蟲は蟲らしく
『羽虫のように動き回り続けてちょこまかと…!』
「【淵明闘竜】、未来視の魔眼に細工はする事はできないか?さっきから死角からしつこく魔法を向けられて判断が鈍る」
細工が出来るようならすぐさま何かしら自分の身体に変化が訪れる訳だがこの感じは試みたが無理だった、と捉えた方が正解のようだな…しかしこの蟻の波の中で的確に狙い定めて攻撃してくる原因はなんだろうか。魔法は【淵明闘竜】に任せているから魔法と肉体の両方を身に宿している存在だからそんな制限をかけるような枷があったら何かしら引っ掛かる筈だが…
足を潰して身動きが取れなくなった蟻を盾にして押し寄せる波を一時的に防いだら押し潰そうと試みると単純的な思考になる蟻を信じて盾になってもらった蟻の核を貫いて踏み台として利用して案の定大量に群がっている蟻に向かって『空穿』を振り回して強靭な牙を殺意が籠りに籠った視線を掻い潜り的確に止めを刺し続ける。
言葉を発さずとも今魔力を牛耳る【淵明闘竜】と元々繋がっているがより深く繋げる【同調】による効果も相まって頭で望んだ全てを用意してくれる。今も作用し続ける【闘志の果実】や他の効果が永久的に支えと変わっている、痛みを伴う未来視の魔眼を使って数秒後どんな攻撃を、どんな小賢しい抜け道をしてくるか視て次の一手を探し続ける。
無理矢理攻撃を避けようと試みて表面的では人間離れした避け方で躱した攻撃も積み重ねれば内部から破壊する重症へと変わるが全身への傷として軽傷にすり替えて肉体的な損傷を抑え込む。身体が軋む音には慣れたが流石に連続使用は避けた方がいいな…思ったよりも身体的なものよりも精神的な所で結構参るから他の代替策を考えないとだな
「【裂空】」
立ちはだかる蟻に対して容赦なく斬り刻み体勢を崩したのを起点にジェバルに視線を向けていて蟻に任せていた女王に向かって足元に転がっていた瓦礫を『空穿』で持ち上げて吹き飛ばす。ジェバル放つ挙動の読めない刃での攻撃に必死に対処している最中意識のしていない方向から飛んでくる邪魔に自ら生み出した子供を盾にして防いでいたがそれだけじゃないんだよ。
「よう、毒の仕返しだ」
『どうやって…!』
【招致の果物】により瓦礫の破片であっても入れ替えする物があればこうやって応用効かせられる、どれもこれも魔力回路に潜む大切な家族の力だ。『空穿』による魔力回路の欠如を狙って一時的だが動きを止めようとしたもののこの女王…さっきので一つ潰したっていうのに魔力回路が全部で八つ体内に入れ込んでいるせいで決死の覚悟で近づいたのが…!突拍子の無い内臓を狙った突きによる攻撃を三回連続で受けるが離れた場所に転移して万が一は免れたが…抉られた箇所の治癒はかなり長時間になるのは確実みたいだ。
「血魔法での逆にこのまま攻撃特化で攻め続けるか?でもあの魔力回路を削らない限り後手に回っていつか再生させられるのがオチか」
「毎回血を流すのが恒例化しているのは情けないが俺がやらないといけない事は分かった、援護頼んでもいいか?」
痛む傷口は黙って無視していれば問題ない、血魔法で無理矢理傷口を塞いで体を伝った血を利用して群がり始めた蟻に向かって弾き飛ばして対処し駆け始める時には完全に治癒がし終わっていた。感謝の言葉を伝えて周りを囲む蟻に噛みついてきたり叩き潰そうとして来たりとしてきたがあの自爆してくるような行動をしてくる奴はいない理由はなんだ?さっきので
「ジェバル、まずアイツの魔力回路を潰すが…把握は出来ているか?」
「やっぱりさっき光っていたのが消えたの魔力回路か、確実な場所はよく分からないけど注意深く狙えば…」
やっぱりこんな必死にやったところで常識があまり通用しないコイツは何言っても生半可にしか聞いていなさそうだが…爆発的な火力を永続的に放て無尽蔵の魔力から作り出される桁違いの魔法は俺が知る限り一番ふざけている長所だ、目の前で奮い立ち欠けた魔力回路を何とかして修復しようと試みる動きはハッキリ分かる、寄せつかせないように相手は動いてくるがそこは隣で同じように暴れてくれると信じる奴がいる。
「タイミングはこっちで合わせる、お前はお前で攻撃を畳み掛けろ」
「了解…!」
足元の地面を浮かして動くことを強制してきたことから何度目か分からない戦闘が再び始まった、ジェバルはそのまま女王へと直進的に足を進めて刃を地面に打ち付けて攻撃を行っていた。機動力で走って瓦礫の山を這い上がって来た蟻に向かって『空穿』を構えて明らかに魔力が籠められた攻撃を避け地面に突き刺さった前肢を駆け上がって殺さずそのまま前へ前へと足を進める。
背後に仕向けられた魔法は背中に現れた【淵明闘竜】が鉄壁の防御として俺を守り抜いてくれた後すぐさま【血刃】を放って瓦礫を斬り刻み道を切り開く。血魔法を起点として扱う己を縛る契約魔法は魔力を奪い取る代償を引き換えに契約者の握る刃に多大なる力を宿し続ける…
「【飢えと代価】」
