この瞬間の中心はこの剣に在り
「調子は驚く程良い、やっぱり勝負はこっからだよな"禁印征妃"?」
『魔剣に呑まれている?しかしその感じ全くもって自我は保っているな…』
明らかに冷静を保っている奴に向かって刃を飛ばして当たった感触が手に響き伝わりすぐ削るように刃に魔力を込めて放つが数秒したら全く感触がぱったりと消えた。今の攻撃は当たって欲しかったが向けられた刃を防ぎ切る為のだけの捨て駒として急速に育て上げられた蟻を盾にしたようだ、魔力も何も籠っていない抜け殻のような存在は抵抗などせずに障害物として使い切られると女王に吸い込まれ傷ついた箇所を元通り回復していた。
刃を引き戻したらすぐに瓦礫の上を走って蛆虫のように湧き始めた蟻達と接敵中、全く脅威ではなかった二軍が持ち合わせていた強靭で元々ずっしりしている図体に上乗せしたようなずんぐりとした蟻が現れ支配を受けたのであろう一瞬の間が終わった後にこちらに目線が固定されて一躍蟻の有名人へと様変わりしていた。
「蟻に好かれてもいい気はしないな!」
地面を叩きつけて土埃を立てて魔力感知に引っ掛かるかもしれないが冷静さを少しでも欠けてくれたら御の字、していなくてもこの巻き上げた瓦礫を足場にして即興の機動力として使い潰す。刃によるあの遠心力は自身に付与させるのは勝手にオンオフできるのを知れたのは一番有益な気づきだった、身体にかかる遠心力に耐えながら一時的に浮かんだ瓦礫に足を伸ばして踏ん張りを効かせて防御に徹底した体を手に入れた蟻に刃を押し込み問題なく通用するのを確認して再び女王蟻の元へ駆ける。
勢いをつけて攻撃をしてもあれだけ振り回して連続して回転し続けている刃を避けている訳ではないが何か他の中が身代わりとして何かが引っ掛かっている感じがする。結界魔法の類ではなさそうだがかなり面倒な物には違いないな、変則的でタイミングを意図的に遅らせて来る魔法による攻撃に対して【恒久】を活用して地面に刃を叩きつけて反動を利用して弾き返す。
即座に溢れに溢れた蟻が大口開けて噛みつこうと襲い掛かるが関係ない。この場で廻り続けて踊り続けるのが一番心地いい、『忠義』も援護として何度か蟻の足止めとして連続して削り取り続けてどんどんと永続的な【恒久】が完成されていく感覚が伝わっている。【全て廻し全て動かす】による補助もあるみたいだが刃がどんどんと重くなっている気があるが気のせいだろう。
それでも融通が利き始めた変光星でも多少の誤作動は起きるみたいだけどこうやって周りにいる蟻達の攻撃を飛ばし続けている刃を引き戻して放ち返して体重を支える両足を掠め取るように振り回した後【恒久】を施した筈の刃の回転がギリギリと異音を立てて止まり始めるがすぐに誤作動は元通りになったが今の所は大丈夫なんだよな?
不穏な感じに疑念が湧くがそんな心配は要らないから気にするな、とでも言っているように変光星が何も促さずとも武器自らが望んだように【恒久】を掛けて一気に女王蟻に向かって頭、腹部、左足へ三連撃刃を滑らした事で装甲に近しい皮膚に勢い良く叩きつける事に成功するが腹部以外の二撃は思ったよりも攻撃が通らなく攻撃を肩代わりにするために近寄って来た蟻に邪魔をされたが腹部が誤差かもしれないが削りが早かったような気がする。
『【蟻の大行進】、目の前にいる存在を全力で殺せ』
溢れる蟻の大群に呆気に取られるがまだ戦える、周りで不意打ちを狙って瓦礫の山の中で隠れている奴に向かって刃を差し向けて置いて【宝物庫】から黝危槍を取り出して瞬間的な瞬発力を手に入れる為にガドマが手を加えてくれた【黝光】を身に宿して変光星で引き寄せた蟻を足場にして高く飛び上がる。
◆
蟻の大群は女王の望むままに自らを後に続く同胞の踏み台となって支え続け宙に舞った敵に迫り詰める、異質な刃を飛ばす剣で周りで押さえかかった者達を無差別に殺し、そんな攻撃を仕掛けられた同胞が無残にも吹き飛んで再び青黒い光を残して包囲網から抜け出そうとするが必死に刃へしがみつく同胞が敵の動きを止めた時思い通りに動かない刃に振り回されて体勢が崩れた。
大群の中にいる同胞が攻めろと吼えた、それに呼応するように周りが吼え始め身動きの取れない敵に目の前いた同胞が毒に染まった牙を敵に差し向けて貫いた事を喜ばしく叫んだ時、勢い良く頭を捥ぎ取れ地面に叩きつけられたのだ。竜をも屠れる女王から授けられた毒は淵源の時の中で弱者であり息を潜め続け脅威から何度も逃げ続けたあの人間が盛られたのなら一瞬にて体に回って死ぬというのにどうして死なないのか、周りの同胞全員が思考を重ねた時ある傷だらけの化け物が姿を現した。
「これで二度目の毒か、あの時ヘマしなかったら威勢のいい女王蟻潰せたのにな…ジェバル動けるか?」
「驚いている暇はこれぽっちもないんだからこの大群は気にせずに女王殴りに行くぞ」
当たり所が悪ければ忌々しいあの竜を殺せる程の【毒牙】を喰らってもなお平然としている?それに二回目とあの体中に刻まれている傷が一瞬血が滲んだと思ったが気づいた時には何ともなかった。突然の事で皆動きを止めていた、もう一度誰かしら【毒牙】を差し込めば必ず無事ではいられないはずなんだ。
無傷で何の変化を見せない存在に再び攻撃を仕掛けたが視界に映っていた敵が消えており視界は真っ青に染まっていた。魔法による攻撃か?しかしさっきの立ち姿から魔力はこれっぽっちも無かったような…魔力を持たない存在なんてこの世に存在しない。後ろにいた刃を振り回す人間が仕掛けたのか?すぐさまこの危険を仲間に伝えようと体を動かして体勢を戻さないと、戻さないと…?
