水天一碧に飾れ、幾万天の星々 其の二十六
後退しながらでも体勢が崩れることもなく手から生み出された無数のナイフが放たれるが魔法が使える状況で追尾することもない血魔法で造られたナイフなど弾き切り狙いを定めて【火星】を撃ち込むが相手の右手から悪食が肉壁として現れ攻撃を防がれた。
『しかし…あの攻撃は随分と込んだ攻撃だった、馴染んでいた体がなんの脈絡もなく崩れていったのは驚いた。今までにない貴重な経験だった』
嘘だ、今もこうして守護者の体を乗っ取っている癖にそんなことを平気で…そんなことを喉元から出かけた言葉は【血の権力者】にとっては無関係の事でありただ乗っ取った体を残機、駒としか考えていないからだろう。この滞りのない怒りをただぶつけるだけに意識を割ければ…
悪食が無理矢理突っ込んだせいで剣先を弾かれ体勢が崩されるが『燦澹』を滑らして【血の権力者】に向けるが悪食の猛攻が思ったよりも激しく掻い潜るのが困難だと判断しすぐに【金星】を使って回避込みの移動で【血の権力者】の元に赴き横に素早く大振りをしたのだが何も持っていなかった手に血の棒が生み出され攻撃の手を止められてしまった。
止められてしまったのなら邪魔な血の棒を壊すか違う箇所を狙うかだ、【金星】の効果が続いているのを体で感じ取り【血の権力者】の後ろに回り込んで上から剣を振り下ろし地面に叩きつける。【血の権力者】が地面との衝突が確認できたのですぐ様飛び掛かるがまたしても攻撃を止められてしまった。
『一気に攻撃してきて一瞬で終わらせようとしてきたようだが…惜しかったな』
「これだけで終わるようだったら主だけで十分だ、それにこの状態でも後ろを取れるぞ」
血の棒と『燦澹』が互いにぶつかり合う中、少女…アウェルの友であるフィグレの姿をしている【血の権力者】の顔がよく見えるが拮抗が続くが【血の権力者】の元に【超煌弾】を投げつける。
『これはあの小僧の……!!』
「弾けろ」
驚いた表情をしていた【血の権力者】を他所に血の棒を弾いて後退した後に爆発し砂埃が舞う中短剣が眉間目掛けて飛んできた。主の持つ変光星から取れる【超煌弾】を利用するという主が考えた作戦、うまく当たった気がしたのだが…そうでもないようだ。
砂埃が舞う中で視界が防がれているが魔力感知が働いているお陰で見えるが血で作ったダミーでもある為気をつけなければならない。【金星】を使って目の前にいる【血の権力者】に攻撃しに行こうと動いたところで手に持っていた『燦澹』が吹き飛ばされ一気に砂埃が晴れると無傷の【血の権力者】が『燦澹』を手にしていた。
『お前がいう主が使っていた爆発物を隠し持っていたようだが起爆するのに遅いな、もっと早かったら回復するのに面倒なことになった上お前の獲物が奪われた。魔法で立ち回るにも血には勝てん』
「大事な物を奪われてとてつもなく苛立つがすぐ取り戻せばいい話だ」
【血の権力者】が『燦澹』を体に取り込んだのを見ながら私は足元に広げた影から新しい獲物を取り出す。
『短剣…?それに何故五本も?』
「理解した時には終わっている、ここからの戦いは私にとっては遊戯。こっからは道化師として暴れさせて貰う」
五本の短剣、合わせて一つの遊戯。総称して〔道化師の切札〕を舞い踊らせる。
◆
「創造魔法の許可?」
「はい、主の許可を貰った上で予備の武器を創りたく…」
「もしかしてウェールの『燦澹』も…?」
海上調査の中後続の一号艦との途中連絡での際に止まっている間のこと、二号艦の甲板上で船の端で釣りをしていた主の持つ創造魔法の使用許可を貰いにきていた。死霊魔法で呼ばれたあの時には既に創造魔法の使用が許可されており『燦澹』を創ることができたのだがそれに合わせて死霊の竜と結んだ契約魔法で主の絶対的忠誠と持てる全てを捧げることと引き換えに【淵箱】と主の創造魔法の使用…許可制だが死霊の竜はその権限を私に託した。
自分の全てで主を守れるのなら十分過ぎる契約内容だが死霊の竜が常時主の隣を歩くことができないらしく代わりに動ける者がいるのならこちらとしても助かるとも言っていたのでそこまで気にしてはいない。
主の問いに静かに頷くと雲ひとつない青空を見ながら考える主は考えが纏まると切られていた主の創造魔法の使用の許可が降りた。
「それで…『燦澹』に関しては何をベースに創ったんだ?創造魔法にしろ元がないとだからな」
「前に生きていた時に犯した罪ですかね、それで精算したつもりはないですが死累人となった今体の奥の奥に残っていたのはそれくらいな物だったので」
