淵源を支配した蟻の女王
「魔力回路を潰そうと思って【血解】を使ったというのに接触したらしたらで既にぐちゃぐちゃに変形しているし、普通だったら息絶えているのが当たり前なのに何があの蟻を生かしているんだ?」
「往生際が悪いのに加えて戦い方を学び始めている、あれだけ急所を晒し続けていたのに何がそうさせたのか…どちらにしろあの繭にいる奴が小細工している感じだな」
「自分を守るためにああやって子供を盾として扱う魔物の部類でも信じられない位落ちぶれている野郎だ、さっさと繭から出て来い」
ルウェーの言葉に反応すらもせずにいて繭はピクリとも動かなかったが永遠と溢れ続ける蟻の軍隊に頭を悩ませるが一歩前進した途端叩き潰す為、断ち切る為に進化を遂げた蟻の手足が命を絶たんと瞬発的に飛び込んできた今までとは明らかに原型を崩したその姿を目にしつつ変光星を叩きつけて防ぎ炎を剣に灯し再び狙い定めてきた前肢に向かって連続して斬りつける為風魔法を背後から吹かせる。
【刻風】と同等の風は魔法で再現は不可能だが一瞬だけ体浮けば【刻風】状態の前段階に移れるから…ここで変光星を背後に回して【起爆】をすれば一直線に体を動かす推進力を得る事により一時的な速さを手に入れる事が出来る。前肢の攻撃を掻い潜り変光星を腹部に差し込みながら滑り切ってそのまま前へと足を進める、まだ扱い切れていない【回転型】の補助として使えるか検討していた奴だがこれだったら何とか利用できそうだ。
流れるように倒すことができたが隣でルウェーは見た事のない血魔法で蟻の至る所に穴が空いており削り取ったのかどうやったのかは知らないがさっきから顔には出していないがかなり怒っているようで澄ました顔をしておきながら襲ってきた蟻に対しては容赦なく叩き潰し替えしていたりしている。それにしてもここまで自分の子を殺しに行かせて何も動かないあの繭にいる上位種は何を考えている?魔力は着々と増えているのは魔力感知で分かるがそこに居続ける理由が分からない。
「もうすぐであの引き籠りを引っ張り出せる、横から挟むぞ」
「分かった!」
体から溢れる血を再び治癒を促し元通りへとなるがそれまでの間ルウェーの周りを漂っている【淵明闘竜】が近づいてくる邪魔者を徹底的に嚙み砕き、血魔法での息吹を利用して蟻の体を止めて動きを封じ一点集中で脳天を貫く矛を生み出していたりと完璧な守りを見せられつつもこちらは『忠義』の的確な魔法によって仕留められることもしばしばあるが明らかに狂暴化し始めた蟻は近づかせまいと体を張るが無理矢理にでも突破して建物の上を飛び続けやっと塔近くまで辿り着いた。
繭に向かって飛びつこうとしたが再び足場を崩しに突進してきたせいで邪魔されて攻撃に向かうことはできなかったが既に斬りに掛かっていたルウェーがいたのが見えたのでさっさと始末して援護しに向かわないと怒られるなと心の中で思いながら蟻の変形した前肢を避けて魔力を『忠義』からそのまま流し込む。
『忠義』は何も言わなくなったが変光星の着火剤として魔力を使うにあたってせっせと万全の状態にした魔力を掻っ攫うような使い方をしているせいか口数が明らかに減っていたりしている。いつもはこれを魔石で補っているが普通に燃費悪いからな…そのために〔秘華の炎導〕があるんだがもう少しガドマと要相談しておかないとだな
変光星で難なく焼き切り動こうとしたが突然押し潰されそうな感覚に陥った時にはあの刺すような殺意が籠った視線が全身に浴びせられた直後腹に刺すような何かが飛んでくると察知した時には本能的に変光星を回転型に切り替えて多方面からの攻撃に耐えるように構え移った時には吹っ飛んでいる途中だった。
「何だ今の普通に早すぎる!ルウェーは…」
『まずは己の身を守ることに意識を向けずに他人を優先とは…生きるか死ぬかの時代とは全く変ってしまったな。先の血魔法を操る奴なぞ取るに足らない存在、あれほど威勢を上げていた割に非力な者だったな』