思い通りに体が動かない事に疑問を抱き次は吼えようと試みるが全く音を発せられない、魔力で何かしようにも体に異変が起き続けているようで全く…青い空が見え続けた後後頭部に鈍い衝撃があった時初めて自分がどんな状況になっていたかやっと理解できた。あの全身傷だらけの半分人間の混ざりに混ざったあの存在女王に早く伝えれば良かったのに気づいた時には既に時は過ぎていた。
あの魔力の消えた化け物は一種の魔物になっていたし炎を灯して焼き尽くしてくるあの人間も大概普通じゃなかった。周りにいた同胞は全て綺麗に女王から産み落とされてその女王と自分自身しか知り得ない核の位置を正確に捉えて斬り刻まれた痕跡だけが視界一杯に溢れていた。魂喰蟻に備わる鉄壁の皮膚に身体強化の五重掛け可能の自慢の魔力回路はあの鬼才には通用しなかったようだ。
『それでも…それでも、あの鬼才だけはどうにかしてこの手で仕留めたい。皆手を貸してくれ…』
悔やみながらどうにかして女王の役に立とうと体内を巡る僅かな魔力を必死に搔き集めながら身体の再生を試みる。もう既に息絶えてしまった仲間に残ったほんの少しだけ残った魔力も引き寄せつつこの一時だけ生き延びてあの鬼才に一矢報えるような力を蓄えて命を燃やしてでも放てるように今は息を潜める。
◆
ルウェー自身は何ともないと言っているが目の前で傷だらけで痛々しいその姿は本当に大丈夫なのか不思議に思えるが目の前で奇抜な動きをしているせいでそんな心配も意味のない物だと実感されつつある。新星を使っていた時に感じた何でもできる万能感と言ってもいい位の集中し続けたあの戦闘で身を挺して変光星の刃を受け止めたあの一瞬時が止まった感じがしてあれほど見栄を張って終わった時はどうしようと考えたがあの隙間の無い完璧な包囲を横から全て吹っ飛ばしたのだ。
「繭を破って姿を現すあの一瞬で致死量の毒を入れ込んでそれを体外に出すのに手間がかかった。一人で全部任せた借りは今ので返したからな」
「貸し借り以前に…致死量の毒を耐えるってどんな体しているんだ?」
「竜を一時的に昏睡状態にする睡眠薬を投与してやっと眠ったお前に言われたくないな」
ルウェーと軽い言葉のやり取りを挟みつつ波打つようにして襲い掛かる蟻が目の前で現れたら瞬時に姿を消して核を潰しに動くのを後ろで見ながら負けじと黝危槍を左手に携え逆手でしっかりと変光星を握って刃を飛ばしながら『忠義』が補助として作り出してくれた【氷結世界】で足場を滑りながら後ろへと逃げ続け足止めとして地面から生えるようにして湧き出る蟻の波を払いながら禁印征妃に近づこうと試みる。
ルウェーは女王のいた繭に突っ込んだ後全く魔力を感じ取れず最悪の場合安全地帯に送り込まれたと考えて動いていたが全く違っていた。禁印征妃が生み出す毒がどれほどの物か知らないし知りたくもないが耐え切った理由は今の現状から何となく察せるが確証はこれっぽっちもないので手が空いている『忠義』にルウェーに何度も魔力感知をさせているんだが、全部魔力がルウェーに備わっていないと言い続けている。
「魔力感知に反応しないから蟻の波に突っ込まれるとどこにいるか分からないのどうにかならないか?」
「魔力は全部【淵明闘竜】に譲渡した、知らなくていい話だが生き延びれれば自分がどんな状態になっても気にはしないが俺の隠し玉みたいなものだ」
「魔力を譲渡したって両目魔眼のお前には致命傷だろ」
「【同調】を前もって使っていれば魔力が使えなくても一応無理矢理だが扱えはする。実際それを使って前何とかしたからな」
やったら何かできたっていうノリで言うルウェーは本当にどうかしている、というよりも今のルウェーは比喩無しで人間離れした挙動をしながら目の前の敵を容赦なく斬りつけ暴れ続けている。聞けば毒を耐える為に自身の身体を【淵明闘竜】を魔力回路に忍び込ませて魔力を譲渡する誓約魔法を結び付けて代わりに血魔法による身体強化に似た魔法を掛け続け真っ暗な視界を魔力を手にしている【淵明闘竜】による【同調】によって力任せで解決したのだと自慢気に言っている。
(そんな無茶が通用するなら既に誓約魔法を結んでいる『忠義』は真似たりは?)
『代償を払いながら誓約魔法っていう近道を使って点と点を結んだみたいな感じですが理論上は可能です』
(代償は?)
『既に払ってもらっていますよ、忘れたんですか?争奪戦初めに魔力回路の調整として頂いたあの魔力があるじゃないですか』
何か物凄くルウェーに馬鹿にされた時と同じような感じがしてとても気分が悪くなったが一応ごり押しで全部倒すよりはあまり機能していない魔力感知がより正確になるのであれば何も気にはしないし、さっきから補助としての魔法が地味にありがたいからとても助かるからいいか