「それじゃあ新しい武器を創る理由は?」
「主も戦闘の際、数種類の武器を多用していたと聞いたので真似るというのは違うのですがそれが一つの理由ですね、あとは単純に長期戦になった時相手にとって知らない武器と言うのはとてもいい脅しになるのではないかと」
納得したのか、自分の目の前で創り出されていく武器を見ていた。手の元に創り出されたのは希望通り五本の短剣、考えていたことが忠実に再現されていると感心していると自然と創造魔法が使えない状態に戻った。契約通りのなので特に驚くこともないがそれよりも一つだけ異様に魔力を帯びておりそれを手に取る。
「これだけ刀身が黒いのが気になるが今回は何をベースに?」
「遊び心…?」
「創った本人が疑問系なのは無責任過ぎるぞ」
「いえ、確かに私はこれら五本に遊び心…好奇心をベースに創りました。名はそうですね…〔道化師の切札〕ですかね」
そして、私が一本の〔道化師の切札〕を拾い上げて魔力を流し込むと空中に浮かび勢い良く空中を飛び回り並みの剣士が振るう剣撃になった。そして、自分の考えが全部反映されているのなら…多めに魔力を込めて内秘める能力を使うように促すとその場から姿を消した。
「空中に消えた?魔力感知でも反応しない?」
「【英雄の奇襲】、今空中で消えた短剣の能力です。短剣の名は…どうしましょうか」
【英雄の奇襲】の効果の間は手元に移動させていたが主には気づく様子もなく動かしていた、だが不思議だ。何故主は思い通りに創り出す事ができる創造魔法を使わずして何に使っているのだろうか…いや、要らぬ詮索だ。主にも考えがあるし今は確認の方をするのが先だ。じっくりとしかし確実に〔道化師の切札〕の確認をし終えると主は胡座をかきながら腕を組んでいた。
「それにしても最後の最後で綺麗に予想が外れた、まさかだがこの中にあった嘘を入れていたのは…それこそこれがウェールの遊び心って事なんだろ?」
「分かって頂いて何よりです、何か気になることは?」
「んーその嘘は実用性があまりにも高いけど判断を間違えたら自分自身もその嘘に騙される所かな、というかそれ含めての強みだろうけど自分はそれが怖い、いつか武器に嫌われるって感じがあって…こっちの感想だからウェールが気にすることではないから」
それまで肯定しかしていなかった主だがそこだけは反応が違った。
「それは置いといて、単純な火力も普通に強いな〔道化師の切札〕は」
「予備ですので使う機会が来ない事を私は望みますけどね、何が起きるか分かりませんから」
そんな会話をしながら主に釣りをしないかと持ちかけられたのだがオルフィット殿に呼び出されてその後は知っての通り海底神殿に引き摺り込まれ行き着いた先は主と同じくパーラだった。何かあれば動ければいいと思ったのだが悪食にずっと追われるのも面倒だったのでその場を離れキードゥを彷徨いていた所宣言という名目で邪魔が入った時加勢するべきか迷ったが止めてその場から離れることに決めた。
途中グリエ殿が張ったであろう広範囲結界魔法をいかに違和感なく通り抜けることができるか試す切っ掛けになってくれた。
【淵箱】から飛び出させた《Q》が持つ能力でその場の魔力を元に戻し自分が通れる分の穴を生み出し私は素早くブリペに向かった。理由としてはキードゥにあった塔に守護者がいるとするのなら遠いブリペが最適解だろうと思った。
守護者が課した試練はすぐに終わった、転移魔法が使えるグリエ殿がマディー殿を転移魔法で連れてきたのだろう。一人だったら〔道化師の切札〕が使えたのに、なんて考えが過ぎったが全力で挑むのが一番、トドメは私が【金星】をマディー殿が【千座雪月】で星と雪景色を守護者に見せた。
無理矢理【転移魔法】で試練が終わった主の元へ行き後は主も私が何をしていたか知っている筈だ。数多くの事件はあったがこのまま順調に…というところで現れた【血の権力者】。本能からなのか分からないが倒しておかないと後悔することだけを頭で理解しているのだが…
◆◆
『たった五本の短剣だけで何とか出来ると?』
「出来るからこうしている」
〔道化師の切札〕全てに一気に魔力を込めて空中に浮かせると私の周りを周り続け【血の権力者】が血の短剣を抑える為に私の目の前に《K》が飛び出し領域魔法を出して防ぐ事ができた。
『攻撃が防がれた?それよりも短剣が…四本?』
「【英雄の奇襲】」
自分の周りを浮かせておきながら狙っていた奇襲が相手身体を右肩から左に斜めに斬りかかるのに成功した。まだ、〔道化師の切札〕には仕掛けがある。




