試みるが横腹に押し付けるようにして差し込まれた蟻が持っていた牙と表現したあの短剣だったものが今では剣と分類できるものまで伸びていた。その刃と触れた肉がひっくり返ったように削られながらも握られていた拳を蹴り飛ばして追撃を拒むことは少なからずできた、『空穿』に魔力を最大限に流し込ませて原因でもある刃に叩きつけて僅かだが『空穿』の刃が触れている物を悉く削り続ける【穿孔】を促し無数の亀裂を走らせることができた。
右腹から垂れる血を押し込んで塞ぎながら粉塵を吹き飛ばすと片腕がない蟻…至福雄飛の姿が現れる。上手い事操られていた、魔力がない状態なら対処できる、それまで溢れる殺意で何とかしようとしていたのを逆手にとってこっちに一撃を与えてきた。頭を冷やせさっきの攻撃だって拳に『空穿』を差し向けなくとも【淵明闘竜】で対処出来たはずだ、魔力で位置がバレた所で魔力を長々と押さえ込むことが出来ない魔物の特徴を理解して入れば背後に回られていても対処できた筈だった。
ここぞとばかりに仕掛けてくる至福雄飛に間合いを詰めて入り込むように素早く相手に気取られないように心掛けながら刃を振るう、無理に動いて傷口から血が溢れるがそれすらも利用して足元から無尽蔵に放たれる武器で攻撃を行うが魔力で修復された右腕で防がれ空いた剣を握る左腕を顔面に、肩に、負傷をしている腹に、圧倒的な機動力を持つ足に、全てを底上げする魔力回路に向かって刺し当てようとするが前傾を維持しながら低く相手の懐に潜り込んで貫手を左腕に差し込んで動きを止まった所を【招致の果物】を砕いて奴の背後に飛びしていた瓦礫と入れ替わり『空穿』を連続して畳み掛ける。
「さぁ至福雄飛来いよ、その刃擦り切れるまで何度も立ち上がってやるよ」
『その図の高い頭が擦り切れる程位抉り取って地面に埋もれる程削いでやる』
『空穿』と相手の持つ無数の亀裂が走っている刃が互いに衝突し勢い任せで弾き返して逆手に持ち返して抉られた横腹目掛けて滑らしてきた刃を受け止め眼で動きを追いながら『空穿』で対処するか、【淵明闘竜】に援護を求めるか、相手の動きを予想しながら攻撃を寄り添うように後出しを狙いながら打撃だけを使い潰すかの大雑把に三つの手段に絞れたからここに不意打ちが狙える【招致の果物】を挟みながら変化球として至福雄飛が見た事のない奴を織り込めば何とかなる。
今も痛む横腹を着実に治癒を促す【淵明闘竜】に感謝しながら顔面に向かって殴ろうとしてきた至福雄飛の攻撃を滑るように左に横跳びして避けてから『空穿』を咥えて宙を泳ぐ【淵明闘竜】が一瞬でも奴の持つ剣を止めたのを狙ってがら空きの腹を窪みを入れる気持ちで蹴りつけ動きが少し鈍ったのを見計らって追撃を差し込む。防御一択を選び続ける奴に学習させるのは癪だが確実にダメージは蓄積するべく血を流し込んで内部からも攻撃を促している。
咄嗟に畳み掛けてきた打撃の攻撃を防ぎ切った直後体を縮こませながら剣を腰に携えた直後只ならぬ何かを感じ取り【淵明闘竜】から右手に『空穿』、左手に【巍巍】をそれぞれ持ち合わせそれまで全身を均等に促していたが眼に腕、足を重点を置いた身体能力の比を振り分けて攻撃に備え首を狙った斬撃を【巍巍】で捌いたがあの剣の扱い方は普通どこの流派にないからどっかから盗んだと考えれば…
「完治…!」
抉られていた傷は治し終わった、存分に戦える。相手を倒すことに貪欲に舞い続けろ、【淵明闘竜】は思考を俺の思考を読み取ったのかこの戦いをより優位に持ち運ぶために準備を駆け足で始め出した。遅い…?いやこの昂りなら丁度いい、何にでも得ようとする俺と似た存在に追い付かれない位引き離してやる。