目の前に現れた魂喰蟻の上位種と思われる魔物は単純に桜鉑蟷螂よりも大きくどうやったらさっきまで弱々しく誤魔化していたのか不思議なくらいに周りに満ち満ちる程の大量の魔力を漂わせていた。一気に戦況が変わった、暴れ狂っていた蟻達は全く気配を消しているみたいだが何をしているか分からないから慎重に、確実な手を取るしかない。相手の動きをよく目で捉えろ、少しでも反応が遅れれば安全地帯行きだ、頭の中でそう暗示かけて変光星に魔力を込め直す。
『妾は淵源時代の女王"禁印征妃"。餌は大人しく死に下れ』
「女王蟻って事か…!さっきの蟻が支配云々はお前が仕組んでいたって魂胆だな」
『我が子を愚弄する言い方…余程死にたいようだな【女王の支配】!』
吼えた女王は何かしらの魔法を使ったようだが…全く自分に害は今の所見られなかった。だが、止まると体がいつの間にかミンチに変化している可能性もあるので今も輝く変光星で斬りかかろうとするが再び女王を守るべく現れた二匹の魂喰蟻によって横槍を入れられてしまう。舌打ちをしながら足を狙い変光星を振り回すが関節の動き的に有り得ない動きをしながら避け方をした蟻がすかさず前肢を横に薙ぐと背後に回っていたもう一匹の蟻は突進してきたりと一瞬の出来事だというのに詰め込まれすぎている。
(『忠義』、背後に何でもいいから牽制出来るような魔法を撃ってくれ)
『ようやくまともな命令が来ましたね…一生魔力だけを生み出す悲しい存在になると思いましたよ』
軽口言えるなら上々、命令通り『忠義』が自分の真後ろに放った【火炎球】に似た魔法が二匹の蟻の包囲から抜け出す助け舟としての機能を果たした。包囲から抜け出してすぐに噛み殺そうと近づいてきた蟻の頭を避けて首を焼き切ると反撃と言わんばかりにもう一匹が甲高い奇声を上げながら飛び掛かってくる。
【宝物庫】から新星を取り出して連続した突きでの攻撃を防ぎ切り振り翳してきた前肢を断ち切ることはできなくても衝撃だけを伝わらせることが出来たら上出来…!【宝物庫】に戻して両手で振り切った変光星で他のよりも特段大きい図体に熱で溶かして【超煌弾】を埋め込んでその場から離れてそのまま達観している女王蟻に向かって創造魔法で創り出した短剣を連続して飛ばすが背後から放たれた【岩石弾】で弾き飛ばされた。
さっき【超煌弾】で吹き飛ばした蟻が最後の力を振り絞って魔力を練り込んで魔法を放った?いや、あれだけ詰め込んだ訳だから少なからず吹き飛んだとしてもボロボロの状態で魔法など放つことさえ不可能に近いから…目の前にいる"禁印征妃"がさっき使った魔法が関係していると考えるのが正解っぽいな
『炎を操る…というより生み出す、灯すと表現した方が正しいのか…?人間が扱うには少し疑問が尽きないがそういうのは殺してから考えるとしよう』
「端からお前に喰われる気はこれっぽっちもないけどな…!」
攻撃への動きに移り動かずにいた女王蟻に向かって刃を向けると再び背後から連続して魔法が放たれる。さっきの事もあったから背後から攻撃でもされるのではないかと思っていたが案の定狙ってきたな…魔力感知からして全く反応が無いからその場から急に生み出された感じか?この後も同じように狙ってくるかもしれないから『忠義』に対処を任せて置いて女王蟻に近づくのだが差し向けられた槍のような形状をした魔法を連続して撃ち込まれ後ろに下がらず負えなくなってしまったが魔法に当たった場所はミシミシと音を立てて建物の壁などを溶かしていき崩壊させていった。
あれには当たったら体が無くなる所の話じゃないな…一番気をつけなくちゃいけないものだが全く避ける気が無いのも何か仕掛けているからか?考える事が多くて頭が追っつかなくなるな。どんどんと周りの建物を崩落させていき瓦礫が広がる景観へと様変わりしたが至る所から瓦礫の山を掻き分けて這い出る蟻の姿。そんな所に卵でも産み付けたのだろうか、というよりも産み付けてから一瞬で成長しているからこういうのも操っている訳か…ひっきりなしに殺しにかかる蟻達を掻い潜りながら前肢を足場にして駆け上がって女王蟻に向かって変光星を差し込む。
