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ラ・ラガス~創造魔法で異世界を生き抜く~  作者: タツノオトシゴ
水天一碧の広大な場を駆け巡る
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水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の三十

少し昔の話をしようと思う。私が一匹の竜を地に落とした時の話、上司の命令を受け『GDD』という広大な大地に蔓延り人類を葬り去るような害を齎す数匹の竜を討伐する計画があった。そんな計画の実行班の一員として私は駆り出された。多くの班が形成されその中の一つの班は私含め五人の攻撃班であり万全の準備で竜に挑んだのだが…結果はその竜に惨敗だった。


 竜との戦いは初めは良かったものの竜に秘めた特有の能力というべきなのか戦いの途中からそれまでの動きが嘘だと嘲笑うような行動で一瞬で強かった仲間は虫の息で地に転がり目の前に迫る死から必死に踠いていて焼け野原残ったのは私一人だけ、もうどうすることもできずに自身も心が折れそうだった。


 そんな絶望的な状況を打破する為に緋岸竜が策があると持ちかけてきた。目の前で竜が私の数十倍の量の魔力を掻き集め鬱憤を払う為だけに竜が準備しているのをボロボロの体で聞けばその策は緋岸竜が創り出したという魔法の一つである【蝕】という魔法をあの竜を蹴散らすらしい、自暴自棄になっていた私は何でもいいからその【蝕】とやらをやるにはどうすればいいかと口には出ていたがその心は早く地獄から抜け出したいという気持ちで一杯一杯だった。


 そして緋岸竜は絶望的状況の中信じられない事を言った。


(命だ、契約者(お前)のような命があればここら一帯を腐敗…いや死の海に仕立て地獄のような世界を塗りつぶしてやる。悪くはないだろう?こんな酷い状況下で残された手はこれしかない筈だ)


 乾いた笑いが溢れた、緋岸竜は確かに言った。こんな地獄から抜け出すのを手伝ってやる代わりにお前が死ね、と言っているのと対して変わらなかった。確かに地獄は終わる…だがやはり竜は人間の事をただの贄としか見ていない上位の存在なんだなと再認識する言葉でもあった。


「駄目だ!竜の言葉は強力であろうと手に掛けるな!!」


 近くにいた仲間の一人が血を吐きながら私に竜の提案に乗るなと叫んだ。皆は優しかった、ただでさえこの一員のお荷物でないだろうかと不安だった私でさえも優しく接してくれた仲間はこんな時にでも変わらなかった。


 でも、この絶望を大番狂わせできるのはこの策しか思いつかなかった。


「詠唱は?」


(ククク…面白いな人間は)


「【魂は穢れ、蝕み毒し血肉を喰らう、呪いは全てを無に帰す】」


「【(ツァール)】」


 小さくそして短く唱えられた詠唱は尋常がない位に強大で同時にこちら全てを吹き飛ばそうと企んだ竜の息吹さえも真っ黒な魔力が覆い尽し触れた魔力ですら塵となってポロポロと崩れていた、息吹を辿ってどんどんと呪いは昇っていき竜の鱗に、牙に接触すると病でも罹ったように鮮やかな深紅色の鱗を一瞬の内に人の体に出来る痣のように青紫色へと変色しそこから急速に辺りに拡大していく。


 身体が呪いに蝕められているのを即座に感じ取り迅速に治癒を施すために目の前にいる羽虫すら忘れて魔力を自身の治癒に当てつけるがそれすらも早く浸食する呪いに呻き叫びながら近づく竜種に滅多に存在しない死に恐怖しながら暴れていた。


 それまで自信しかなかった姿とは打って変わって迫り来る死という概念に恐怖している竜の姿を見て武器に宿る緋岸竜ノブリューヅは嘲笑い、自らが創り出した魔法がまだ完成していないと考え、魔法の贄となった武器の所持者の行く末を静観していた。


 当の私は竜が言う大番狂わせがこんなにもハッキリしたもので確実なもので驚いていた、後ろを振り返ると仲間が同様に今起きた出来事が嘘なのではないかと何度も確認していた。この時、私は仲間を救えた事に安心を覚えこの強力な魔法の代償の支払いに怯えていた。