契約魔法を欺く事に一番長けているのは一番俺の身体に最適である血魔法なのは自分が理解している、魔力が無ければ無いほど血魔法は馬鹿げた身体能力を極限まで引き延ばせることができる。時間がどんどんと経てば経つほど強力な縛りへと昇華する魔法は幾らでもあるが今は魔力が俺の身体から管轄外に存在する時間が長ければそれだけで十分なんだ。
【飢えと代価】が俺の身体の魔力を縛り付けてからもうかれこれ一時間は経っている、時が過ぎるにつれ想像していた物以上の代価を差し出し続ける魔法に少なからず感謝をしながら薙ぎ払いながら不完全な魔法を連発してくる蟻を【淵明闘竜】と共に的確に核に狙いを定め穿ち捌き、砕け散った蟻だった物がパラパラと舞い上がる。
足を止めるな、手を止めるな、攻撃を仕掛けたら動き続けろ、相手を攪乱させて一瞬でも次の一手を読み取らせるな。唱えるように心に何度も訴えかけるように戒めるように言葉通りに走り出した足を動かしても邪魔な存在は決死の思いで真っ白に光るが手元に現れた【招致の果物】を砕いてジェバルが先程刃を打ち付けた時に捲り上がった地面を入れ替え自爆を狙った攻撃を避けて想像以上に暴れ回っているジェバルに手一杯の焦りが見える女王の後ろ姿が目の前にあった。
俺の周りに群がっていた蟻共は一生懸命に女王の危機を止めようと躍起になってこちらに向かい走るがここからならもって数秒ある、『空穿』を持った俺と【淵明闘竜】がいればその数秒で全部押し込める。肩に身体を豆のように小さくしてしがみついていた援護の【淵明闘竜】はいつも通りの姿へと戻ると口から息吹を吐き曲がりくねった道が女王へと架けられる、血魔法の独特な魔力を感じ取った女王はジェバルに最大限の牽制攻撃を向けた後滑るようにして架けられた女王までの道を踏み飛ばして最短距離で近づいて近場にあった魔力回路に向かって粉々に叩き潰し振り払った女王を睨みながら次の一手に移行する。
左手で『空穿』を握り締めて空いた右手は援護担当の【淵明闘竜】の尻尾を掴み毒に染まった牙を爪を躱し再び血魔法で造られた道を滑りながら使わない部分を【血槍】や【血刃】…出来得る限り女王に向かって邪魔になる横槍の血に染まった雨を吹っ掛ける。相手は当たったとしてもそれを応用して追い詰める事が出来るのを奴は何故か知っているが…その警戒が他を疎かにする種になる。
段々と音が大きく鳴り響く、轟音が辺りに響くが何の音か分からない女王は血魔法を対処しつつ謎の音を必死に探し回っていた。ジェバルが必要以上にあの刃に何度も何度も物にぶつけその度に強靭に変化し続けている事を…何度も研鑽された刃は表面的にしか刃を通さなかったもどかしさを吹き飛ばす刃へと昇華した。
削る事しかできなかった蟲の身体を覆う殻をゴリゴリと抉り始め内部まで侵食した後目標だった魔力回路を一つ跡形もなく破壊し尽くす。痛みに耐え切れず奇声を上げると何とかしてこの場に留めようと試みる群がった蟻は皆身体を抉り千切られボロボロになって吹き飛ばされ再度攻撃を仕掛けていた。ジェバルは上手い事女王の目線を俺から奪い取りやりたい放題した所を掠め取るように『空穿』を刺し貫き捉えずらい足元を死ぬ気で食いつきながらも【淵明闘竜】による手助けも借りながら逃げ回りながら連続して二つ首元に眠っていた所を掘り返してやった。
『再び…再び栄光を…!【活殺自在】』
あと魔力回路は六個といった所で痺れと毒のような突き刺すような痛みが全身を駆け巡り支配する、どんな理屈でこんなことをしているが次は眩暈とたった数秒でここまで体に異変を起こしてくる所からこれも毒か?面倒な物巻き散らしやがって…!すぐに治せるような代物じゃないがこういうのはどっかしらの魔力回路を潰せば大抵収まる奴って数ある魔物が証明してくれているからな
「六つ…こんな状態だがまだ動ける」
痛みは全部押さえつけて動く時には再び向こう側でも轟音が鳴り響くが後ろから感じた目の前で体全身を使って絶え間なく放っていたあの憎しみを持ったあの殺気よりも鋭い…いや殺意を宿した刃がこちらに向けられていた。
「あの時、ただ使い殺されるただの蟲らしく野垂死にしてれば良かったな」
『総意が望んだ結果だ、貴様に何か言われる事ではない』
振り向くと四足歩行で地面を這いずり回る女王にただ付き従うあの蟻じゃないのは魔力を扱えない状態の俺でも十分理解できた、自ら造り上げたであろう憎き人間に寄せたその姿は完璧と感じるあの魔人であるアイツに近しく感じられもした。精巧に造り上げられた手に握られている一本の牙は耐え切れない何かが形を得て少なからず魔剣に近い存在にも感じられた。
宙を浮かぶ【淵明闘竜】は最大の警戒を俺に訴えかけるのを抑え、立ちふさがる脅威は俺の手で破る。その総意が望んだその姿が、牙が、その女王に向ける泥のような感情が俺に向かって殺しに来るなら相応の対応を取らせてもらう。
女王様の魔力回路削りのタコ殴り位から人間への憎しみが油を注がれたように勢い良く爆発して望んでもいないのに何の巡り合わせか人としての形を得た蟻君