「やっと動いたか!」
『汚らわしい…餌にするのも億劫だ貪り喰らってやろう【威光】』
「【恒久】!」
炎は一時的に〔秘華の炎導〕に保管した状態で【回転型】へと切り替えて蛇腹剣に形状が変わったのを見て女王蟻の足元の周りに現れた魔法を素早く弾き飛ばしながら同じように女王蟻の足回りに湧き始めた成虫まで成長していた蟻に向かって刃を差し向ける。ギャルギャルと削り取るような音が響くが再び【恒久】を施し奥深くまで削り切ったのを確認して変光星を引き抜いて効果が切れるまで出来る限り全力で振り回し続ける。魔力を込めて連続して攻撃を与えるか、一旦女王蟻の攻撃の出方を見てから攻めるか…頭の中で究極とまではいかないが判断を迫られた中で自分が決めたこの場で最善だと考える一手は…
「このまま攻め続けてお前の身体の原型すらも削り取ってやるよ【独善旋回】!」
『品のない攻撃だな…!』
知るか、そんなこと言うなら魔力感知でとんでもない量の蟻を生み出しておいて何が品が無いとかよく言えるご身分だな。淵源時代で猛威を振るったかどうかはさておきもう時代は変わっているんだ、少し位戦い方にも変化はあるんだよ!心の中で口を大きく開けて叫んでみたがさっきから振り回されまくっていたのを風魔法で押し切って使っていたんだ一度刃先が女王蟻に覆われている皮膚というべきものだろうか、段違いの硬さで内心驚いたがあの覆っているの膜じゃなくて蟷螂を彷彿とさせるような殻と似たような装甲だった。
表面的な物しか削り取る事しかできなかったがそれでも一撃当てる事が出来たからまだまだこれからだ、振り回されるあの衝撃に備えながら有り得ない位素早い攻撃を荒ぶる刃を必死に制御して受け止めながらも反射して刃が宙を舞うが丁度良く飛び込んで来てくれた障害物に向かって再度魔力を入れ直して穿ちつつも二撃目…!衝撃だけが穿たれた蟻の身体全身に伝わりグシャグシャと音を上げて蟻だった物としてあっという間に変化した。
他に地面と一緒に串刺しにしてこようとしてきた蟻の攻撃をあらぬ方向へと吹き飛ばす刃に助けられながらも自らの足で瓦礫の山を駆け走りながら引き伸ばし続けた変光星の刃を巻き上げて串刺しにしにきた蟻の足に向かって刃を向けて飛ばしてクルーザーに繋げたウォータボードのように引きずり回される形になったがそのどっちに転がるか分からない動きのお陰で攻撃は少なからず当たらなかった。かなり怖い思いはしたけど生き残る為なら覚悟は決まっている!
「ぬわぁーー!!」
また背後から魔法撃ち込まれた、やっぱり戦闘初めに使った魔法は結界魔法とかの線だったか?かなり領域の広い魔法だが…そんな風に遠くから攻撃していられなくなるからな。【水嵐】と【爆炎】の二つが全く意識していない所から狙われるとは思いもしなかったが『忠義』が造り上げた【土壁】で完璧に防御してくれたから目の前まで迫っていた蟻の後ろ脚に刃を向けて巻き絡まった所をゴリゴリと刃を擦り合わせていき断ち切った事で体勢が崩れた所を狙って削りつける為に何度も刃を振るい続ける。
ガコン、と蛇腹剣の刃が急に所持者の意図とは関係なく今まで突っかかっていた何かが外れて元にようやく戻った刃はこの瞬間から浴びに浴びつけていた月の光から力を得て息を取り戻す。
「時は来た、【全て廻し全て動かす】」
放たれた刃は立ち止まっていた所持者を守るべく刃だけが周りの蟻全てを物量で削り、轢いて、全身を覆う装甲に刃が当たれば連続して叩き潰し瓦礫や地面に接触すれば衝撃が拡散し圧倒する。物理的な痛みに関してはお前等蟻よりも数段格が違う奴と戦ってきたんだ、その恐ろしさを全力で叩きつけてやる。