(実に素晴らしい魔法だ、やはりこの魔法を創り出した存在()こそがあの忌々しい淵源種の穢れ(ゴミ)とは一線を画していると証明できるだろう)


「代償を払い切る前に聞いておきたいんだけど何故貴方はそんなに淵源種の竜に憎悪を抱くの?」


(死人がつまらん事を…知らなくてもいいが彼奴等は竜だが共に協力関係を結び各々が望む世界を実現するべく邪魔な我を消そうとした。まぁ…一匹は返り討ちにしたところで黒曜は早々逃げたがな)


(我が望むは強者のみの桃源郷…竜だけが溢れる桃源郷などはいらぬ、我と渡り合える程の人間族や妖精族、勇者が存在する世界が欲しいだからそれすら滅ぼそうとする淵源種の竜は穢れなだけだ)


 緋岸竜の目指す桃源郷とやらを聞いて呆れ、私の目指す存在する全ての種族の共存に何らかの繋がりが見えた。だから上司は私にこんな捻くれた武器を与えたんだ、そんなことを思い伏せていると竜がいつの間にか肉が呪いによって爛れ地に伏し絶命していた。


 私が望んだ竜の完全消滅が魔法により完結したのを機にとてつもない程の痛みが全身を巡った、内臓を抉り焼かれる感覚が全身を占め息が出来ず倒れると近くの瓦礫が崩れ倒れた身体を仰向けに動かされ見えたのは所々ボロボロになった上司の姿だった。


「あ…上司、すいません…」


「なんで謝罪が先に来るんだか…!ラードゥリー何があったか説明を!」


「竜の――――契―――!!―リエ――――が!」


 体を巡る呪いを目にした上司はすぐに解呪を試みるが受け付けることはなく弾いた。思うように解呪が進まないながら遠くから聞こえる仲間の声が断片的に聞くと側に置いてあった鎌の方に視線を動かしたが何もせずに【亜空間】に手を突っ込ませ何かを取り出していた。既に視界がぼやけて上司が何を私の手に握らせたのか分からなかったが何処か心地が良かった。


「ゆっくりでいい、これを握って微量でいいから魔力を流してくれ」


 言われた通り必死に魔力を手に集中させると上司は小さく何度もありがとうと呟いていた。段々と瞼を開けるのが辛くなり徐々に閉じこの世に別れを告げようと―――








―――せずに私は病室の一室のベットで横になっていた。隣には欠伸をしながら読書に勤しんでいた上司が静かに椅子に座っていた。私が起きたのを見ると笑顔で喜んでいた、余計分からず周囲を見るとベットの横に掛けられていた【緋岸竜の大鎌】に目線が行く。


「まさか淵源種の竜に近しい存在とは思っていたけどまさか自ら魔法を創っていたなんてビックリする話だよね、それに一度も使った事がない魔法だから最低限の代償として所持者の命を捧げろなんて巫山戯た話だ」


「それで代償として私の命が払われて…?」


 ブカブカの服から自分の胸元が見えたのだがその時自然と手を当てると違和感があった。


「確かにグエル君は確実に死んだ。だけど何故かこうして目を覚まして僕の話を聞いている事に疑問が溢れているだろう…とても優秀な君を失う事を恐れた僕はこれをグリエ君の体内に取り込ませた」


「それは【不死鳥の珠玉】…!?」


「手に持ってるのはレプリカだけど君に渡したのは紛れも無く死して尚蘇る怪鳥が守護する宝玉…親友が見つけて何かあった時に、と渡してくれた代物…とか説明してくれていたんだけどぉ!?」


「そんな貴重な物をなんで…私に?他にも相応しい人がいる筈なのに」


「さっき部下の中でも抜きん出た才能を持つ君を失うのを恐れたからって理由言ったでしょ?【緋岸竜の大鎌】に宿る緋岸竜なんて誰でも扱えるような物じゃないし竜の加護すら持ってない逸材がどこにいるって話よ」


 ベットから乗り出して上司の膝上に乗り出して理由を聞いてみれば長々と喋っていた。【不死鳥の珠玉】は上司が言った通り死んでも何度も蘇り何十年も生き永らえ移り変わる世界を達観すると謳われる存在…胸元に手を当てて再度確認していると上司はその様子を見て微笑んでいた。


「確かに死者を蘇る破格の性能だ、だが不死鳥の名のように確実な不死身を施す物だと思ったけどその守護していた宝玉の年数分の命を齎すと言うのが正確にいう性能だってさ」


「…守護した年数?」


「聞けば使った珠玉は数百は守っていたとからしいから今の君は数百の命があると同じって事、だから元々あった命を呪いという代償で払ってしまったが【不死鳥の珠玉】の秘める命が君をこの世界に引き留めたって事」


「また【蝕】を使う状況の時は…」


「緋岸竜が君にその【蝕】を強制させるような状況に持って行かせるつもりはないし、もしそんな状況になったとしても絶対にさせない。これは決定されてるものだ」


(面倒な誓約を結ばされた物だ…)


 強く吐かれた言葉は私の弱い心にではなくそれを利用した緋岸竜に向けた言葉だった、出会ってから初めて見た上司が本気で怒った声は部屋を比喩でもなく室内全てを押し潰すような圧だった。


「ま、それはさておき君が無事で本当に良かった。失う辛さはとても心を痛みつける、グリエも誰かの助けになるような機会が来るようだったら僕みたいに全力で挑んでね約束だよ?」


 上司が私の身体をゆっくりベットに寝かしつけて椅子から立ち上がる時にこの言葉を残し部屋から去っていった。この言葉が今生きる私の原動力になっている、私が見つけた一人寂しく生きる少女を永遠に近い時を費やして見守ると決めたんだ
















◆◆

 竜を呪い殺すのに発動した【蝕】は端的に言えば諸刃の剣のようなもので綺麗に言えば貢ぐ、捧げると言った言葉が当てはまるが私はそんな穢れとは無縁の物は似合わないと思う何だったら賭けるとかそんな言葉が似合うと思っている。


 だけど今回はあの時のと同じ魔法じゃない私は払う代償は最大でそれのリターンは多くする為に【緋岸竜(ノブリューヅ)】本人を喚んだ。


 鎌の刃先は【血の権力者】が咄嗟に向けていた爪に触れていた。私が叫んだ魔法の名は知っての通りこの鎌に宿る一匹の竜の名だ。私が込めに込めた魔力を還元された魔法は触れた爪に入り込み劇毒として蝕み続ける。また、刃先から追加して生み出された呪いは鏡合わせのように左右に三つずつ現れ尾のように伸び眼前の竜の鱗に触れると変色した所から一気に崩れるが生き物のようにくっつき元通りに戻ろうとする。


「お前がどれだけ自身を再生しようが腐食が、穢れがお前を蝕み続ける!!」


 引いて再生に力を入れようと考えたのだろうか、逃げる姿勢を取ったが二重の意味で阻止されることになる。私の【緋岸竜の大鎌】から発した六本の尾と【血の権力者】の体の動きを封じるための氷が地面から生えていた。


「グリエの作ったチャンスを逃す訳にはいかないでしょう!ここで仕留める【雪月】!!」


 下で押し寄せる氷の波を見ながら逃げることがない【血の権力者】に追撃を仕掛けると連続して熱線が反射を繰り返して全方位に向けていた。完全に死角だった熱線が肉を焼き切るが昔と比べればまだ甘い。呼吸が出来ずにいるが風魔法で強制的に空気を肺に入れて対処してもう一度攻撃を仕掛ける斬りつき至る所に穢れをつける。


 だが、【血の権力者】は穢れを再生するのではなく切り取り他に影響を与えないようにして蔓延するのを回避していた。援護が入り押していたが私の体に、【血の権力者】にも穢れという呪いを与え続けていたが先に限界が来たのは私の方だった。


 連続して攻撃を繰り返していたが思っていたよりも体が動かず何度も攻撃のカウンターのように降り注ぐ熱線が私の体に穴を空けていく。呪いの掛かった体に治癒魔法は通用しない、だからその分呪いで埋めて対処していたが限度を超えたせいで鈍く感じる。


(お前は攻撃を避けることに専念しろ!攻撃防御は我に任せろ!)


「【賭ける全ては命、己の生を捧げ与えるのは埋め尽くさんばかりの穢れ】」


「『被虐なる憐憫』」


(wave3、後戻りはできないぞ)


「ここまでやってるからね、残っているものは全部燃やしていこう」


 ふらついた体に発破をかけ、迫る【血の権力者】が似せた攻撃を弾きボロボロの体を即座に回復させ氷の大地を踏み締め再度大鎌を握り締め残っている魔力を注ぎ込み呪いすらも魔力として還元して自らの原動力として書き換えていく。


 私は竜の腕に飛び乗り鎌に刃を刺しながら駆け上がる、刃から溢れる呪いという穢れを撒き散らしながら崩壊する腕を見て痛み踠く【血の権力者】と同等の激痛を走らせながらそれでも足を動かし続ける。



 【血の権力者】は自身の身体を物ともせず這いずり寄ってくる私に出来る限りの魔法を撃ち込んでいたが、再度それは道化師によって阻まれる。



 短剣が空を舞い、それでも捌き切れなかった攻撃は瞬時にその場に姿を現した氷の華が、星の輝きが防ぎ、穢れは竜の眼前に再び立つ。



 【血の権力者】の前に現れた武器に秘められた竜は一刻の契約者の身体(猶予)を得て全てを望む世界に塗りつぶす為に顕現した




「【(ツァール)】」



『【星影(ラァートゥ)】』




 同時に放たれた穢れが眩い光に包まれるが一瞬にして穢れが呑み込んだ。


「我は淵源種と同等以上の存在…!白曜の助力もあって少しばかりの間竜へとなる力を得ようとこの穢れに勝るもの無し!全ては己の桃源郷(穢れ)の為だ!!」


 最後に叫び全身で穢れを浴びた【血の権力者】がゆっくりと崩れ行くのを見て満足して契約者に主導権を返す。口一杯に溢れた血を吐きながら力尽きた私は落下しながら笑っていた。


「こんなになって…私も戦うって言ったのに」


「私がしたくてやりたかった事だからマディーが泣く必要はこれぽっちもないのに優しいね」


「でも…!」


 だって、こんな私に涙を流す子なんて優しいに決まっているじゃん。私の周りを優しく氷で包み地面に着地すると仰向けになっていた私の視界には泣きじゃくったマディーの顔が一杯に映りポロポロと涙が零れ落ちるのと合わせるように雨粒が落ちてきた。段々と雨の勢いが強くなり豪雨同様になっていた。


「なんで…海底に雨が?」


「彼が来たから大丈夫そうだね」


 突如として降り始めた雨に理解が追いつけていないマディーちゃんだったが私が指差す方に視線を向けると目を輝かしていた。アウェル君は【血の権力者】の中にいるフィレグちゃんを助けるべく動いていた、だけど私は融合してしまったフィレグちゃんすら呪いを振りかけてしまった…もう私は完全に動けなくなってお荷物になってしまう。


 今はこの滝のように降る雨を仕込んだ彼…ジェバル・ユーストに後を任せよう

【不死鳥の珠玉】:不死鳥が誕生しまるで産まれることがない我が子のように守り続けた卵。特徴としては握り締めると手で覆い被せるくらいの大きさで魔力を込めると嘘みたいに順応し、死者蘇生から延命措置までを施す優れもの。


勿論大事に守り続けている中奪われるようなことがあれば灰と化していた不死鳥が姿を顕現し愚者に虹が放たれ身体を貫き絶命するだろう


上司は部下の危険を察して来たのではなく、『GDD』作戦で担当していた二匹の竜を落としてから帰りの連絡がなかった部下を心配して駆けつけた経緯がある。


上司は『緋岸竜』にグリエとの契約内容に上書き&誓約へ上位化させ、竜にだけ重い縛りを設けたがあまりにも煽るような口調だった所に逆ギレしていた。

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